■米サイドの発言に市場は翻弄される
マーケットは米サイドの発言に翻弄されている。米財務長官が米ドル安を容認する発言をしてマーケットを震撼させたと思いきや、今度は米大統領が「米ドルはさらに強くなる、最終的には強い米ドルを望む」と言い、これの打消しに躍起になる格好となった。
当然のように、為替市場は大きく反応していた。ドルインデックスは一時88.45まで下落したものの、いったん陽線で大引けし、ユーロ/米ドルも1.2538ドルの高値を付けてから陰線で引けた。
(出所:Bloomberg)
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同じく当然のように、「トランプ氏の発言がなかったら米ドル安がどこまで進んだかわからない」と思われがちだが、筆者はそうは思わなかった。なにしろ、米財務長官の話自体、深読みしないほうが無難と思っていかたからだ。
昨日(1月25日)のブログでその見解を公開したのだが、これはトランプ氏が米ドル擁護発言をする前の考えであったことを強調しておきたい。本文は以下のとおりである。
ムニューシン米財務長官は世界経済フォーラムで「弱いドルは米貿易収支にとって短期的に有利だが、長期的には堅調な通貨であると確信している」と言い、「ドルについて私は首尾一貫していると考える。これまでの財務長官もドルについて発言した。私がこれまで言ってきたのは、まず第一に通貨の自由な取引を支持しているということだ」と述べた。更に、「現在のドル水準は私の懸念要因ではない」と追加した。
「念仏」のように歴代財務長官が繰り返してきた「強いドル政策」はそもそも有名無実な政策だったが、ムニューシン氏の口から「政策転換」と言われると市場は驚き、またドル売りに拍車を掛けたのも当然の結果と言える。但し、その後、米財務長官自身が発言を訂正したように、為替市場の現状についた感触に過ぎず、米政府が公式に米ドル安志向に転換したという判断は性急かつ乱暴だ。要するに、ドル安を容認することを言っているが、それ以上大袈裟な解釈は要らない。
ドル安の容認、今更サプライズになる必要もないでしょう。ドル売り介入した際でも「強いドル」云々を言っていた米為替政策は昔から「二枚舌」の体質なので、むしろ公言したムニューシン米財務長官のほうが「正直者」だといった印象さえある。更に、そもそも米国には為替政策自体が存在しなかったという見方も多く、「米為替政策の歴史的な転換」といった大袈裟のタイトルを付いた記事を深読みしないほうが正解かもしれない。
もっとも、トレンドが大分進んでいた上、トレンドに沿った大きな材料の登場は往々にして「クライマックス」の局面を作る、という前例が多かっただけに、米財務長官の発言の蓋然性もテクニカル上の観点と整合的に考えないといけない。ドルインデックスの月足におけるオーバーシュート、ますます鮮明になってきたので、警戒しておきたい。詳細や正誤についてまた検証していくつもりだが、今晩ECB総裁の発言も材料になり得ることに注意。
要するに、ムニューシン米財務長官の話は…
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