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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ムニューシン騒動でドル安は一服!?
米国がドル安を国策にできない理由とは?

2018年01月26日(金)16:41公開 (2018年01月26日(金)16:41更新)
陳満咲杜

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■米サイドの発言に市場は翻弄される

 マーケットは米サイドの発言に翻弄されている。米財務長官が米ドル安を容認する発言をしてマーケットを震撼させたと思いきや、今度は米大統領が「米ドルはさらに強くなる、最終的には強い米ドルを望む」と言い、これの打消しに躍起になる格好となった。

 当然のように、為替市場は大きく反応していた。ドルインデックスは一時88.45まで下落したものの、いったん陽線で大引けし、ユーロ/米ドルも1.2538ドルの高値を付けてから陰線で引けた

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足

(出所:Bloomberg)

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足

 同じく当然のように、「トランプ氏の発言がなかったら米ドル安がどこまで進んだかわからない」と思われがちだが、筆者はそうは思わなかった。なにしろ、米財務長官の話自体、深読みしないほうが無難と思っていかたからだ。

 昨日(1月25日)のブログでその見解を公開したのだが、これはトランプ氏が米ドル擁護発言をする前の考えであったことを強調しておきたい。本文は以下のとおりである。

ムニューシン米財務長官は世界経済フォーラムで「弱いドルは米貿易収支にとって短期的に有利だが、長期的には堅調な通貨であると確信している」と言い、「ドルについて私は首尾一貫していると考える。これまでの財務長官もドルについて発言した。私がこれまで言ってきたのは、まず第一に通貨の自由な取引を支持しているということだ」と述べた。更に、「現在のドル水準は私の懸念要因ではない」と追加した。

「念仏」のように歴代財務長官が繰り返してきた「強いドル政策」はそもそも有名無実な政策だったが、ムニューシン氏の口から「政策転換」と言われると市場は驚き、またドル売りに拍車を掛けたのも当然の結果と言える。但し、その後、米財務長官自身が発言を訂正したように、為替市場の現状についた感触に過ぎず、米政府が公式に米ドル安志向に転換したという判断は性急かつ乱暴だ。要するに、ドル安を容認することを言っているが、それ以上大袈裟な解釈は要らない。

ドル安の容認、今更サプライズになる必要もないでしょう。ドル売り介入した際でも「強いドル」云々を言っていた米為替政策は昔から「二枚舌」の体質なので、むしろ公言したムニューシン米財務長官のほうが「正直者」だといった印象さえある。更に、そもそも米国には為替政策自体が存在しなかったという見方も多く、「米為替政策の歴史的な転換」といった大袈裟のタイトルを付いた記事を深読みしないほうが正解かもしれない。

もっとも、トレンドが大分進んでいた上、トレンドに沿った大きな材料の登場は往々にして「クライマックス」の局面を作る、という前例が多かっただけに、米財務長官の発言の蓋然性もテクニカル上の観点と整合的に考えないといけない。ドルインデックスの月足におけるオーバーシュート、ますます鮮明になってきたので、警戒しておきたい。詳細や正誤についてまた検証していくつもりだが、今晩ECB総裁の発言も材料になり得ることに注意。

■そもそも米国は米ドル安を選択する「余裕」がない!

 要するに、ムニューシン米財務長官の話はトランプ政権の保護主義とセットにした米ドル安政策と連想されやすいだけに、過剰解釈されがちであり、またマーケットも過剰に反応していた

ムニューシン米財務長官

マーケットはムニューシン米財務長官の話に過剰反応していた (C)Bloomberg/Getty Images

 トランプ米大統領の「火消し」発言もそもそも当然の成り行きであり、米財務長官の話を「失言」と受け取れば、トランプ氏の話はむしろ米政府の意向として受け止めるべきだろう。何しろ、米当局が通貨政策として米ドル安を選択する「余裕」はないからだ。

 周知のとおり、米国は経常赤字と対外純負債を抱えており、経常黒字と対外純資産を抱える日本とは対照的な構造をもつ大国だ。

 日本政府が、経常黒字と対外純資産を抱えている以上、為替・通貨政策として円高志向を打ち出せないのと同じように、米国は米ドル安政策を取れない

 本音としては米ドル安を望むトランプ氏でさえ、自ら「火消し」役を買って出るほど、「国策としての米ドル安」だと思われることは、米国にとって大変困るわけだ。

 これさえ理解できれば、「米為替政策の歴史的大転換」などといった論調がいかに大袈裟かを理解できるだろう。

 本当のところは、米財務長官がトランプ氏と同様、自国第一主義で米国の利益ばかりに目を向けている余り、つい口が滑っただけではないかと思う。これをもってトランプ政権が米ドル安を誘導、また米ドル安政策を開始しようとする見方は性急で、また乱暴だと言わざるをえない。

 おもしろいのは、仮に日本の麻生財務大臣が「円高容認」と発言しても、これが日本政策の為替政策の大転換と思う市場関係者はそう多くないが、米国の場合はそうはいかない。

 やはり、米国は基軸通貨を発行する国なので、その影響が極めて大きく、たとえ米高官の「失言」であってもインパクトが大きすぎるため、マーケットの神経を尖らせることになる。

■米ドル全体は、すぐに弱気変動を修正することはできない

 さらに、市場がそもそも疑心暗鬼の状況にあったことも大きい。

 今回の米財務長官の発言が、仮に単なる「現状追認」にすぎないとしても、昨年(2017年)年初から米ドルはすでに急激な大幅下げを達成し、また米ドル安が進行している最中にと飛び出した話であっただけに、米政府の意図と誤解されても仕方がないといえる。

 この意味では、ムニューシン氏の「うっかり」がもたらした懸念は大きく、昨日(1月25日)、さっそくECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁や、IMF(国際通貨基金)のラガルド総裁に牽制されたように、これからもマーケットに影を落とすだろう。だから、トランプ氏の訂正発言があっても、米ドル全体は、すぐに弱気変動を修正することはできないだろう。

■今回の波乱は米ドル安が一服するきっかけになる!?

 一方、足元浮上してきた市場のコンセンサス、すなわち、「米財務長官の発言の影響で米ドル安がこれからも大きく下値余地を拡大する」といった見方には同意できない。

 結論から申し上げると、むしろ逆ではないかと思う。すなわち、ムニューシン氏の「うっかり」がトランプ氏に「火消し」され、マーケットの波乱があったからこそ、米ドル安が一服する可能性が大きいとみる。

 詳細については、また次回にて検証したいが、前述のように、米ドル安が一服しても米ドルの弱気変動がすぐに改善されるとは限らないから、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の方が引き続き上値打診しやすいことを記しておきたい。

 米ドル/円に関しても、ムニューシン氏の「うっかり」で一時109円の節目割れとなったが、それはあくまで相場の行きすぎと見なし、米ドル/円の下値余地は引き続き限定的であるという見方を維持したい。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

 市況はいかに。

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