■米ドル/円は従来のレジスタンスが一転サポートに
とはいえ、112円台前半~113円節目前後のサポートゾーンを維持する限り、米ドル/円はなお、ブル基調を保てると見なし、また、いろいろな材料があっても途中の「押し」は浅くて済む、という可能性のほうが大きいのではないかとみる。
昨日(11月8日)の安値は113.40円だったが、10月6日(金)高値113.44円と整合性が取れる。簡単に言うと、かつてのレジスタンスが一転してサポートになった可能性が大きく、ゆえに、ブルトレンドも維持される公算が高い。
(出所:FXブロードネット)
10月6日(金)の高値がなぜ重要かというと、同日のチャートの足型の意味合いが重要だったからだ。
10月20日(金)の本コラムにて開示したレポートのとおり、10月6日(金)の足型は、「フォールス・ブレイクアウト」、あるいは「フェイクセットアップ」、すなわち高値更新自体が「ダマシ」であったという疑いが持たれていたが、その後、高値を更新したことによって、それが一転トレンド継続、また加速のサインと化したわけだ。
【参考記事】
●現在のドル/円日足チャートはユーロ/ドルが6月に上昇し始めたときと同じサインが点灯!(2017年10月20日、陳満咲杜)
だから、10月6日(金)の高値前後で、昨日(11月8日)の「たくり線(※)」風の足型をもってサポートと確認できれば、途中の調整が浅く済み、また週初(11月6日)の高値を再打診して、さらにブレイクしていく確率が高いと推測される。
(※編集部注:「たくり線」とは、底打ちを示唆するとされる足型)
同じ視点でいくと、11月6日(月)の高値トライでいったん5月、7月高値のブレイクを果たしてから反落してきたので、高値更新自体が「ダマシ」であった疑いもある。
(出所:FXブロードネット)
が、米ドル高がホンモノなら、ここから再度高値更新を果たし、11月6日(月)の「上ヒゲ」陰線がもたらした疑いを消す値動きが見られるだろう。
この場合、一転してトレンド加速のサインと化すから、3月高値の115.50円のブレイクは必至とみる。
■再度高値更新があれば、今度こそ上昇モメンタム強まる!
もっとも、より長いスパンでみれば、9月安値がいったん2017年年初来安値を更新していたことが見逃せない。
そこから5月、7月高値のブレイクを果たしたから、同安値が典型的な「フェイクセットアップ」のサイン(つまり安値更新がダマシで、逆に上昇波がセットアップされた)を点灯し、大型レンジの打破を示唆している。
(出所:FXブロードネット)
変動レンジの値幅分を上乗せする、いわゆる「倍返し」の計算なら、120円の大台を越えていくことが推測される。
もちろん、現時点でそこまでの上値ターゲットを定めるのは性急な話だ。ただし、前述の9月安値が示した大きなサインが正しければ、ここから3月高値のブレイクを果たし、年初来高値の118円台へ戻る、といった可能性は十分あるだろう。
米ドル/円の上昇モメンタムはだいぶ押さえられてきたが、再度高値更新があれば、今回こそ強まっていくと思う。
■ドルインデックスも、再度高値更新があれば上昇勢い強まる
上昇モメンタムが当面押さえられているものの、総じて高値圏での保ち合いを維持、再度高値更新があれば、切り返しのモメンタムを強めていく可能性は、ドルインデックスにおいても同じと言える。
「逆三尊(※)」というフォーメーションが確立され、また、逆三尊が示すターゲットに到達していないうちは、弱気不要だ。
(※編集部注:「逆三尊型」はチャートのパターンの1つで、「三尊型」と反対に、底を示す典型的な形とされている)
(出所:Bloomberg)
ドルインデックスとの関連性という意味では、前回のコラムでも指摘していたとおり、ユーロ/米ドルの下落トレンドの方が、よりフォローしやすいかもしれない。
【参考記事】
●日経平均2倍以上なのに円安は少しだけ。2002~2007年の市況からヒントが得られる?(2017年11月6日、陳満咲杜)
このあたりの詳細は、筆者が昨日(11月8日)配信したレポートをもって説明したい。本文は以下のとおり。
(出所:FXブロードネット)
2日レポートでは、10月26日のサインに続き、トレンド継続のサインを予想していたが、一日遅れた形で翌日3日の罫線をもって点灯された。同サイン、トリガーの後に続いただけに、ユーロのベアトレンドの維持や加速を示唆するものだったと見る。
既述のように、ベアトレンドを開始させたトリガーは10月26日の大陰線、弱気「リバーサル」や「アウトサイド」のサインをもって「ネックライン」を割り込み、日足における大型「ヘッド&ショルダーズ」の下放れを確認したわけなので、下落波が続くはずだった。
一方、ネックライン割れとは言え、忽ち急落とは限らず、往々にしてもう一回ネックラインの役割(即ち元サポートがレジスタンスになったかどうか)を確認してからトレンドを加速していくケースが多い。
その確認、3日まで続いたが、確認済のサインを点灯していたことも明らか。10月26日の大陰線と同様、弱気「リバーサル」や「アウトサイド」をもってトレンドへの復帰や加速を示唆していたから、ここから下落トレンドが維持される公算は高く、また下落モメンタムの強まりもこれからであろう。
詰まる所、10月26日の罫線はネックライン割れを確認、11月3日の罫線はネックラインの役割転換を確認した。同じサインだが、前者はトリガー、後者は続くシグナルなので、大型「ヘッド&ショルダーズ」の蓋然性が一段と証左されたでしょう。ユーロ売りのスタンスを維持、資金余裕のある方は追撃を。
■今後はドルストレートの方がフォローしやすいかも
最後に、筆者の見方が正しければ、ここからはドルストレート通貨ペアの方がフォローしやすくなり、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の方がややこしくなる可能性がある。
なぜなら、米ドル高が円安、ユーロ安をもって実現されるなら、ユーロ/円の方は結局、ユーロ安と円安のスピード比べになるからだ。事前に読みにくいぶん、ドルストレートのフォローに徹底したほうが得策か。
市況はいかに。
(12:30執筆)
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