英国民がEU(欧州連合)からの離脱を選択した2016年6月の国民投票から、早いもので2年以上が経過しました。その後の2017年3月に、英国が正式にEUからの離脱を通告し、2年間の離脱交渉が始まりましたが、その交渉の最終期限が2019年3月にやってきます。
この間、英ポンド相場で大きな値幅を獲得する見事なトレードを何度も披露してきたのが、ザイFX!の連載コラム「FX専業トレーダーの相場観」や、有料メルマガ「バカラ村のFXトレード日報!」でもおなじみ、専業トレーダーのバカラ村さん。
【参考コンテンツ】
●「FX専業トレーダーの相場観」
●「バカラ村のFXトレード日報!」
米国で開催された世界的に有名なトレード大会で優勝し、さらに「日本版ロビンスカップ」でも見事チャンピオンの座を勝ち取って、日米で2冠を果たしたスゴ腕トレーダーです。
先日、ザイFX!が東京以外で初めて開催した「バカラ村のFXトレード日報! セミナー in 大阪」には申込みが殺到し、あわてて広い会場に変更したものの、そこも空席が一切ない満員御礼になるなど、実力だけでなく人気の高さも折り紙付き。会場が熱気に包まれる中、トレード手法や為替相場の見通しなどを、アツく解説してくれました(セミナーの様子は後日、改めて紹介する予定です)。
そんなバカラ村さんは、EU離脱交渉に揺れる英ポンド相場の行方をどう見通しているのでしょうか? トレードで重視したいポイントなども踏まえて、ど~んと聞いちゃいました!
離脱交渉は、ほぼスケジュールどおりに進んでいる
「先日、離脱交渉でEU側の代表を務めるバルニエ首席交渉官や、ハモンド英財務相が、6~8週間ぐらいで協議が合意に至る可能性があると発言しました。発言したときから6~8週間というと、10月末から11月初旬に合意がなされるということになります。
当初の、『10月末までに合意が必要』というスケジュールにも、おおむね合致しているので、そこに向けて協議が継続していくと思います」
離脱交渉の最終期限は2019年3月ですが、EU加盟各国が合意内容を批准する手続きなどを考えると、2018年10月末ごろまでに、一定の合意に至っている必要があると言われていました。バカラ村さんは、それに沿って協議が進められていると考えているようです。
「今のところ、11月13日(火)に臨時のEU首脳会議(サミット)が開催される予定となっています。バルニエ氏も『11月初めまでには合意する必要がある』と発言していたことから、それまでに合意を目指すのではないかと思います」
英国のラーブ離脱担当相(左)とEUのバルニエ主席交渉官(右)。生産的な協議が続けられ、実行可能な合意に近づいていると伝わっているが、果たして期限までに合意へ漕ぎ着けることはできるのだろうか? (C)Thierry Monasse/Getty Images News
協議はギリギリまで継続。合意なき離脱の可能性は?
英内閣が一枚岩でなかったり、英国とEUがお互いに主張を譲らない部分があったりと、不安になるニュースもたくさんあるけれど、EU首脳会議に向けて、協議はスケジュールどおりに進行しているみたい。だったらもう、安心ってこと?
「現在は、合意に向けた楽観的な内容が多く出ています。しかし、EU側としても英国を簡単に離脱させるわけにはいかないので、時間がある限り、協議はギリギリまで継続すると思います。
その間には、合意なき離脱(※)になりそうな、そんな悲観的な内容も出てくるのではないかと考えています。
結局、すったもんだがありつつ、最終的には合意すると思うのですが、詳細部分まで合意することは難しいと思うので、大筋部分の合意で着地するのではないでしょうか」
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
【参考記事】
●日本のBrexit報道は正確ではない!? ソフト・ハード・合意なき離脱の違いとは?(9月12日、松崎美子)
●合意なき離脱ならポンドは10~20%下落も。2度目の国民投票は?“クーデター”の噂も!? (9月17日、松崎美子)
下落途中に英ポンドの反発を予想していた!
細かいところまですべてが合意に至るわけでもなさそうというのがバカラ村さんの見解ですが、そうなると気になるのは英ポンド相場の行方。合意なき離脱になりそうなネガティブな材料が出てくる可能性もあるなら、英ポンドは上昇しにくいのでは…と感じてしまいます。
実際に、2018年の春先から英ポンドは対米ドルで売られ続けていたし、今後もあまり良くないニュースが入ってくると、英ポンドがさらに下落することもありそうな気が…。
(出所:Bloomberg)
でも、バカラ村さんはザイFX!の連載コラム「FX専業トレーダーの相場観」の中で、8月下旬あたりから、そのときはまだ下落トレンドが継続しているとも判断できる英ポンドを、そろそろ反発しそうだと予測していたのです。
【参考記事】
●ベアトラップになったユーロ/米ドルは押し目買いへ! 悪材料織り込んだ英ポンドも買い(8月28日、バカラ村)
以下は、そのときのコラムの一部をキャプチャしたものですが、その中には、
『すでに悪材料もかなり織り込まれていると思われ、英ポンドも反発しやすい状況ではないかと考えています』といった一文があります。
離脱交渉はまだ続くし、その過程にはネガティブな材料も出てくる可能性があることを指摘しておきながら、バカラ村さんはなぜ、英ポンドが反発しやすい状況にあると考えていたのでしょうか?
