■8日に英・米・欧の大イベントが集中
今週(6月5日~)は8日(木)しかない、という感じ。
イギリスでの総選挙、ECB(欧州中央銀行)理事会、コミー前FBI(米連邦捜査局)長官の証言と大きなイベントが集中します。
順番にいくと、コミーさんは何を話すのか、まったく予想がつかない。出たとこ勝負になりますね。
ECBではテーパリング(※)に注目が集まっています。
ドラギECB総裁は相変わらず慎重な姿勢ですが、今回の理事会でフォワードガイダンスを変更するのではとの観測もあります。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
変更すればユーロは急騰するのでしょうが、イギリスの総選挙を直後に控えて動けるかどうか。
何も動かなければ直後はユーロ安となるかもしれませんが、ドイツでユーロ安への不満が高まっているため、一時的な下落にとどまるのでは?と思います。
【参考記事】
●ユーロの調整は数日で終了し、反発! ユーロ/円は126円乗せで130円が視野に(6月1日、西原宏一)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
■英国民投票、米大統領選と似てきた英総選挙
イギリスの総選挙では保守党の圧勝が予想されていましたが、終盤になり労働党が支持率を伸ばしています。
保守党優位の予想は変わらないものの、ひょっとすると…の可能性も出てきましたね。
事前の予想では「EU(欧州連合)残留」、「ヒラリー」だったのが直前になって「EU離脱」、「トランプ」への支持が高まり波乱が起きた昨年(2016年)のイベントと同じ構図ですね。
【参考記事】
●EU離脱ショックで英ポンド暴落! 米7月利下げ観測も浮上! ドル/円、次は95円へ(2016年6月24日、西原宏一)
●トランポノミクスが「株高・円安」を促進!? ドル/円は押し目買い継続、次は109円へ!(2016年11月14日、西原宏一&大橋ひろこ)
8日(木)まで英ポンドの上値は重くなりそうですし、波乱がなかったときの反動は大きいかもしれません。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
気になるのは事前のコンセンサス。
「保守党勝利なら英ポンド買い・労働党勝利なら英ポンド売り」だと思っていたのですが、「ソフトBrexit(英国のEU離脱)支持の労働党が勝てば英ポンドは買われる」との見方も出ています。
昨年(2016年)の米大統領選でも「トランプなら円高」の声が日本では圧倒的でしたが裏切られ、トランプ当選後に円安が進みました。
労働党勝利ならいったんは英ポンド売りなのでしょうが、労働党がソフトBrexit支持ならば英ポンド買いにつながると考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
■本邦勢の「裏切り」は再現されるのか
先週、6月2日(金)の米雇用統計は悪化。米ドル/円は急落しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
米10年債利回りが2.16%まで下げましたが、このあたりは以前にもサポートになった水準。
米金利が下げ止まれば下値は堅いかなと思います。
(出所:Bloomberg)
日経平均は先週(5月29日~)やっと2万円に乗せて続伸しましたが、米ドル/円は下がっています。
最近は日経平均と米ドル/円の相関性が薄れていますよね。
相関性の低下は以前から言われていましたが、今回は露骨に出ていますね。
しかし、円高になっても2万円に乗せたということは、日本株は相当強いということ。
(出所:Bloomberg)
日本株の上昇は少なくとも円高材料ではありませんし、米ドル/円を下支えする役割は果たしてくれるでしょう。
米ドル/円では110円台に本邦勢の買いが並んでいると言われますが、今週(6月5日~)これだけリスクイベントが集中すると、様子見に回ることはないでしょうか……?
地政学リスクの高まりやフランス大統領選があった4月、本邦勢は110円台の米ドル/円の注文をキャンセルして様子見に回ったことで108円までスルッと落ちてしまった。
緊張感が高まった時期にトランプ大統領が「米ドルは強すぎる」なんて発言をしたことも災いしたのですが、今週(6月5日~)、8日(木)のリスクイベントに向けて、4月と同じようなことが起こらないでしょうか。
ありえるでしょうね。ただ、今は6月。第1四半期の最終月です。
機関投資家は「第1四半期にこれだけ外貨を買おう」とおおよその金額を決めています。
4月ならば「まだ2カ月残っているから、慌てる必要はない」と考えますが、6月となると四半期末が近いですから買うべき外貨は買わないといけない。
買い遅れていた本邦勢は、カレンダー的な要素もあって110円台のオーダーを引っ込める可能性は少ない、ということですね。
■真逆のオセアニア通貨。注目はNZドル
今週(6月5日~)は6日(火)にRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])理事会もありますね。
政策金利は据え置きでしょう。
NZドルはどうですか。IMM(国際通貨先物市場)の通貨先物ポジションを見ると、豪ドル/米ドルの投機筋ポジションは買い越しから売り越しに転じるかどうかというところで豪ドル売りがトレンドに。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
ところがNZドル/米ドルはその逆で、売り越しから買い越しに転じるかどうか、というところにあります。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
金融政策の織り込み度を見るとNZドルは利上げ方向を織り込み始めており、政策の方向性が豪ドルとNZドルでは対照的です。
そのためNYダウやDAX、日経平均が上がるリスクオン相場で本来買われる豪ドル/円が買われない。今、豪ドル/円を代替しているのが、NZドル/円です。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/円 日足)
NZドル/米ドルは日足・一目均衡表の雲を上抜けてきましたし、NZドル/円も今の水準を維持できれば、あさってには雲を上抜け。
(出所:Bloomberg)
米ドル/円が底堅いなら、NZドル/円のロングに妙味がありそうですね。
リスクオンで株式市場の強気が続くならNZドル/円はおもしろいですね。
しかし8日(木)は何が起こるかわかりません。NZドルや円には関係のないイベントですが、ストップロスは必須だし、状況によっては8日(木)までにポジションを整理したりスクウェアにする、といったことも検討する必要があるでしょう。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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