■リスクオンに無反応の円がリスクオフに無反応とは限らない
米3月利上げ観測が高まっている中、足元の米ドル全体の上昇は、当然の結果と思われる。
また、トランプ氏の議会演説を無事通過したところに、NYダウの2万1000ドルの大台乗せもあって、リスクオンの局面がしばらく続くと推測されるから、米ドル/円も高値トライしやすいだろう。115円の節目回復があれば、米ドル/円の一段高値トライを覚悟しておきたい。
(出所:Bloomberg)
反面、一抹の不安もある。
なにしろ、NYダウをはじめ、米国株の連騰はショート筋の踏み上げが背景になっていた模様だ。特にトランプ大統領初の議会演説前に、米国株の空売りが急増し、その後、急速に決済(買戻し)されたと言われている。米国株の大台乗せは、どうやらショート筋の投げによって作られた側面が大きい。
そもそも、2017年年初来の米国株の連騰は、リスクオン・オフの意味合いにおいて、円の値動きとだいぶ乖離してきたが、リスクオンに反応しない円がリスクオフにも反応しないとは限らない。
仮に米国株が崩れてくれば、リスクオフの円買いが間違いなく展開されるから、やはり油断できない。
■NYダウはどこまで上がる? バブル崩壊は?
では、肝心の米国株をどうみるべきか、米国株はどこまで上昇するのか、果たして歴史的な天井から暴落がくるのか。
究極的には、これらの質問をすべて事前に答えられる人はいないと思うし、筆者にわかるならば、もうとっくにこの原稿を書いていないと思われるが、あえて答えるなら、目先、米国株は調整があっても、崩れる(ベア(下落)トレンドへ転換)のは回避されるのではないだろうか。いつかは崩れると思うが、目先でないことは確かだ。
(出所:Bloomberg)
なぜなら、米3月利上げ観測が90%の確率まで上昇し、また、1回50ポイントの利上げもありといった憶測が出始めている現在のような状況において、経験則的には、米国株のベアトレンド転換はなかなか前例がないからだ。
要するに、利上げ途中、また、利上げを加速している間は景気は上昇し、また加速期間であるため、米国株が買われすぎの状態にあってもなかなか崩れない。利上げが最終段階、また一服しそうな時、初めて崩れる可能性が出てくるが、今はその段階ではない。
確かに連騰する米国株は「バブル」であるかもしれないが、歴史的な高値圏にあるから、連続して史上最高値を更新したからと言って、米国株が暴落してくるとは限らない。このあたり、市場より出しゃばりすぎないほうがよさそうだ。
■米ドル/円は115円に乗らなければ、なお保ち合いか
まとめてみると、米ドル/円を含め、米ドル全体はすでに上昇波に復帰した公算が大きく、また、米利上げ途中といった時期において、本格的なリスクオフの局面がすぐ来るとも想定されにくいから、米ドル高基調が当面継続されるだろう。
ただし、前回のコラムでも指摘したように、「トランプ・ラリー」の再来も期待しにくいから、米ドル高が継続しても、急伸ではなく、ゆるやかなトレンドになりやすいのでは。
【参考記事】
●レジスタンスとサポートの役割転換に注目! あそこを突破すれば、米ドル買いの好機!(2017年2月24日、陳満咲杜)
この意味では、米ドル/円に限って言えば、115円の節目乗せに成功しないうちは、なお保ち合いありと覚悟すべきではないだろうか。
(出所:Bloomberg)
市況はいかに。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)