米ドル/円はいったん140円レベルで下げ渋り。ベッセント米財務長官が「日本に通貨目標求めず」
みなさん、こんにちは。
今週(4月21日~)も米ドル/円は続落し、4月22日(火)には一時140円割れの139.89円まで下落しました。
米ドル/円の下落が今週加速した要因は、主要銀行の米ドル/円に対する予測の下落幅が拡大していることも要因の1つになっています。

(出所:TradingView)
過去のコラムで、ゴールドマンサックスなどが米ドル/円に対して弱気なスタンスであることをご紹介していますが、今週話題になったのはシティバンクです。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は138円に向けて続落中! 相互関税は「予想をかなり超えたショック」。グローバルに株が崩れる環境が当面続きそうで、リスクオフに強い日本円が最強!(4月3日、西原宏一)
日米通商協議、1ドル=120円前後が目標で妥結か-シティ
円はドルに対して上昇すると、シティグループは予想する。米当局は今後の通商交渉に、円安への対応についても盛り込みたい考えだ。
「米国は1ドル=100円を念頭に置いているのかもしれないが、120円前後がより現実的な妥協だろうと思う」と、高島修氏らシティのアナリストはリポートで指摘。22日の取引で、円はドルに対して一時0.7%高の139円89銭まで上昇した。
加藤勝信財務相兼金融担当相とベッセント米財務長官は週内に予定が伝えられる会合で、会談する見込み。シティによると、日本銀行が政策正常化に取り組み、円を押し上げる見通しを踏まえ、トランプ政権は日本に対する関税引き上げを見送る公算が大きい。
(出所:Bloomberg)
シティバンクが考える米ドル/円下落の要因としては「円を押し上げる代わりに、トランプ政権は日本に対する関税引き上げを見送る公算」といった内容で、このコラムでも同じスタンスなのですが、目標値をいきなり120円としていることで注目を集めました。
ただ、こうした話題が出ると、米ドル/円が逆にいきなり約3円踏み上がるのも皮肉なところ。
米ドル/円反発のきっかけは、ベッセント米財務長官でした。
ベッセント米財務長官は「トランプ政権は日本との通商交渉において為替レートの具体的な目標を追求するつもりはない」とコメント。
これがマーケットのショートカバーを誘引し、米ドル/円は一気に143.57円まで値を戻すという荒っぽい相場展開となりました。

(出所:TradingView)
ベッセント米財務長官が「日本に通貨目標求めず」というコメントをするのは、ある意味当然です。
例えば「日米はドル円で100円を目指す」と宣言するようなことは
、米ドル急落を引き起こすため、「基軸通貨としての米ドルは強いべきだ」とする米財務長官が、このようなコメントをするとは考え難いからです。
ただ、前述のように「シティバンクがトランプ政権はドル円の目標を120円にする」といったレポートがマーケットに出回っていたため、市場ではその期待感が高まっていたということなのでしょう。
視点を変えると「円安を容認する」と言ったわけでもなく、米ドル/円の下落トレンドは変わらず。
ただ、マールアラーゴ合意(※)のようなものが発表されて、米ドル/円が一気に暴落するといった思惑は、ベッセント米財務長官のコメントにより後退しています。
(※マールアラーゴ合意とは、トランプ政権下でCEA(大統領経済諮問委員会)委員長を務めるスティーブン・ミランが提唱する、新たな多国間通貨合意の枠組みのこと)
一方、マーケットでは金融危機に発展するような動きが出ており、懸念されています。
それは、米国債売りと株下落が同時に起きていることです。
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米ドル/円は135円に向けて下落トレンド継続。「金融危機に向かって滑り落ちている可能性があるのだ」
今月(4月)の米国株は、トランプ政権の関税報道で値を崩しています。
今週の反発で少し値を戻していますが、今月のS&P500も大きく値を崩しています。

(出所:TradingView)
一方、こうしたリスクオフの環境下で通常買われるべき米国債が、売られる局面も見られます。米10年債利回りは、4月11日(金)に一時4.5864%まで反発(債券価格は下落)しています。

(出所:TradingView)
こうした債券売りは、新型コロナウイルスのパニック期に初めて見られた現象で、マーケットでは、この米国債の売り手として現在、米国債保有量世界第2位である中国の動向に警戒しています。
本稿執筆時点では、ベッセント米財務長官が「関税を巡る中国との対立は米中にとって持続不可能で、緊張緩和の道筋を見つけなければならないと述べ、緊張緩和は近く実現する」とコメントしたことで、現実のものとなる可能性は低いとみられています。
ただ、現在のトランプ政権の関税政策は非常にトリッキーで、米中貿易戦争が米中金融戦争に転じ、中国の米ドル資産離れを引き起こす可能性を否定できない状況にあります。
みなさんは「フールズ・ゴールド」という著名な本を執筆した、ジリアン・テットというフィナンシャル・タイムズの記者をご存知でしょうか?
彼女は、2008年の金融危機が顕在化する前から、クレジット・デリバティブ市場の複雑さとリスクについて警告を発していました。
彼女はフィナンシャル・タイムズのキャピタル・マーケット編集者として、2005年頃から金融工学の進化やデリバティブ市場の不透明性に注目し、危機の可能性を指摘していたことで有名です。
その彼女が「私たちは金融危機に向かって滑り落ちている可能性があるのだ(we could be sliding towards a financial crisis)」とコメントしていることが、マーケットで話題になっています。
今後も米国株と米国債の動向には要注意です。
金融危機に向かって滑り落ちている可能性がある状況では、米ドル/円の上値余地は限定的。
ベッセント米財務長官の「日本に通貨目標求めず」というコメントで下げ渋ったものの、135円に向けた米ドル/円のダウントレンドは変わらないと見ています。

(出所:TradingView)
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