5月のこれまでのドル円のありようを振り返ってみると、値幅がまだまだ小さいといいながらも、月初の底値圏から脱してきているのがわかる。月初というのは先月末ということだ。日銀が何も新しい政策を打ちださなくて失望、そしてアメリカから通貨政策に関する要監視先に指定された直後である。
ゴールデンウィークは完全にダウンサイドリスクにさらされると思われていた分の、反動が出てきたというべきであろう。月初が安かった分だけ、今月のドル円の月足は大陽線となっているのが現状だ。
先週のG7の経済会合では、あんまり目新しい政策は打ち出されなかった。財政支出を求める日米に対し、それを抑制しようとする英独側との折り合いがつかなかったようだ。これは事前に予想された通りなのだが、それに向けた期待でリスクテークが進んだ分の調整が、どのくらい今週になって出てくるのかが注目である。
実際に金曜日のドル円は、東京市場の終了後も堅調な動きを示した。ドル円は110円台の中盤に向けて買い進まれて、110.58まで高値を拡げた。これは今月の最高値である。私はG7筋からいろいろ発言が飛び出してきて、それで上下振らされるのがイヤだったので、あえて手を出さなかった。
土曜日にも協議は継続されるので、それも十分に見たうえで月曜日の早朝から手を出せばいいやという感じだ。ただ夜中に出てきた日経新聞の早刷りの中で、日銀の引当金の話が流れた。何の損失に向けての引当金かというと、今後の出口戦略における国債値下がりに備えるためだそうだ。
話しでは4500億円を準備するということだが、保有している国債のアマウントからすれば、これではぜんぜん足りないだろう。国債の価値は値段で測られる。国債価格が10%下がるのもザラにありうることだ。だったら5兆円とか積んでおいても足りないくらいだ。
それよりもマーケットに影響を与えたのは、日銀が出口を準備しているということだ。それが急激に円売りムードにストップをかけることになり、ニューヨーク時間の後半ではドル円の利食い売りが続出した。ちょっと頭を抑えられたという感じだ。
これが今週の話題になったら、再び円高方向をアタックする局面を迎えるかもしれない。金融当局がどのような言い訳を用意しているのか。要ウオッチである。
また今週はG7の首脳会議が控えている。しかし世の中の関心はオバマ大統領の広島訪問に移ってしまっており、経済問題は議論の中心に据えられていない。
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