マネースクウェアHDがついに上場廃止
2017年1月20日(金)、マネースクウェア・ジャパンの親会社であり、東証一部に上場していたマネースクウェアHDが上場廃止となった。
今回のマネースクウェアHDの上場廃止は、MBO(マネジメント・バイアウト)方式によるTOBによるもの。
上場廃止と聞くと、企業業績の悪化といったネガティブなものを思い浮かべてしまう人がいるかもしれないが、マネースクウェアHDについてはそうではなく、今後の事業展開を見据えてのものだそうだ。
ちなみに、MBOとは、経営陣による買収のこと。今回はマネースクウェア・ジャパンの創業者株主となる現代表取締役社長・相葉斉氏、現取締役・山本久敏氏が買収を行う「経営陣」に該当する。
しかし経営陣だけの資金力では、市場に出回っている自社株をすべて買い取るのは難しい場合が多い。そこで今回、創業者株主の経営陣は米投資会社のカーライル・グループと提携し、潤沢な資金を確保した上で自社株買いを進め、上場廃止に至ったのだった。
マネースクウェアHDの上場廃止までの経緯については、以下の【参考記事】をご覧ください。
【参考記事】
●M2Jのチャートがバーコードになる異変!? MBOで上場廃止へ! いったいなぜ?
FX会社の株式上場はどうなっているのか?
このように、マネースクウェア・ジャパンの親会社であるマネースクウェアHDは上場廃止となったわけだが、FX会社の上場はどのような状況になっているのだろうか?
FXサービスを提供している会社の中には、マネースクウェア・ジャパンのように親会社である持株会社が上場しているところもあれば、FX会社そのものが上場しているケースなどもある。親会社の業種もさまざまだ。
以下は、FXサービスを提供している会社そのものが上場している、もしくは親会社などの関連会社が上場しているケースなどを一覧にした表だ。
グループ | 会社名 | 上場関連会社名 (一部非上場含む) | ||||
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FX系 | インヴァスト証券 | インヴァスト証券(JASDAQ【8709】) | ||||
ヒロセ通商 | ヒロセ通商(JASDAQ【7185】) | |||||
JFX | ||||||
トレイダーズ証券 | トレイダーズホールディングス (JASDAQ【8704】) |
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マネーパートナーズ | マネーパートナーズ グループ (東証1部【8732】) |
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証券系 | マネックス証券 | マネックスグループ (東証1部【8698】) |
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岡三オンライン証券 | 岡三証券グループ (東証1部【8609】) | |||||
カブドットコム証券 |
三菱UFJフィナンシャル・ グループ (東証1部【8306】) 三菱UFJ証券 ホールディングス(非上場) カブドットコム証券 (東証1部【8703】) |
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金融 グループ系 |
外為どっとコム | 澤田ホールディングス (JASDAQ【8699】) |
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SBI FXトレード |
SBIホールディングス (東証1部【8473】) SBIリクイディティマーケット (非上場) |
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ネット系 | YJFX! | ヤフー(東証1部【4689】) | ||||
楽天証券 | 楽天(東証1部【4755】) | |||||
GMOクリック証券 |
GMOインターネット (東証1部【9449】) GMOクリックホールディングス (JASDAQ【7177】) |
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FXプライムbyGMO | ||||||
その他 | ジャパンネット銀行 |
三井住友 フィナンシャルグループ (東証1部【8316】) 三井住友銀行(非上場) ヤフー株式会社 (東証1部【4689】) |
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外資系 | IG証券 | IG証券 (英IG Group Holdings (英国で上場)) |
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ゲインキャピタル・ ジャパン |
ゲインキャピタル・ ホールディングス (ニューヨーク証券取引所で 上場) |
上表では上場している会社の業種に合わせて、「FX系」、「証券系」、「金融グループ系」、「ネット系」、「外資系」、「その他」の6つにカテゴリー分けした。この分類はザイFX!編集部独自のものなので、その点はご了承いただきたい。実際問題、2つのカテゴリーにまたがる感じの企業もいくつか含まれている。
それでは、順番に説明していこう。
はじめに「FX系」だが、これはFX会社そのものが上場している、また親会社が上場しているケースであっても、メインとなる事業がFXであれば、こちらのカテゴリーに振り分けた。
たとえば、ヒロセ通商は昨年(2016年)3月に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)市場に新規上場しているので、こちらのカテゴリーに入る。
【参考記事】
●FX専業のヒロセ通商がJASDAQ上場! 初値後に株価上昇で滑り出しも上々!
