(「振り込んだお金が消滅!? FX業界でも、てるみくらぶ事件は起こり得るのか?」からつづく)
■信託保全の安全神話をぶち壊したイニシア・スター証券
「信託保全は安全とは限らない」という、日本FX史上に燦然と輝く事例を残してくれた会社がある。イニシア・スター証券だ。
同社は2012年に関東財務局から業務停止命令、さらには登録取消しという厳しい処分を受け、ついには破綻に至った。

(出所:金融庁)
イニシア・スター証券はいったい何をやったのか?
関東財務局が2012年12月5日に発表した「イニシア・スター証券株式会社に対する行政処分について」という文書の一部を引用すると、以下のとおりだ。
① 顧客区分管理必要額の信託不足
今回検査において、顧客区分管理必要額の算定根拠となる顧客からの預り金(以下「顧客預り金」という。)を確認したところ、116百万円の信託不足が発生している。
② 区分管理すべき顧客資産を運転資金等に流用している状況
上記①において、当社A取締役は、当社会長(当社の100%子会社(以下「B社」という。)の社長)から、顧客預り金を取り崩してB社や当社会長から指示のあった者への貸付金(又は立替金)とするよう指示を受け、平成24年8月31日以降、部下に指示の上、数度に亘り顧客区分管理信託額から取り崩し、125百万円を貸付金(立替金)や当社の運転資金等に流用している。
つまり、イニシア・スター証券は表向き、信託保全していると言っていても、実際には信託保全しておらず、顧客資金を運転資金などに流用していたということだ。
信託保全というしくみは、それがありさえすれば、絶対安全というわけではなく、実際に信託保全が実行されていなければダメなのだということをイニシア・スター証券は身をもって、FXトレーダーのみなさんに示してくれたのである。

(出所:「Internet Archive」に保存されていたもの。ただし、空白になっていた箇所を削除して構成)
前回の記事で筆者は“破綻でお金が戻ってこないリスク”については…
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