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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

米国株と米国債、米経済はどちらを反映?
レイ・ダリオ氏の警告。米ドル急落に警戒!

2017年06月08日(木)16:30公開 (2017年06月08日(木)16:30更新)
西原宏一

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■米国経済を反映しているのは、米国株か米国債か?

 みなさん、こんにちは。

 過去2カ月、マーケットでは米経済を反映しているのは、米国株なのか米国債なのかという論議が行われていました。

 AmazonやFacebook、AppleなどのIT系が牽引し、底堅く推移している米国株をみていると、最近停滞気味の経済指標にも関わらず、米経済は好調を維持しているように見えます。

NYダウ 日足
NYダウ 日足

(出所:Bloomberg)

 一方、6月13日(火)~14日(水)に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げをほぼ織り込んでいる金融市場では、米金利の停滞が続いています。

米長期金利(米10年物国債利回り) 日足
米長期金利(米10年物国債利回り) 日足

(出所:Bloomberg)

 好調な米国株を材料視すると、米ドル/円も底堅く推移するはずですが、チャートが示しているように、米ドル/円は米国株に追随していません。

米ドル/円&NYダウ 日足
米ドル/円&NYダウ 日足

(出所:Bloomberg)

 むしろ、このところは逆相関ともいえる展開。

 では、連動しているといわれている日経平均と米ドル/円はどうか?

米ドル/円&日経平均 日足
米ドル/円&日経平均 日足

(出所:Bloomberg)

 これも過去1カ月、米ドル/円は日経平均の上昇に追随していません。

 では、米ドル/円を動かしている要因はなにか?

米ドル/円は米金利の下落に追随して続落しています。

米ドル/円&米長期金利(米10年物国債利回り) 日足
米ドル/円&米長期金利(米10年国債利回り) 日足

(出所:Bloomberg)

 マーケットでは、日本株の上昇に比較して、米ドル/円の反発が弱く、米ドル/円が遅れて追随するとの見方もありましたが、今週(6月5日~)に入っての米ドル/円は節目の110.00 円を割り込み、一時109.12円まで下落しています。

米ドル/円 4時間足
米ドル/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足

■米金利が上昇しないと、米ドル/円は上昇基調に入れず…

 この背景には「中東5カ国がカタールとの国交を断絶」との報道がきっかけになっています。

 カタールの政府系ファンドは「QIA(qatar investment authority)」。

 友人によれば、QIAのアジア向けの投資額は200億ドル。その40%程度が日本株とのウワサ。

 80億ドル程度だと、昨年(2016年)のサウジアラビアと違って、それほど日本株下落に警戒することはないと思うのですが、QIAの報道がセンチメントを悪化させています。

 この報道を横目に米10年債利回りは現時点で、2.18%と極めて低水準。

米長期金利(米10年物国債利回り) 日足
米長期金利(米10年物国債利回り) 日足

(出所:Bloomberg)

 このところの「米ドル/円と米国債利回りの相関の高さ」から判断すれば、この米金利が底固めをして上昇基調に入らないと、米ドル/円は上昇基調に入らないといえます。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

■レイ・ダリオ氏の警告、米ドル急落に警戒

 では、米国債利回りは今後、大きく反発するのかを探ってみます。

 8日(水)の東京市場で話題になったのが、下記の豊島逸夫氏によるレイ・ダリオ氏の記事。

 レイ・ダリオ氏はブリッジウォーター・アソシエーツという巨大ヘッジファンドの創設者です。

トランプ氏不信を映す円高・ドル安

ニューヨーク(NY)のヘッジファンド業界で今週話題になっているのが、米著名投資家、レイ・ダリオ氏の米トランプ政権を憂う発言だ。同氏はブリッジウォーター・アソシエーツという巨大ヘッジファンドの創設者ゆえ、注目度も極めて高い。


ダリオ氏は、かつて米大統領選挙でのトランプ氏勝利を歓迎し、経済活性化を期待していたが、今週、明確に変心したことを明らかにしたのだ。

「全体と部分に分ければ部分、調和と対決に分ければ対決を選ぶ強い傾向がトランプ大統領にみられる。心配だ。その影響は我々に及ぶ」とSNS(交流サイト)を通じて語った。

今週、トランプ政権とロシアとの関係を巡る疑惑「ロシアゲート」について議会証言する予定で注目されているコミ―前米連邦捜査局(FBI)長官も、ブリッジウォーターの法律顧問を3年間務めた経歴がある。

ダリオ氏は信頼している人物が窮地に立つことが心配のようで、コミー氏を評価する発言もしている。

ここにきて、米経済界とトランプ政権のあつれきが一段と目立つようになった。一時はホワイトハウスに招かれた大企業トップたちが、そろってトランプ氏に理解を示した蜜月の時期もあった。しかし、トランプ政権による、地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」からの離脱決定が決定的な溝を作った。多くのトランプ支持の最高経営責任者(CEO)たちまでが反対するなかで強行したからだ。特に多国籍企業にとって、米国の孤立はゆゆしき問題である。

いまだトランプ氏の財政政策案に期待を残す経済人も多い。しかし、その期待は時を追うにつれ、揺らいでいる。

出所:日経新聞

 この報道にあるように、トランプ政権による「パリ協定」からの離脱決定をきっかけに、米経済界とトランプ政権の溝が深くなっています。

 米大統領選挙でのトランプ氏勝利を歓迎していたレイ・ダリオ氏ですら、今週(6月5日~)、明確に変心した模様。

 こうした背景からは、米金利の大きな反発は期待できず、米経済を反映しているのは、米国株ではなく米10年債利回りであるというほうが正しいのかもしれません。

米国債利回りが上昇しなければ、米ドル/円の大幅な反発は期待できず。

 仮に米国株が調整に入ると、米ドル/円が急落する恐れも出てきています。

 レイ・ダリオ氏も懸念するトランプ政権の行方と、低迷する米金利と米ドル/円の行方に注目です。


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