■ムニューシン氏の発言で米ドルは上昇できず
米ドル全体が重要な分水嶺にさしかかっている。ドルインデックスは一昨日(2月22日)、101.73にて再度頭打ちとなり、2月15日(水)高値と相まって、重要なレジスタンスゾーンを示唆した。
(出所:Bloomberg)
米ドルの頭の重さは、ムニューシン米財務長官の発言が効いたことによるとされる。氏はトランプ政権によるあらゆる政策について、2017年内の効果は限定的と述べ、また、米国が「長期間低金利である可能性」に言及、さらに「米ドル高には一定の問題がある」と話した。
ムニューシン氏の発言が、米ドルの上昇を阻んだとされている (C)Bloomberg/Getty Images
もっとも、ムニューシン氏は強い米ドル政策の維持も表明していたが、建前なのでは…と市場に流された模様。トランプ政権による大型減税や財政出動が想定より遅れる、また、規模が小さくなるのでは…といった推測が出始め、米ドルの反騰を抑制するには十分なインパクトがあった。
ゆえに、2月28日(火)のトランプ大統領の議会演説が一層注目され、政策の中身が問われるわけだ。というのは、市場は「トランプ・ラリー」を経て、その裏付けを求めようとしているからだ。
■FOMC議事録も米ドル反騰を抑える要因に
その上、2月22日(水)に公表されたFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録の一節も、米ドルの反騰を抑え込んでいると思われる。
「数人のメンバーは、米ドル高が経済を下振れさせるリスクがあるといった見方を示した」と記した同議事録は、2017年1月末のFOMCをまとめたものだから、当時のドルインデックスの水準(1月終値は100.32)に照らして考えると、足元の方が上に位置しているので、米ドルのロング筋にとって気がかりであったことは間違いない。
このため、議事録が示唆したタカ派基調は、同じく流された模様だ。
■テクニカル的にもレジスタンスゾーンにさしかかっている
テクニカル上の視点では、やはり、重要なレジスタンスゾーン(色枠で表示)に遭遇しているから、米ドルの反騰が一服してもおかしくない段階にある。
同レジスタンスゾーンについては、これからのブレイクの有無が重要であることは言うまでもないが、上放れできれば、米ドル高の加速が想定される。反面、ここでの頭打ちが確定される場合、日足において大型「三尊型(※)」の形成が懸念される。
(※編集部注:「三尊型」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。仏像が3体並んでいるように見えるために「三尊型」と呼ばれていて、人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼ぶこともある)
(出所:Bloomberg)
この意味では、2月2日(木)安値99.23を起点とした反騰が、2017年年初来の反落に対する反動であるいう意味合いが確認されたとしても、メインレジスタンスゾーンを突破できない限り、上昇推進波という性質を確認できずにいる。
だから、目先なおトレンドレスの状態にあると言っても大した間違いではないと思うが、近々大きなトレンドの推進が見られるだろう。
何しろ、メインレジスタンスゾーンのブレイクがあれば、2017年年初来高値の更新が確実視されるから、米ドルの急上昇が想定される。
反面、大型「三尊型」が確認される場合、96の水準を割り込むまで下落波が続くと推測されるから、下落トレンドも鮮明になってこよう。
では、どちらにブレイクしていくのだろうか。結論から申し上げる…
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)