決め手は英ポンド相場の反応のしかただった
「4月中旬ぐらいから、英ポンド/米ドルは下落を続けていましたが、値ごろ感からも、もうそろそろ、反発してもいいのではないかと思っていました。
ただ、下落しているときに買うということは、逆張りのトレードになります。しかも、英ポンドは一度トレンドができると、そのトレンドが長く続くことがあるため、不用意に入るのはリスクが高いと考え、買うに買えない状況にありました」
(出所:Bloomberg)
「また、英ポンド/円については、今年(2018年)に入って10円幅の下げが3回ありました。この時点で、悪材料はかなり織り込まれたのでないかという感じも受けていて、そろそろ反発してもいいのではないかと考えていました。
そうした中で、英ポンドはバルニエ氏の楽観的な発言などに買いで反応するようになり、逆に悲観的な材料に対しては反応が薄く、あまり下落しなくなってきました。英ポンドの反応から、悪材料はかなり織り込まれたと考えて、実際に英ポンドで買い出動しました」
(出所:Bloomberg)
その後、バカラ村さんの見通しどおりに英ポンドが反発したのは上のチャートのとおり。材料が出たときの英ポンド相場の反応のしかたに変化が生じたことが、バカラ村さんが英ポンドを買うタイミングだと判断した決め手になっていたんですね。
誰もが簡単に思いつく悪材料なら英ポンドは下がらない!
さらに、別のコラムでバカラ村さんは、ここから英ポンドが下落するためには「新しい材料が必要」とも言っていました。新しい材料…、なにか、想定しているものはあるのでしょうか?
【参考記事】
●米中間選挙前の米ドル/円は下がりやすい! 2000億ドルの対中関税は米国にも悪影響!? (9月4日、バカラ村)
「今の時点では、英ポンドが下落するような材料は考えつかないですね。誰もが考えていなかったような悪材料が出て、はじめて英ポンドが急落することになると考えています。
誰もが簡単に思いつくような材料であれば、市場もあまり反応しないと思います。たとえば、9月12日(水)に英与党・保守党の議員50名が、メイ英首相の不信任案を提出したという報道がありました。これは英ポンドにとっては悪材料です。
しかし、その時の市場の反応は小さかったので、やはり、悪材料はかなり織り込まれているのだと思います。実際に退陣が決定すれば、英ポンドはもう少し、下がることになると思いますが」
身内である保守党議員の50名に不信任案を提出されたメイ英首相。7月にはデービッド・デービス氏がEU離脱担当相を、ボリス・ジョンソン氏が外相を辞任するなど、英政権内部が離脱に向けて一枚岩でないことを改めて示す結果になった (C)Matt Cardy/Getty Images News
斜めの線と水平の線!?
ここから先、簡単に想像できるような離脱に関するネガティブな材料は、すでに今の英ポンド相場にあらかた反映されていそうだというのが、バカラ村さんの考え方。そう教えてもらえたら、英ポンドを買ってみようかな~って気分になってきました。
でも、英ポンドは米ドル/円などと比べて、普段から値動きが大きいイメージがあるし、記者などはとくに、バカラ村さんのようにうまく英ポンドのトレードをこなせる自信がありません。
英ポンド相場に、他の通貨とは違った動き方や特徴などといったものがあれば、トレードの参考にできそうなのですが…。
「英ポンド/米ドルは、トレンドライン、いわゆる斜めの線が機能するイメージがありますね。あと、トレンド性が強いので意外な感じもすると思いますが、フィボナッチも機能することがあります」
(出所:Bloomberg)
「一方で、英ポンド/円は、サポートやレジスタンスといった、水平の線が機能しやすいという特徴があると思います。
ただ、これについてはあくまで、英ポンドと円の両方が、市場で注目されていないときの方が効果を発揮しやすいという印象を持っています。今のように、Brexitで英ポンドが注目されているときは、そうとは言えないこともあります」
(出所:Bloomberg)
「あと、英ポンド/米ドルも英ポンド/円も、トレンド系のテクニカル指標を重視した方が良いと思います。オシレータ系も機能するときはありますが、経験上、トータルで考えると厳しいと感じていますので、あまり意識しない方が良いのではないかと思います。MACDを見ることはありますが、それだけで判断することは少ないですね」
英ポンド/米ドルは斜めの線、英ポンド/円は水平の線が機能しやすく、テクニカル指標はトレンド系のものが良さそうということ。これはぜひ、トレードの際に覚えておきたいポイントですね。
(取材・文/ザイFX!編集部・堀之内智 撮影/和田佳久)
(※本記事の取材は2018年9月16日(日)に行っています)
(「IMMの危険水準は円10万枚、ユーロ15万枚、英ポンド10万枚だが、さらに確認すべきは?」へつづく)
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