■IMMポジションからみても、ユーロ高の継続は困難か
仮に、クロス円の動向がより相場全体の構造を示しているなら、これからクロス円における下落のモメンタムは、従来の円高ではなく外貨安に依存する割合が大きいだろうと推測される。
実際、ユーロ/米ドルも英ポンド/米ドルもこの前の高値に接近していたものの、切り返しのモメンタムが再度失速しているように見える。
こういった可能性は、シカゴIMM通貨先物ポジションの変化からも垣間見られるかと思う。
最新の統計データ(3月20日まで)でみると、ユーロのネット買い越しは1月より減少していたものの、なお13万3000枚に近いほどのネットロングポジションがあり、記録的な買い越しの状況に大した変化はないかと思われる。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
対照的に、円の売り越しは大きく減少、ネットショートポジションは2万2000枚を切っており、この間、大きく進行した円高で、円売り筋の大規模な手仕舞い、また、投げが出たことが容易に推測される。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
投機筋の動向から言えば、「猫も杓子」もユーロ高に賭けている状況に大した変化はないが、「猫も杓子」も円売りで損を被っていたから、こちらのポジションは閉じられた。
ゆえに、ユーロ高の基調は維持されても、これが延長されるにはハードルが高く、モメンタムの低下は当然の成り行きだと思う。
なにしろ、「猫も杓子」もユーロを買っているから、少し高くなると利益確定に動く者が現れ、反対売買でユーロの頭を抑え込む。対照的に、円売り筋がだいぶ退場させられた分、米ドル/円の反発は相対的に発生しやすくなっていると言える。
■ミセス・ワタナベは円売りポジションが膨らんでいる模様
とはいえ、IMMの統計と違い、ミセス・ワタナベ(日本個人投資家)の総計であると言えるくりっく365やFX会社の統計では、なお逆張りが徹底されており、円売りポジションが膨らんでいる模様だ。
米ドル/円はもちろん、ユーロ/円などクロス円においても同様なのでは…と推測されるから、クロス円における下落トレンドをこれから明白にさせていく一因を作っているかと思う。
ごくシンプルに結論を申し上げると、IMMの統計でみる国際投機筋は、これからユーロの買い越しポジションを整理しなければならないから、ユーロ高はすでに最終段階にあり、これから反転しやすく、つまり、下落へ転換しやすいとみる。
そして、国際投機筋と違って、ミセス・ワタナベは逆張りの円売りポジションが膨らんでいるから、円高の傾向は簡単に止められない可能性も大きい。ゆえに、米ドル/円の下げ一服があっても安値圏での保ち合いに留まる公算が高い。
そして、ユーロをはじめ、これからの主要クロス円の下落は外貨安が牽引していく公算が大きいから、クロス円をメインとした円高はまだ終わっていないと推測される。クロス円の戻り売りはメインストラテジーとして維持され、また、これからより大きな利益を確保できるだろう。
詳細の検討はまた次回、市況はいかに。
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