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田向宏行
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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

過去2回の米利上げ後は米ドル安に…。
でも今回は違うとみる! それはなぜか?

2017年06月09日(金)17:40公開 (2017年06月09日(金)17:40更新)
陳満咲杜

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■米雇用統計結果不振で米ドル売りだが、利上げには影響なし

 先週末(6月2日)の米雇用統計は、予想をずいぶん下回った。事前のADP民間雇用者数がよかっただけに、マーケットはサプライズの反応を示し、米ドル売りがさらに進んだ

 ただし、ドルインデックスは97の節目割れがあっても、下落モメンタムが一段と強まりはしなかった。ユーロ/米ドルにしても、やはり昨年(2016年)11月9日(トランプ氏当選日)の高値(1.13ドル)を上回っていない。

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足

(出所:Bloomberg)

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足

(出所:Bloomberg)

 5月雇用統計の不振で、米利上げ中止の観測も一部には出ているが、市場センチメントは「今月(6月)の利上げは確実、その後は状況次第」といったところだ。

 9月利上げがなくなり、12月まで待たなければならないというゴールドマン・サックスさんの予測が今のコンセンサスを代弁しているように聞こえるが、状況は流動的で、米雇用統計に限っては、ウォール街の猛者でも大した根拠を持たないようだ。

 為替業界に身を投じて以来、あらゆる修羅場をくぐってきたが、米雇用統計だけは予測すべきでないことを悟ってきた。これはもはや投資業界の常識といえるぐらいだが、その予測を生業としている方も多いから、あえてそれを口にできないところも大きい。

 いずれにせよ、予測完全不可能とは言い切れないものの、基本的に確率が非常に低いものにあれこれ頭を使ってもしょうがないから、米雇用統計云々を根拠にした米利上げ中止といった予測はまじめに捉えなくてもよいと言い切れる。

■過去2回の利上げ後に米ドル高にならなかった理由とは?

 6月利上げは確実だから、これからの焦点はやはり、利上げ後の米ドルの反応だ。

 昨年(2016年)年末の利上げも、今年(2017年)3月の利上げも、その後は米ドル高ではなく、米ドル安が続いたから、6月利上げも同様になると思われる節は確かにある。しかし、よく点検すれば、今回は違ってくる可能性があることを見逃せない。

 利上げ後の米ドル安に関しては、後づけで解釈することも実は簡単ではない。なにしろ、市場はあらゆるファンダメンタルズや市場参加者たちの思惑を織り込んで価格を形成しているから、たやすくまとめることはできないのだ。

 一方、複雑な物事だからこそ、本質的にシンプルに捉えるべきだと思うから、ポイントを指摘するなら、以下の理由が挙げられるのではないだろうか。

 まず、昨年(2016年)12月14日(水)の利上げ後に結局は米ドル安になったのは、いわゆる「トランプ・ラリー」の「行きすぎ」、すなわち、米ドル高の「行きすぎ」が明らかな時期と重なっていたからだ。利上げ後に米ドルは一段高を演じたものの、それは長くは続かなかったのである。

 次に、今年(2017年)3月16日(木)の利上げ直後に米ドル安が進んだのは、FRB声明文やイエレン議長の話が効いた側面が大きかったからだ。

 マーケットは昨年(2016年)12月時点のものより、経済見通しは明るくなり、今後の金利引き上げペースは早まると予想していたが、FRBは経済見通しを据え置き、また、今後の利上げペースを早めなかった。マーケットの期待は裏切られる形となったのである。

 言ってみれば、3月利上げ後の米ドル安は、事前に市場予想が良すぎたところに起因していたといえる。

■過去2回と違い、米ドルのマイナス材料はかなり織込み済み

 だからこそ、今回は違ってくるのではないかと思われる。

 なにしろ、6月利上げ観測は維持されているものの、これからの利上げペースは早まるのではなく、緩やかになると、今は市場参加者が予想しているから、いわゆる「失望売り」が出にくい。

