■日銀が安易な判断を下せないとする理由とは?
実際、マイナス金利が導入されたあと、日本の消費者心理は向上するどころか、逆に悪化している。
マイナス金利が高齢化社会の日本において、高齢者の恐怖心を高め、また金融機関の怒りを招いているから、下手をすると、政局不安にもつながりかねない。その上、今回の地震もあって、消費者心理が一段と暗くなっている最中に、安易な判断は下せないのではないかと思う。
強気の発言を繰り返す黒田日銀総裁だが、前回のマイナス金利導入時に4名の理事(事実上半数)に反対された事実から考えると、日銀内部でもその指導力は低下しているに違いないから、本当は心細いはずだ。
一方、安倍政権内部でも、マイナス金利のマイナス効果を危惧する声が高まっている。政府と日銀の蜜月は、すでに終わりの始まりかと思われ、いくら黒田さんでも安易に動けないだろう。
■短期スパンでは波乱含みの展開になりやすいかも
こういった認識が徐々に広がっていけば、徐々に米ドル売り・円買いにつながっていくが、日銀動向に関する憶測が出やすい時期であるだけに、短期スパンでは波乱含みの展開になりやすいかとみる。
実際、執筆中の現時点で、米ドル/円が109.33円から急騰し、再度110円の節目を突破した。「日銀、金融機関への貸出し金利にもマイナス金利適用」との報道につられた値動きだと思うが、真相はともかく、こういった値動きにも警戒せざるを得ない。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 5分足)
ただし、こういった材料があっても、米ドル/円の戻り余地は限定される、という見方は不変で、こういった報道こそ、戻り売りの好機を提供してくれているとみる。前回のコラムにて提示した111円の節目前後がもっとも重要なレジスタンスゾーンといった認識も不変だ。
【参考記事】
●2016年内の黒田ライン打診は妄想!?ドル/円リバウンドは強くても111円前後まで(2016年4月15日、陳満咲杜)
■今後ドルインデックスは切り替えしてきそう
米ドル全体に関しては、ドルインデックスを見る限り、これから切返ししてくる公算が高まる。テクニカルの視点では、以下のようなシンプルな視点が重要だと思う。
(出所:CQG)
上のチャートに記しているように、途中の山(高値)のb、d、f、hの数字が徐々に下がってきており、また、途中の谷(安値)のa、c、e、gも同じく下がってきていた。これは、より低い高値とより低い安値の継続を意味しているから、下落トレンドと定義できるわけだ。
その上、高値~高値、そして、安値~安値間の距離も観察してほしい。b、d、f、h間の距離と、a、c、e、g間の距離が段々短くなっていることから、この下落トレンドのモメンタムも徐々に下がっていることがわかる。
よって、いつか反転するかもしれないが、反転の前提条件として、まずgを下回らないこと、またはhを上回ることが挙げられるだろう。
昨日(4月21日)のECB(欧州中央銀行)理事会後、ドルインデックスは安値を更新せず、逆に94台後半まで再浮上してきたから、これからhの95.20突破をめざすだろう。ここを突破して、サインが点灯すれば、ドルインデックスの上昇が想定される。
(出所:CQG)
ちなみに、米ドル全体の上昇は往々にしてユーロなどの外貨の対円での下落をもたらす。そして、このことが米ドル/円の頭を抑えるように作用してくるから、今回も警戒しておきたい。
このあたりの検証は、また次回。
(PM2:00執筆(一部は午前中執筆))
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