■米ドル/円の下落トレンドには変化なし!
米ドル/円のリバウンドは、本稿冒頭執筆中の現時点(4月22日午前)では110円以下どまりとなっており、筆者の想定どおりと言える。

(出所:ヒロセ通商)
すなわち、米ドルのリバウンドを予想していたロング筋が揃ってショートのスタンスに転じてきたから、米ドル/円はかえって安値を更新せず、いったん反騰してくるものの、その値幅は限定され、ベア(下落)トレンド自体はまったく修正されず、これからもベアトレンドを推進する公算が高い、ということである。
換言すれば、米ドル/円は目下スピード調整の途上にあるが、下落トレンドは確実視される。
■ポイントは米ドル/円107.83円割れの有無
ところで、いろいろな評論を見ていくと、米ドル/円の下げ一服もあって、来週4月27日(水)、28日(木)の日銀会合にて、追加量的緩和、あるいはマイナス金利のさらなる拡大がなされるといった観測が高まっていた。そして、この前ショートスタンスに転じてきた「元ロング派」の再転向が見られた。
つまり、米ドル/円が上昇するとみる評論家の方々がまた増えてきたから、また1つのサインが点灯したのだと思う。
要するに、前回の彼らの転向が米ドル/円の下げ一服をもたらしたとするならば、今回の彼らの再転向が米ドル/円の下落再開を暗示するサインと受け取れる。
このサインの正式な確認は、日銀会合後になる見通しだが、米ドル/円の弱いリバウンドから考えると、日銀会合を待たずに確認される可能性もある。そのサインは他ならぬ、米ドル/円の107.83円割れだとみる。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
この安値は今週(4月18日~)の安値であり、4月18日(月)につけた安値であったが、これは重要な意味合いを持つ。
何しろ、この安値は、4月18日(月)に窓を開けて下落した際に形成され、また、G20(20カ国・地域財務大臣・中央銀行総裁会議)において米サイドが日本の相場介入を牽制したと伝わったあと、マーケットが驚きをもって形成した安値だったからだ。
この安値を割ることがあれば、米ドル/円の下落再開が認定されるだろう。
■一時、105円の節目割れもあり得る
下値ターゲットについて、たびたび指摘してきた105~106円といったメインターゲットは据え置くが、場合によっては一時、105円の節目割れもあり得るだろう。何しろ、足元のリバウンドは、スピード調整として次の下落モメンタムを蓄えている状態だ。次のターゲットはオーバーしていってもおかしくない。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
筆者がもっとも大事にしてきたロジックとして、「市場が材料の先に動き、材料はあとからついてくる」というものが挙げられる。この意味では、相場の値動きから、あとの材料を予知する場合もある。
したがって、仮に米ドル/円が日銀会合を待たずに安値トライする値動きになった場合は、日銀会合自体、大した成果を出せないことが暗示されるかと思う。
ということは、一部市場関係者の思惑、すなわち今回は熊本地震もあったから、日銀がより機敏に動き、マイナス金利を拡大させるだろうといった思惑が裏切られる可能性が大きいと思う。何しろ、熊本地震があったからこそ、日銀が動かないのではないかと考えられるからだ。
■日銀が安易な判断を下せないとする理由とは?
実際、マイナス金利が導入されたあと、日本の消費者心理は向上するどころか、逆に悪化している。
マイナス金利が高齢化社会の日本において、高齢者の恐怖心を高め、また金融機関の怒りを招いているから、下手をすると、政局不安にもつながりかねない。その上、今回の地震もあって、消費者心理が一段と暗くなっている最中に、安易な判断は下せないのではないかと思う。
強気の発言を繰り返す黒田日銀総裁だが、前回のマイナス金利導入時に4名の理事(事実上半数)に反対された事実から考えると、日銀内部でもその指導力は低下しているに違いないから、本当は心細いはずだ。
一方、安倍政権内部でも、マイナス金利のマイナス効果を危惧する声が高まっている。政府と日銀の蜜月は、すでに終わりの始まりかと思われ、いくら黒田さんでも安易に動けないだろう。
■短期スパンでは波乱含みの展開になりやすいかも
こういった認識が徐々に広がっていけば、徐々に米ドル売り・円買いにつながっていくが、日銀動向に関する憶測が出やすい時期であるだけに、短期スパンでは波乱含みの展開になりやすいかとみる。
実際、執筆中の現時点で、米ドル/円が109.33円から急騰し、再度110円の節目を突破した。「日銀、金融機関への貸出し金利にもマイナス金利適用」との報道につられた値動きだと思うが、真相はともかく、こういった値動きにも警戒せざるを得ない。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 5分足)
ただし、こういった材料があっても、米ドル/円の戻り余地は限定される、という見方は不変で、こういった報道こそ、戻り売りの好機を提供してくれているとみる。前回のコラムにて提示した111円の節目前後がもっとも重要なレジスタンスゾーンといった認識も不変だ。
【参考記事】
●2016年内の黒田ライン打診は妄想!?ドル/円リバウンドは強くても111円前後まで(2016年4月15日、陳満咲杜)
■今後ドルインデックスは切り替えしてきそう
米ドル全体に関しては、ドルインデックスを見る限り、これから切返ししてくる公算が高まる。テクニカルの視点では、以下のようなシンプルな視点が重要だと思う。

(出所:CQG)
上のチャートに記しているように、途中の山(高値)のb、d、f、hの数字が徐々に下がってきており、また、途中の谷(安値)のa、c、e、gも同じく下がってきていた。これは、より低い高値とより低い安値の継続を意味しているから、下落トレンドと定義できるわけだ。
その上、高値~高値、そして、安値~安値間の距離も観察してほしい。b、d、f、h間の距離と、a、c、e、g間の距離が段々短くなっていることから、この下落トレンドのモメンタムも徐々に下がっていることがわかる。
よって、いつか反転するかもしれないが、反転の前提条件として、まずgを下回らないこと、またはhを上回ることが挙げられるだろう。
昨日(4月21日)のECB(欧州中央銀行)理事会後、ドルインデックスは安値を更新せず、逆に94台後半まで再浮上してきたから、これからhの95.20突破をめざすだろう。ここを突破して、サインが点灯すれば、ドルインデックスの上昇が想定される。

(出所:CQG)
ちなみに、米ドル全体の上昇は往々にしてユーロなどの外貨の対円での下落をもたらす。そして、このことが米ドル/円の頭を抑えるように作用してくるから、今回も警戒しておきたい。
このあたりの検証は、また次回。
(PM2:00執筆(一部は午前中執筆))
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