■米ドル高自体が利上げの障害になるというジレンマ
もう1つは、米ドル高自体が利上げの障害になっていることだ。インフレ率を引き下げる米ドル高の進行が強ければ強いほど米利上げはできなくなり、皮肉にも米ドル安の方が米利上げに踏み切りやすい環境だと言える。
だから、状況次第と思われるが、6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)まで米ドル高がどこまで進むことができるか、注目だ。
利上げ観測が高まれば高まるほど、米ドル高につながりやすいが、米ドルが高ければ高いほど、実際の利上げを遠さげる、といったジレンマがある以上、イエレン議長の判断は一層難しくなる。いずれにせよ、米ドルの切り返しを正当に評価しても、過大評価すべきではない。
同じことは、米ドル/円にも適用されるロジックだ。先週(5月13日)のコラムの指摘どおり、ドルインデックスと米ドル/円の連動性が高まってきているから、この連動性がしばらく維持される限り、米ドル/円の値動きもドルインデックスと似てくるかと思う。
【参考記事】
●麻生財務相に当コラムを読んでほしい! 介入しなければ円高、すればもっと円高に!!(2016年5月13日、陳満咲杜)
(出所:CQG)
■短期の米ドル高・円安進行を見込めた理由とは?
ところで、短期スパンに限って、我々は米ドル高・円安の進行を見込んでいたことは、先週(5月13日)のコラムに記載したように、単純な視点をもって最近の値動きをチェックすれば、よりわかりやすかったのではないかと思う。
(出所:ヒロセ通商)
5月12日(木)から「リバーサル」サインを灯し、そのあと、同パターンを維持している(1回も12日安値を下回らなかった)ことを重視していれば、米ドルのリバウンドをフォローしやすかっただろ。
何しろ、そのあと「高値更新」、「リバーサル」、「高値更新」といった変動パターンが続いてきたから、5月18日(水)も「リバーサル」のサインを点灯し、また、切り返しの高値を更新するといった流れになったわけだ。
(※執筆者注:「リバーサル」サインとは、前日の安値をいったん割り込んでから、その後、持ち直し、高値を更新するか、前日の終値より高く引けること)
■米ドル/円の下落波の進行は、より強まるのではないか
しかし、短期スパンが強くても中長期スパンにおける円高トレンドを修正するにはほど遠く、また、今回の切り返しが強かったからこそ、今度は下落波の進行がより強まるのではと思われる。
ファンダメンタルズやそのほかの視点での説明は次回に譲るが、まずテクニカルの視点をもって指摘しておきたい。
昨日(5月19日)書いたレポートが参考になるかと思い、ここで公開したい。ちょっと珍しいのだが、チャートはGMMAチャートに一目均衡表を加えたもので、解釈も両チャートのサインに絞っている。
(出所:アイネット証券)
米6月追加利上げの観測が高まってきた。ドル/円が底打ち、これから反騰してくるといった観測も浮上している。しかし、現実にチャートを検証していくと、これはかなりハードルの高いシナリオであり、現時点難しいことが分かる。GMMAに一目均衡表を加えたチャートをもって説明したい。
一目均衡表では、所謂「三役好転」のサインをもって地合いの改善がみられるといった標準がある。目下「転換線と基準線のクロス」(上放れ)ができるかどうかを見極める時期ではあるが、日々線との遅行線のクロスが昨年11月以来の出来事で、下落一服の可能性が出ていることが確かだ。
但し、厚い「雲」ゾーンを控え、GMMAチャートにおける拡散している鯨軍団(長期線グループ)が横たわり、何等かの特別な材料なしでは容易ではないことを示唆。その上、仮に転換線が基準線とのクロスがあったとしても、2月初頭のようにGMMAチャートにおける「鰯喰い」のサイン(短期線が長期戦とのゴールデンクロスの失敗)を点灯させ、結果的にドル売りのエネルギーと化す場面も想定される。3月、4月も同様な試しが見られたが、すべて失敗していたことに鑑み、メイン抵抗ライン(紫)に阻止される公算が大きいかとみる。
結果的に、現在の状況(B)、強くても2月初頭(A)の再演になりやすいから、むしろここからドル売りの好機に恵まれるのでは。シグナルを確信してからドル売りのスタンスへ復帰したい。
以上の分析が正しければ、そろそろまた米ドル売り・円買いの好機に恵まれる。市況はいかに。
PM2:00執筆
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