■FOMC後、米ドルの切り返しが一段と加速
米6月追加利上げ観測が高まってきた。FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録が市場の想定よりタカ派だったとされ、米ドルの切り返しが一段と加速した。
(出所:CQG)
前回(5月13日)のコラムでも強調していたように、ドルインデックスが反騰しやすい段階にあるから、こういった後付けの材料があっても自然な成り行きだとみる。
【参考記事】
●麻生財務相に当コラムを読んでほしい! 介入しなければ円高、すればもっと円高に!!(2016年5月13日、陳満咲杜)
ただし、こういった材料を過大に解釈すべきではないと思う。なにしろ、市場の想定自体が定かではない上、非常に流動的だったから、あてにならないというか、単純にこれ以前のコンセンサスに対する修正が効いたという側面が大きい。
言い換えれば、この前の4月米雇用統計が悪かったので、市場の米利上げ見通しが落ち込みすぎだった、ということだ。目下、この程度の修正は許容範囲であり、さらに米ドル全面高がガンガン進むとは限らない。
その上、何よりも注意していただきたいのは、FRB(米連邦準備制度理事会)理事たちのスタンスを確信すべきではないということだ。金利据え置きを強く主張したあと、たった2週間足らずで、一転利上げを主張するようになった方もいるので、気をつけたい。
今回の議事録の内容はタカ派とみられる人物たちが公の場で散々言ってきたことであり、別にサプライズではない。単純に議事録という正式な文書で確認されただけの話だ。このことはすでに現在の相場に織り込まれた公算が大きいと思う。
■前回利上げを見送った2つの理由は解消されていない
続いて、何より重要なのは、イエレンFRB議長のスタンスだ。ハト派とされる議長が今後、どう判断するかは誰も断言できないが、安易にタカ派スタンスに転換できないことだけは確かだ。何しろ、これ以前に追加利上げを見送った2つの理由は、しっかり残っているからだ。
1つは不安定な世界金融市場だ。
確かに昨年(2015年)8月のショックから米国株は大きく立ち直っているが、事の発端の地、すなわち、中国の状況はなお危惧されている。人民元安のトレンドが再開される兆しがくすぶり、上海株は不安定な値動きが続いているから、いつ暴落してもおかしくない情勢だ。
上海株(上海総合指数)は2016年年初来安値の2638ポイントから4月の3000ポイント超までいったん切り返しを果たしていたものの、執筆中の現時点では、また、2800ポイント前後に下げてきた。
(出所:CQG)
昨年(2015年)高値からすでに45%安の下落率を記録したものの、この記録は近々塗り替えられそうだ。
それに伴い、人民元安の進行があれば、昨年(2015年)8月のように、再度世界金融市場に打撃を与えるだろう。欧州や日本など米国以外の主要国の株価は、昨年(2015年)のショックから立ち直ったとは言えず、混乱があれば、たちまちベア(下落)トレンドへ復帰することが容易に推測されるから、米国株のみ堅調、というわけにはいかない。
もう1つは、米ドル高自体が利上げの障害に…
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