■英下院総選挙の結果は、ハング・パーラメント
2017年6月8日(木)、英下院総選挙が実施されました。
日本時間の6月9日(金)午前6時に投票が締め切られ、日中には大勢が判明したワケですが、6月9日(金)早朝の為替相場は、投票締切り直後の出口調査結果で、「与党・保守党が過半数を獲得できない可能性がある」と報じられたことを受けて英ポンドが急落を見せるなど、朝から、なんだか不穏な動きでしたね…。
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結局、与党・保守党は第1党を守ったものの、早朝の出口調査の結果どおり議席数を減らし、単独過半数を獲得することはできませんでした。
ただ、早朝の下げがいささか強烈だったせいか、開票が進み、保守党の過半数割れが確実なものになってからの相場は、それほど大きな反応は見せませんでしたね。
何はともあれ、これで英下院はどの政党も単独過半数を獲得できていない、ハング・パーラメント(宙吊り議会)に陥ることに…。どうなっちゃうんでしょうか…。
最終結果が反映されたものではありませんが、英下院・全650議席の政党別獲得数は、以下のとおりです。与党・保守党とスコットランド国民党が大きく議席数を減らし、代わりに最大野党の労働党が躍進したことがわかります。
※「CON」=保守党、「LAB」=労働党、「SNP」=スコットランド国民党、「LD」=自由民主党、「DUP」=民主統一党(北アイルランド)、「OTH」=その他
※「CON」=保守党、「LAB」=労働党、「SNP」=スコットランド国民党、「LD」=自由民主党、「DUP」=民主統一党(北アイルランド)、「OTH」=その他
■EU離脱交渉を進めるために、盤石な基盤を築くはずが…
振り返ってみると、今回の総選挙は、本来、2020年に実施される予定でしたが、2017年4月18日(火)、メイ首相が、EU(欧州連合)離脱(ブレグジット)交渉を行うにあたって、より安定した政権運営をしていきたいということで急遽、前倒しすることを表明。
改選前の議席数は、保守党が330議席、最大野党の労働党が229議席と、保守党だけで単独過半数を獲得できていたのですが、メイ首相は保守党の議席数をもっと伸ばそうとして、あえて総選挙に踏み切ったというワケです。
5月3日(水)に議会は解散され、6月8日(木)の投票を迎えることになりました。
保守党だけで単独過半数を獲得できていたにも関わらず、あえて解散・総選挙に踏み切ったメイ首相。EU離脱交渉を進めるために、より盤石な基盤を築くはずだったが (C)WPA Pool/Getty Images
■メイ首相は責任をとって辞任せよ! との声も…
当初、メイ首相率いる与党・保守党が圧勝するのでは?との見方が強く、メイ首相が解散総選挙を表明した4月18日(火)を境に、英ポンドはグイっと上昇。
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メイ首相としても、もちろん圧勝するつもりだったと思いますが、6月8日(木)の投票日が近づくにつれて、事前の世論調査結果などを見ると、最大野党の労働党が追い上げてきている感じに…。
保守党が掲げる選挙公約が、高齢者や子どもに負担を強いるものだったことなどがどうも不評だったようです。
あれれ? なんだか雲行きが怪しいゾ!?
英国については、2016年6月に行われたEU離脱を問う国民投票の例がありますし(まさかのブレグジットっていう…)、またしても前評判を覆す、驚きの結果が飛び出すのでは? と、懸念が広がっていきました。
【参考記事】
●緊急特集:EU離脱・英国国民投票まとめ。まさかのEU離脱で世界に激震
結果、保守党が第1党から引きずり降ろされるという、まさかまさかのサプライズは回避されたものの、冒頭でお伝えしたとおり、保守党は単独過半数の議席を獲得することはできませんでした。
これを受けて一部では、メイ首相は責任を取って辞任すべきだとする声も聞かれます…。ついでにお伝えすると、ブレグジットの旗振り役となったボリス・ジョンソン前ロンドン市長をメイ首相の後任として推す声もあるようです。
選挙結果を受けて、一部では、メイ首相は責任を取って辞任すべきだとの声も聞かれる。ピンチに立たされたメイ首相、どうする…? (C)Matt Cardy/Getty Images News
■英ポンドは暴落ではないけれど…明るい材料もないし…
いずれにしても、英下院は、今回の選挙の結果、ハング・パーラメントを招いたことに変わりはありませんので、保守党が政権を維持するにしても、労働党が保守党になり代わって政権を樹立するにしても、その他の小規模政党の協力が不可欠となります。
情勢次第では、もしかしたら労働党の党首・コービン氏が英首相になる可能性もあるのかも…?
EU離脱交渉という大仕事を控えて、この混乱…。選挙結果を受け、英ポンドは今のところ、暴落というほどの下落にはなっていませんが、先行きも明るいとも言えなさそうな雰囲気です。
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材料出尽くしで戻り始める、みたいなことがあるかもしれませんが、個人的には全力で買おう! みたいな気分にはなれない感じ…。ちょっと様子見しておきたいところです。
■仏議会選挙やFOMCも続く! 「窓埋めトレード」もチェック
さて、6月8日(木)は、ECB(欧州中央銀行)理事会、コミー前FBI長官の議会証言と、当記事でお伝えしてきた英下院選挙以外にも注目のイベントがありました。
英国についてはお伝えしてきたとおり、今後の動向が気になるところではありますが、他のイベントについては、いずれも差し当たり、そこまで大きな混乱に見舞われることなく通過したと言えそうです。
このあとも、6月11日(日)にはフランス国民議会(下院)選挙の第1回目、6月13日(火)-14日(水)には利上げが確実視されている米FOMCと注目イベントが続きます。
気を抜けない日々が続きますが、引き続き、為替相場の動向に注目しましょう。
なお、週末に何かしら事件やイベントがあった場合、週明け月曜日の相場が窓を開けて始まる…みたいなことがしばしば起こります。
それに注意が必要なのはもちろんですが、それとともに、こうした窓開けの動きを利用した「窓埋めトレード」という手法があるのをご存知でしょうか?
以前、ザイFX!では、他のFX会社よりも2~3時間早い、月曜午前3時~4時から取引できるサクソバンク証券の口座を使った「窓埋めトレード」のやり方について紹介する記事を公開しています。
この機会にぜひ、チェックしてみてくださいね。
【参考記事】
●月曜日の窓埋めトレードを狙ってひと儲け! 午前3時からトレードすればニ度オイシイ…!?
●窓埋めトレードの絶好のチャンスだった仏大統領選後のユーロ相場でひと儲け!
(ザイFX!編集部・向井友代)
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