●ヒロセ通商の新規上場セレモニーに潜入! ビットコイン導入予定は? 株主優待は?
また、マネーパートナーズやトレイダーズ証券は、親会社で持株会社のマネーパートナーズグループやトレイダーズホールディングスが株式上場している。
マネーパートナーズグループやトレイダーズホールディングスの場合、メインとなる事業はマネーパートナーズやトレイダーズ証券が提供しているFXサービスなので、「FX系」に入れたというわけだ。
そして、意外と珍しいケースなのがJFX。何が珍しいのかといえば、JFXの親会社は先ほど紹介したヒロセ通商で、そのメインとなる事業もFXなのだ。
このような場合、たとえばヒロセ通商ホールディングスといった持株会社を作り、その傘下にヒロセ通商とJFXが連なるような形をとることが多いのだが、ヒロセ通商、JFXについてはそうなっていないということだ。
証券系には大手ネット証券が並ぶ
次に紹介するのは「証券系」。こちらには、マネックス証券、岡三オンライン証券、カブドットコム証券を分類している。
親会社については、マネックス証券がマネックスグループ、岡三オンライン証券が岡三証券グループということで、いずれも持株会社が東証一部に上場しているわけだが、メインは証券事業となっている。
また、カブドットコム証券については、単独で東証一部に上場している。
その中で、カブドットコム証券の親会社は非上場の三菱UFJ証券ホールディングス。同社はカブドットコム証券が発行している株式の半数以上、52.09%を保有し、子会社化(※)している。
(※「子会社化」とは、ある企業が別の企業の株式を50%以上保有すること)
そして、三菱UFJ証券ホールディングスは、東証一部上場の三菱UFJフィナンシャル・グループの傘下に入っている。
同グループは言うまでもなく、メガバンクの雄、三菱東京UFJ銀行などを擁する企業集団。その意味では、次に紹介する「金融グループ系」に分類することも考えられるが、カブドットコム証券自体が上場しているため、今回は「証券系」に分類した。
旅行会社HISと外為どっとコムの意外な関係って?
そして、「金融グループ系」に入れたのは、外為どっとコムとSBI FXトレード。
外為どっとコムの親会社は、東証JASDAQ(スタンダード)に上場している澤田ホールディングス。
澤田ホールディングスと聞いてもピンとこないかもしれないが、澤田ホールディングスの代表取締役会長である澤田秀雄氏は、大手旅行会社・HISの創業者であり、代表取締役会長兼社長を務めている人物。
澤田氏といえば、経営不振だった長崎県のテーマパーク、ハウステンボスを立ち直らせたことでも有名な実業家だ。
そんな澤田氏が率いる澤田ホールディングスは、ロシアのソリッド銀行やモンゴルにあるハーン銀行を傘下にしている。モンゴルの銀行が傘下に入っているというのもなかなか珍しい。さらに日本国内では、エイチ・エス証券などを傘下に収める。
つまり外為どっとコムは、銀行や証券会社を傘下に持つ、澤田ホールディングスのグループ企業ということになるわけだ。
また、SBI FXトレードについては、親会社のSBIリクイディティマーケットが株式を100%保有している。
そして、SBIリクイディティマーケットの親会社は東証一部上場のSBIホールディングス。おなじみ、ネット証券最大手のSBI証券などを擁する金融グループだ。住信SBIネット銀行、SBI損害保険、SBIカードといった企業が多数傘下に入っている。
さらに、SBIファーマやSBIバイオテックといったバイオ関連事業、そして、SBI大学院大学を設立するなど、教育分野にも手を広げている。
ヤフーや楽天などIT系が親会社になるケースも
次に「ネット系」だが、こちらの親会社はいずれもインターネット関連事業で日本を代表する存在ばかりだ。
YJFX!や楽天証券、そして、クリック証券とFXプライムbyGMOがそれにあたる。
親会社は、YJFX!はヤフーで楽天証券が楽天。ヤフーはインターネットのポータルサイトなどを運営し、楽天はインターネットショッピングでもおなじみの楽天市場を運営している。どちらも改めて紹介する必要がないほどの有名な会社だ。
楽天証券はネット証券大手だが、上場している会社で分類したので「ネット系」に入れた。
そのFXCMジャパン証券を買収したことでも話題になった。
【参考記事】
●楽天証券がFXCMジャパン証券を吸収して経営統合! MT4書籍がもれなくもらえる!
