(2020年9月1日更新)
■有名専業トレーダーも注目する「窓埋めトレード」
みなさんは、「窓埋めトレード」をご存知だろうか。
「窓」とは、2本のローソク足において、前日終値と当日始値との間にできる空間のこと。
2020年3月16日(月)の日本時間早朝にもFRB(米連邦準備理事会)が臨時のFOMC(連邦公開市場委員会)を開き、緊急利下げを発表。政策金利を1%引き下げ、0.00~0.25%にすると発表したが、これを受け、為替市場は米ドル全面安で反応。米ドル/円は前週末に108.00円近辺で取引を終了していたが、3月16日(月)の朝は1円ほどの「窓」を開け、107.00円近辺で取引が開始される(※)という出来事が起こった。
(※月曜日朝の取引開始時刻は各FX会社で異なるため、窓の大きさはそれぞれ異なる。上記はセントラル短資FXからチャート提供を受けているザイFX!のチャートの場合)
為替市場は24時間開いているので、前日終値と当日始値にほとんど差はなく、窓が開くこともほとんどない。しかし、週末~週初は話が別。週末に何か大きなニュースが出るなどして、月曜日の始値と前週末の終値が乖離し、為替チャートでも窓が現れることがある。
窓を開けるということは、その窓を開けた方向への相場の勢いが非常に強いということだ。ただし、窓を開けた場合、いったんは窓を埋める方向に相場が動くことが多いともいわれている。それを狙ったトレードは「窓埋めトレード」などと呼ばれている。

(出所:ヒロセ通商)
「窓埋めトレード」については、ひろぴーさんやバカラ村さん、さらに田畑昇人さんといったザイFX!でもおなじみの専業トレーダーも注目している。
【参考記事】
●今週も相場は大荒れ!! 窓埋めトレードで儲けるも首位と大差
●「早起きは3万の得!」。月曜朝方の窓埋め狙いで資産36万円台に!
そんな「窓埋めトレード」だが、「イマイチよくわからない……。本当にうまくトレードできるの?」なんて思っている人もいるはず。
そこで、昨年(2016年)の為替相場で、月曜日に窓を開けたケースをいくつか振り返り、この程度のニュースならこんな動きになるというケーススタディをしていきたい。
■FBI長官の発言で週明けの米ドル/円が窓開け
記憶に新しいところでは、2016年11月、米大統領選挙真っ只中、民主党の米大統領候補だったヒラリー・クリントン氏(以下、ヒラリー氏)の国務長官時代の私用メール問題が蒸し返されたタイミングで窓を開ける場面があった。
【参考記事】
●メール問題再発で混沌の米大統領選挙! ヒラリー側近の美人スタッフがどう関係?(11月4日、広瀬隆雄)
2016年10月末、FBIはヒラリー氏の私用メール問題について再捜査すると発表していたのだが、それが一転、それまでの捜査によって結論が出ていた「訴追しない」という決定のまま、「結論は変わらない」とFBI長官が発言したのだ。
FBI長官の発言があったのは11月6日(日)。私用メール問題の再捜査発表を受けてリスクオフになっていた金融市場は、このFBI長官の発言を受けてリスクオンに反転。
以下は、午前7時に取引開始となったヒロセ通商の米ドル/円・日足チャートだが、週明け、11月7日(月)に米ドル/円はおよそ1円の上窓を開けている。
上窓を開けたということは、上方向への動きが強いということ。さらに、窓を埋めずに上昇していることから、相場の勢いが非常に強いことを示している。
【参考記事】
●米大統領選挙は予想外のトランプ氏勝利! リスクオフで米ドル/円急落も意外な動き…

(出所:ヒロセ通商)
その後の動きを見ると、3日後の11月9日(水)の米大統領選挙の際、トランプ氏の優勢が伝わったタイミングで米ドル/円が急反落し、窓を埋めることとなったが、こちらは一時的な動きに限られ、その後は力強く上昇している。
■なぜ、このチャートでは窓が開いていないのか?
では、次に以下のチャートをご覧ください。