 詰まるところ、2017年年初来、米ドル全体の大幅反落が続いてきたからこそ、米ドルのマイナス材料はかなり織り込まれており、これ以上の下落余地は逆に小さいといえる。

 当然のように、このような思惑は「トランプ・ラリー」がもたらした米ドルの全上昇幅がほぼ帳消しにされたからこそ言える側面も大きい。

 また単純な話で、テクニカルの視点では、昨年(2016年)年末の利上げは「トランプ・ラリー」の最終段階、また、今年(2017年)3月の利上げは同ラリーに対する修正の途中といった位置づけができる。だから、利上げでも米ドル高が続かなかったわけであり、また、これは利上げ直後の米ドル安を理解するカギとして重要な視点だと思う。

■これから米ドル全体が反騰しやすい時期に

 トランプ氏のロシアゲート疑惑が続いていることも、米ドルの頭を押さえている要素として解釈されるが、米国株の堅調ぶりから考えると、少なくとも米ドルの頭の重さとリスクオフ云々との関連性は薄いのではないだろうか。

 もっとも、昨日(6月8日)、前FBI長官のコミー氏の議会証言を受け、トランプ氏弾劾シナリオの確率は、上昇ではなく下落してきているので、目先は無風通過の様子だ。

 ECB(欧州中央銀行)理事会では、利下げの停止が明言されたものの、金融政策の正常化については討論せず、ドラギ総裁の記者会見も終始曖昧な発言に終始した。タカ派発言を期待していた一部市場関係者らは肩を落した模様。

 残るは英国総選挙の結果だ。

 執筆中の現時点では、まだ最終結果が出ていないものの、与党・保守党が全議席の過半数を確保できない可能性が高まり、英ポンドは急落、次期首相もブックメーカーのオッズで一時、ボリス・ジョンソン氏のほうがメイ首相を上回ったと伝わってきている。

【参考記事】
圧勝するつもりの選挙で過半数割れ!? 英総選挙で保守党敗北、英ポンドは急落!

 最悪の場合、メイ首相の辞任もあり得るから、これから情勢が逆転しない限り、英ポンドの続落は避けられないだろう。主要通貨の対米ドルでの上昇は、すでに頭打ちになった公算が高いから、これから米ドル全体は反騰しやすい時期に入るとみる。

米ドルVS世界の通貨 日足
米ドルVS世界の通貨

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルvs世界の通貨 日足

■ドル/円は4月末にできたギャップを埋めたので反騰しやすい

 米ドル/円に関しては、英ポンド/円の下落で多少影響を受けていると思われるものの、総じて安値からの切り返しが続き、英選挙の行方によってリスクオフの傾向にあるとは思えない

前回のコラムでも指摘したように、5月18日(木)安値を割り込めば、4月末に形成された「ギャップ」を埋める値動きになるが、同「ギャップ」自体がトレンド(米ドル安)を修正させた重要なサインとして位置づけられ、今週(6月5日~)はすでに同下値の打診を達成しているから、これから反騰しやすいとみる。

【参考記事】
今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の雇用統計が悪くてもさほど売られないかも(2017年6月2日、陳満咲杜)

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

 この場合、先週末(5月米雇用統計発表日)の高値111.70円は重要な「転換点」として重視されるだろう。同高値のブレイクがあれば、米ドル/円のブル(上昇)基調復帰が確認できる。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

■3月高値115.50円のブレイクが中期スパンのターゲット

 引き続き、米ドル/円の上昇を有力視、3月高値115.50円のブレイクが中期スパンのターゲットとなる。

 ちなみに、3月利上げ直前の高値は115.50円だったので、時間がかかると思うが、仮に同高値のブレイクを確認できた場合、2017年年初来高値の再トライに道筋がつけられるだろう。

 米ドル/円相場は「トランプ・ラリー」を激しく推進してきただけに、同ラリーに対する修正、すなわち、4月安値までの下落も激しく、また「行きすぎ」だったから、これからの上昇は「再修正」に当たり、また激しくなる可能性がある。

 トランプ氏の弾劾シナリオで、すっかり米ドル安の継続を必然視する風潮が根強くなった今だからこそ、米ドルの高値更新を見込み、「余裕」を持ちたい

 また、前回のコラムで指摘したように、これはユーロ/円が早晩、130円の節目を打診することにもつながる。仮に同ターゲットを達成した場合、それは基本的にはユーロ高ではなく、米ドル高・円安を背景にした値動きになるから、しっかり対応しておきたい。

【参考記事】
今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の雇用統計が悪くてもさほど売られないかも(2017年6月2日、陳満咲杜)

 市況はいかに。

(13:00執筆)

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