●買収金額74億円! 楽天証券がFXCMジャパン証券の買収&子会社化を発表!
また、YJFX!といえば、以前は、こちらもIT系で東証一部に上場しているサイバーエージェントが親会社で、社名もサイバーエージェントFXだった。
それを、サイバーエージェントがヤフーに譲渡したことによって、2013年1月末をもってヤフーに完全子会社化され、社名もYJFX!に変更されたというわけだ。
【参考記事】
●【動画あり】ワイジェイFX(YJFX!)誕生! CMに俳優のオダギリジョーさんを起用!
●新会社(?)YJFX!の正体とは? 新サービス【オプトレ!】がおもしろい!
そして、GMOクリック証券とFXプライムbyGMOは、東証一部上場の持株会社、GMOクリックホールディングスが100%の株式を保有している。
GMOクリックホールディングスのメインとなる事業はGMOクリック証券の証券事業なので、そういった意味では、「ネット系」ではなく「証券系」に振り分けられるのかもしれない。
でも、そのGMOクリックホールディングスが発行する株式の81.9%を親会社であるGMOインターネットが保有していることから、今回は「ネット系」に振り分けた。
GMOインターネットはインターネットインフラ事業やインターネット広告事業などを手がけている会社だ。
【参考記事】
●連続してFX業界再編の大きな動き! GMOクリックHDがFXプライムへTOB!
●GMOクリックHDがジャスダック上場へ!これはGMOクリック証券の実質上場?
●GMOクリックHDが株主優待を新設!1万円キャッシュバックにモウカレーうどんも
ジャパンネット銀行は「銀行系」と「ネット系」の中間?
そして、「その他」に振り分けた、ジャパンネット銀行は「銀行系」と「ネット系」の中間ぐらいの位置づけ。
もちろん、ジャパンネット銀行そのものは認可を受けている銀行。ただ、親会社の持株比率を見ると、東証一部に上場している三井住友フィナンシャルグループ傘下の三井住友銀行、そして、ヤフーが41.16%で並んでいることから、今回は「銀行系」といったカテゴリーを作って振り分けることはせず、「その他」に分類したというわけだ。
ちなみに、ヤフーがジャパンネット銀行の持株比率を41.16%にまで引き上げて主要株主になったのは2014年4月。それまではジャパンネット銀行が発行する株式の半分以上、61.44%を三井住友銀行が保有していたので、この状況であれば「銀行系」に振り分けていただろう。
グループ | 会社名 | 上場関連会社名 (一部非上場含む) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
FX系 | インヴァスト証券 | インヴァスト証券(JASDAQ【8709】) | ||||
ヒロセ通商 | ヒロセ通商(JASDAQ【7185】) | |||||
JFX | ||||||
トレイダーズ証券 | トレイダーズホールディングス (JASDAQ【8704】) |
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マネーパートナーズ | マネーパートナーズ グループ (東証1部【8732】) |
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証券系 | マネックス証券 | マネックスグループ (東証1部【8698】) |
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岡三オンライン証券 | 岡三証券グループ (東証1部【8609】) | |||||
カブドットコム証券 |
三菱UFJフィナンシャル・ グループ (東証1部【8306】) 三菱UFJ証券 ホールディングス(非上場) カブドットコム証券 (東証1部【8703】) |
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金融 グループ系 |
外為どっとコム | 澤田ホールディングス (JASDAQ【8699】) |
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SBI FXトレード |
SBIホールディングス (東証1部【8473】) SBIリクイディティマーケット (非上場) |
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ネット系 | YJFX! | ヤフー(東証1部【4689】) | ||||
楽天証券 | 楽天(東証1部【4755】) | |||||
GMOクリック証券 |