(出所:サクソバンク証券)
これは、サクソバンク証券の米ドル/円・日足チャート。
先ほど紹介したヒロセ通商の米ドル/円チャートと比較すると、同じ通貨ペア(米ドル/円)、同じ日付、同じ時間軸(日足)のチャートなのに窓は開いていない。
夏時間については午前6時から取引開始となるヒロセ通商だが、それ以外は午前7時。そして、ほとんどのFX会社が月曜日の取引開始時間を午前7時にしている。
それに対し、サクソバンク証券の取引開始時間は、一部の通貨ペアを除き、午前3時~4時となっていて、この違いが窓開けに影響しているのだ。
■普通は手出しできない窓の部分にも収益を上げるチャンス
以下は、2016年11月7日(月)前後のサクソバンク証券における米ドル/円・5分足チャート。このときの月曜午前3時からの動きがどのようなものだったのか、詳しく見てみたものだ。

(出所:サクソバンク証券)
こちらを見ると、取引開始となる午前3時の始値は103.059円で前週末終値103.060円からほぼ変わらず。そこからじりじりと上昇したものの、FBI長官の発言を受けて急上昇するような動きにはなっていない。
しかし、その後、オセアニア市場が本格的に取引を開始する午前5時台から6時台にかけて急上昇し一時、104.468円の高値をつけた。その後は伸び悩み、反落している。
つまり、週末のFBI長官の発言があったことで米ドル/円が上昇すると読んでいたなら、午前3時のサクソバンク証券で窓が開いていなかったのはチャンス。
取引開始直後に買いポジションを建てていれば、通常のFX口座であれば手出しをできない約1円の窓が開けた部分で、収益を得ることができたというわけだ。
■Brexitも週末だった…。週明けは窓開けで取引開始
そして、昨年の一番のサプライズといってもいい、6月24日(金)の英国国民投票におけるBrexit(英国のEU離脱)が決定したタイミングでも、窓を開ける場面が見られたので紹介しよう。
【参考記事】
●ついに英国のEU離脱が確定的な状況に!! 英ポンド暴落、米ドル/円も100円割れ!
●英国はEU離脱により、国家崩壊の道へ!? ポンド下落はまだ不十分でさらなる暴落も
はじめにヒロセ通商の米ドル/円・日足チャートをご覧ください。

(出所:ヒロセ通商)
このケースでは、約80銭ほど下窓を開けて取引を開始すると、当日中に窓埋めしている。
では、サクソバンク証券の米ドル/円・日足チャートはどうだったのだろうか。

(出所:サクソバンク証券)
上のチャートをご覧いただくとわかるように、月曜日の取引は前週末の終値とほぼ同水準で開始されており、窓は開いていなかった。
Brexitの決定は金融市場を揺るがす大騒動だったが、米ドル/円相場は前週末の金曜日にものすごい動きをやりすぎてしまい、週明け月曜日は比較的落ち着いた値動きだったようだ。
■サクソバンク証券のチャートで窓開けしたケースとは?
先に紹介した2つのケースでは窓開けしなかったが、サクソバンク証券のチャートでも昨年(2016年)の為替相場で窓開けした場面があったのか調べてみた。
すると、8月20日(土)に産経新聞が黒田日銀総裁の単独インタビューを報じ、その中でのハト派的な発言が材料となって、8月22日(月)の米ドル/円相場で窓開けしていたことがわかった。
以下はこのときの米ドル/円・日足チャートだ。ヒロセ通商で60銭、サクソバンク証券で30銭ほど上窓を開け、上昇幅を拡大。しかし、これが一時的な動きに留まると、その後の相場は窓埋めの方向に転じた。

(出所:ヒロセ通商)

(出所:サクソバンク証券)
もう少し時間軸を狭めて見てみよう。以下はサクソバンク証券の米ドル/円・5分足チャートだ。

(出所:サクソバンク証券)
このケースの場合、取引開始時刻は午前4時。始値は100.343円で前週末終値100.097円から少し上窓を開けてスタートした。
その後、数分の間に窓埋めにかかるも埋めきれず上昇。その後、100.90円近辺まで上昇したものの勢いは続かず、再び窓埋めを目指す展開となったが、100.20円台で下げ渋り、またしても窓埋めとはならなかった。
もっとも、「窓埋めトレード」は完全に窓が埋まらなくてもOK。
たとえば、始値の100.30円近辺で買いポジションを建てて、100.90円近辺の伸び悩んだ水準で決済して利益確定。
そして、今度は「窓埋め」を狙って売りポジションを建てて、下げ渋ったと思われる水準で決済すれば、こちらも利益確定となる。

