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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

米国株の過熱感はリーマン前と同レベル!
今後、「トランプ大恐慌」が来る可能性大!

2016年12月13日(火)19:18公開 (2016年12月13日(火)19:18更新)
陳満咲杜

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■米国株の過熱感はリーマンショック前と同レベル

 株式市場の過熱感を測るにはさまざまな指標があるが、シラーP/Eレシオは大局観において非常に重要である。先週末(12月9日)、同レシオは27.86倍に達し、米国株の「天井」を強く示唆していると解釈される。

シラーP/Eレシオ(1900年~)
シラーP/Eレシオ(1900年~)

(出所:イェール大学のデータから、ザイFX!編集部が作成)

 なにしろ、米国株の歴史を遡って検証すると、同レシオが27.6倍を超えると、その後の10年間、株式市場におけるリターンが米10年物国債から得られるリターンを下回ることがわかる。言い換えれば、株の下落、場合によっては暴落局面が想定される、ということだ。

 では、先週末(12月9日)、米国株が示したシラーP/Eレシオにおける27.86倍の水準は、超えたことがないかと聞かれるとそうではない。1929年の世界大恐慌、2000年のナスダック崩壊や2008年のリーマンショック前は、シラーP/Eレシオが現在の水準を超えていたことがわかる。

 ただし、その後、相場がどうなったかは周知のとおり。こういった事実に直面し、賢明な投資家ほど笑えない状況だろう。

 何しろ、シラーP/Eレシオが示す歴史的な「宿命」があるなら、市場が現在熱望している「トランプノミクス」どころか、「トランプ大恐慌」が控えている可能性が高いからだ。

■トランプ・ラリーの背景には機関投資家の年末事情が

 一方、こういった「伝統的」な指標に目もくれないのが現在の相場だ。

 「トランプ・ラリー」に酔って、また、乗り遅れまいと躍起になっているのが現在の相場の雰囲気だ。ヘッジファンドをはじめ、機関投資家の多くは競争の圧力に負け、本当は警戒し、また、怖くなっているにもかかわらず、高値を追うハメになっている。

 なぜかというと、もうすぐ年末で、自分の運用成績がベンチマークとなる株価指数を大きく下回るなら、投資家らの不評を買って解約され、資金が引き上げられるかもしれないからだ。

 ファンドなどに出資する投資家は、個人であれ、機関であれ、単純といえば単純だ。自分が投下した資金には、株価指数より良いパフォーマンスを出してほしい。となると、「トランプ・ラリー」のように急速に反転、また、急伸している相場だからこそ、ヘッジファンドなどファンド運営者にとって実は頭痛の種になる。

 なぜなら、事前にトランプ氏の当選さえ予測できなかったから、「トランプ・ラリー」に乗り遅れたのも当然の成り行き。ここから挽回したいなら、本当は高値づかみのリスクが大きいことがわかっても買わざるを得ない。「トランプ・ラリー」が継続している背景には、このような事情も見逃せない。

■「トランプノミクス」もバブル同様のおかしなプロセスが

 しかし、世の中が不思議なのは、バブルが進行している最中はバブルを正当化する者が多く、また、バブル自体が正当化される傾向にあることだ。

 今回も然り。「トランプノミクス」云々でバラ色の将来像が描かれ、虚々実々だが、皆が再度、米国株高を謳歌している。

 「王様は裸だ」という純粋な少年の叫びを、いろんな事情を抱える大人たちは知らんぷりして、来るべき破局をひたすら待つのみ、といったおかしなプロセスを繰り返す。「トランプノミクス」に関しても同じと言える。

 トランプ氏が抱える政策と現実の矛盾を前回3つほど羅列したが。詳説する間もなく、氏がもたらしたもうひとつの大きなリスクがまた浮上してきた。

【参考記事】
トランプ・ラリーは米利上げまで!? ドル/円のターゲットは120円より110円が現実的!(2016年12月2日、陳満咲杜)

 トランプ氏は「ひとつの中国」に拘らなくてもよいと発言し、世界を仰天させた。問題はトランプ氏の本意、戦略よりも、氏の本質がこの一件で露呈したこと、また、それ自体が大きなリスクであることだ。

 言ってみれば、トランプ氏は基本的に「破壊者」で「問題児」だから、これから何をやるか、何を持ち出すかは事実上予測不可能だ。彼は米共和党の理念から大きくはみ出し、また、戦後米国が継承してきたあらゆる原理原則をひっくり返す性質があるだけに、これから大きな波乱要因としてマーケットに衝撃を与えるだろう。

 何しろマーケットが一番嫌いなのは不確実性なので、今は「トランプ・ラリー」に酔っていたとしても、いつかはすっかり目を覚ます。

■ドル/円は116.75円前後まで? トランプ氏はドル高嫌う

 したがって、米国株にリンクした米ドル/円のパフォーマンスは、今は絶好調に見えても実はすでに影が見え始めている。

 ただし、行きすぎた相場がいつ反転するのかは「神のみぞ知る」だから、米ドル/円の上昇余地は、一応こちらの計算では116.75円前後まであり、ということも併記しておく。 

米ドル円 日足
米ドル円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

 もちろん、必ず到達するとか、また、それ以上の高値はないといった話ではないことも強調しておこう。

 最後に、トランプ氏は米ドル高を嫌うので、たとえ今晩にでもツイッターにて「米ドル高をなんとかしろ」と書いたとしても、驚くに値しない。彼なら、もっと強烈な言葉を並べるとも推測される。市況はいかに。

(15:00執筆)

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