GMOインターネット (東証1部【9449】) GMOクリックホールディングス (JASDAQ【7177】) |
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FXプライムbyGMO | ||||||
その他 | ジャパンネット銀行 |
三井住友 フィナンシャルグループ (東証1部【8316】) 三井住友銀行(非上場) ヤフー株式会社 (東証1部【4689】) |
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外資系 | IG証券 | IG証券 (英IG Group Holdings (英国で上場)) |
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ゲインキャピタル・ ジャパン |
ゲインキャピタル・ ホールディングス (ニューヨーク証券取引所で 上場) |
IG証券の親会社はロンドン証券取引所に上場
最後に紹介するのは「外資系」。こちらは、IG証券やゲインキャピタル・ジャパンなどが該当する。
IG証券は英国のロンドンに本社を置く金融グループ、「IG Group Holdings」の日本拠点で、FXやCFDサービスを提供している。
なお、IG証券の親会社である「IG Group Holdings」はロンドン証券取引所に上場していて、「イギリスFTSE250種総合株価指数」の構成銘柄にも入っている。
ちなみにIG証券といえば、取扱銘柄が豊富なCFDを提供しているが、実は、同社では「IG Group Holdings」の株式を取引することもできる。そのチャートは以下のとおり。直近で大きく下落しているのは微妙なところだが…。
IG証券のCFDに興味のある人は以下の記事を参考に。
【参考記事】
●新年早々キャッシュバックが激アツだ! 先着150名にゆる~い条件で最大5万円!
●業績不安、1.4兆円の巨額制裁金などで暴落中のドイツ銀行株で儲ける方法とは?
●アップルウォッチでアップル株を売買!? そんなことが可能なFX・CFDアプリとは?
そして、ゲインキャピタル・ジャパンだが、その親会社となるのがゲインキャピタル・ホールディングス。
ゲインキャピタル・ホールディングスは米国でFXサービス「FOREX.com」を運営。ニューヨーク証券取引所に株式上場している。
未上場のFX会社の経営状況を知る方法って?
ここまで、FXサービスを提供している会社やその親会社の株式上場がどうなっているのかを見てきた。
日本では上場企業は、四半期(3カ月)ごとに決算書を開示することが義務づけられている。だから上場しているFX会社であれば、経営に透明性があり、経営状況が好調であれば信頼性も高まることになる。
では未上場のFX会社の経営状況を知ることはできないのかといえば、実は、そんなこともない。
金融商品取引法では、登録金融機関は事業年度ごとに、内閣府令で定めるところにより、事業報告書を作成し、毎事業年度経過後3カ月以内に、内閣総理大臣に提出することが定められている。
ここでいう、登録金融機関には銀行や証券会社などのほかに、FX会社も入っているので、FX各社はこの事業報告書を作成し、提出する義務があるというわけだ。
その内容はというと、損益計算書や貸借対照表、さらに業務状況の詳しい解説というように、上場している会社が公表しているような決算書の内容が網羅されていて、経営状況を把握することができるようになっている。
そして、この事業報告書はすべての営業所または事業所に備え置く必要があり、その上、誰でも見ることができなければならない決まりになっている。
つまり、すごく簡単に言ってしまえば、一般の人がFX会社に行って事業報告書を見たいと言えば、見せてくれるということなのだ。
そういったことも考慮してなのか、FX各社は「業務及び財産の状況に関する説明書」といったタイトルの事業報告書を公式ウェブサイトなどで公表していることが圧倒的に多い。
もっとも、上場企業が四半期ごとに決算書を開示しているのに対し、事業報告書は1年に1回。そういった意味では、上場企業のほうが経営に対する透明性がより高いといえるだろう。
FX会社の業績が気になる人は、こういった事業報告書も参考にしてみてはどうだろう。
なおザイFX!でも、FX各社の信頼性をチェックできるコンテンツを用意しているので、ぜひ、ご参考に。
【参考コンテンツ】
●FX会社おすすめ比較:会社の信頼性で比べる
(ザイFX!編集部・庄司正高)
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加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)