(出所:サクソバンク証券)
なお、この動きは午前4時から7時までの間に起こったもの。つまり、ほとんどのFX会社がまだ取引を開始していない時間帯に、サクソバンク証券ならこれだけのトレードができたということなのだ。
バカラ村さんによると、窓埋めトレードの条件として、「トレンドが大きく出ていないときや、土日に重要な材料が出ていないことが条件になる」ことが重要とのこと。
このケースでは、週末に黒田日銀総裁のインタビュー記事という材料はあったものの、その内容はサプライズとまでは言えず、相場を一方向に大きく動かすには迫力不足だった。
そして、米ドル/円は上昇したものの、その後、窓埋め方向に動いていることから相場に勢いがあったわけでもなく、ある程度「窓埋めトレード」の条件に当てはまっていたといえそうだ。
■週明けの為替市場がオープンするのは午前2時~3時
週明けの為替市場はオセアニア市場からオープンするが、本格的に取引が始まるのはニュージーランドのウェリントン市場が日本時間で午前5時、オーストラリアのシドニー市場が日本時間で午前7時ごろから。ただ、その前の日本時間・午前2時~3時ぐらいから為替市場は開いていると言われている。
そして、先ほども少し紹介したように、主要FX会社の取引開始時刻をざっと調べてみると、月曜日は午前7時からというFX会社が圧倒的に多い。
ところが、ここまで紹介してきたとおり、サクソバンク証券の場合、一部の通貨ペアを除き、月曜日の取引開始時刻は午前3時~4時となっている。
以下はFX会社各社の取引時間をまとめたものだが、月曜日の開始時刻はサクソバンク証券が飛び抜けて早いことがよくわかる(ほかでは、サクソバンク証券と同じ外資系のIG証券も日系のFX会社よりは少し早い開始時刻となっている)。

※サクソバンク証券[スタンダードコース]の取引時間は、一部例外となる通貨ペアがあります
※平日のメンテナンス時間は割愛しています
なお、サクソバンク証券の場合、米国だけでなく、オーストラリアのサマータイム制も関係してくるため、季節や組み合わせによって3種類の取引時間がある。詳しくは以下のとおりだ。

※一部例外となる通貨ペアがあります
気になる月曜日の開始時刻はオーストラリアの夏時間なら午前3時、オーストラリアの標準時間なら午前4時となっている。
■高額金融端末がなくても月曜午前3時のチャートが見られる
このように、サクソバンク証券なら、月曜日の午前3時~4時から取引できるわけだが、この時間に起きてトレードするのはさすがにキツイという人もいるだろう。
そんな人でも、サクソバンク証券に口座を持っているとメリットがある。
ほとんどのFX会社が月曜日は午前7時から取引開始なので、それまでは各FX会社の取引システムはストップしている。
そして、各FX会社で取引開始となったとき、週末にニュースがあって、すでに相場が動いていた場合、チャート上に窓を開けることになる。
でも、各FX会社の取引システムはストップしていたわけだから、その窓が開いた時間帯にどのような動きをしていたのか見ることはできない。そんなとき、サクソバンク証券のチャートならサクッと振り返ることができるのだ。
「SaxoTraderGO」はウェブブラウザ版の取引ツール。パソコン、スマホ、タブレットなど、さまざまなデバイスで利用できる。クールでシンプルな画面構成だ。
そんなこと……なんて思う人がいるかもしれないが、ブルームバーグやロイターといった大手通信社が提供している高額の金融端末でもあれば別だが、月曜日の午前3時~4時台のレートやチャートがチェックできるツールはかなり希少だ。
これがサクソバンク証券に口座開設するだけで見られるわけだから、口座開設しておいて損はないのではないだろうか。
今回は月曜日の「窓埋めトレード」を中心に紹介してきた。サクソバンク証券とヒロセ通商のように月曜日の取引開始時刻が違うFX会社の口座をうまく使って、効率よくトレードしてみるのもいいのでは。
>>>サクソバンク証券[スタンダードコース]の最新スペック詳細はザイFX!の比較コンテンツをご覧ください
>>>ヒロセ通商[LION FX]の最新スペック詳細はザイFX!の比較コンテンツをご覧ください
(ザイFX!編集部・庄司正高)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)