■米株式市場は堅調。ナスダック、S&P500は最高値更新
米国の景況感の良さや、資金還流の動きなどもあり、ナスダックやS&P500は最高値を更新しています。
(出所:Bloomberg)
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また、NYダウも、堅調な推移をしています。
(出所:Bloomberg)
■リスク回避の材料は豊富でもセンチメントは楽観的
米中の貿易戦争は継続しており、来月(9月)には2000億ドル規模の追加関税も検討されています。これは、リスク回避の材料になりますが、市場参加者は楽観的になっており、株式市場は堅調です。
それ以外にも、リスク回避の材料は豊富にあります。
●北朝鮮の非核化が不十分ということで、ポンペオ国務長官の訪朝を中止したこと
●トランプ大統領の元顧問弁護士であるマイケル・コーエン氏が、大統領選挙中の不正行為を認めたこと
●トランプ大統領の選対本部長を務めたポール・マナフォート氏が、税法違反や銀行詐欺などで有罪評決を受けたこと
●新興国市場の通貨危機
など、リスク回避の材料は多いです。
それでも、株式市場が上昇しているということは、市場のセンチメントが楽観的だと言えます。
【参考記事】
●米国株の強気相場史上最長がリスクオンを裏付け! 「8月の円高」はもう終わったか(8月24日、陳満咲杜)
■米利上げの打ち止めが意識され、為替は米ドル安に
さらに、8月24日(金)のジャクソンホール会議(※)での、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演も影響しています。
(※編集部注:「ジャクソンホール会議」とは、米ワイオミング州ジャクソンホールで開催される、カンザスシティー連銀主催の年次経済シンポジウムの通称。世界中の中央銀行総裁や金融関係者の多くが参加するイベントのため、毎年、市場参加者から高い注目を集めている)
パウエル議長は「強い経済は続く」と発言しましたが、「インフレ率が2%を上回って加速する兆候が見られない」と、ハト派的な発言もありました。
【参考記事】
●FRB議長が利上げの終盤を印象づけた!? 新興国から流出した資金が向かう先は…?(8月27日、西原宏一&大橋ひろこ)
来年(2019年)半ばに、米利上げが打ち止めされる可能性が意識されたことから、株式市場は堅調となり、為替市場は米ドル安で推移しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
■ECBの利上げ観測もあって米ドルは弱くなりがち!?
ユーロ/米ドルは8月27日(月)に、1.1693ドルまで上昇しました(※)。
(※編集部注:本記事の寄稿後、8月28日(火)の東京時間にユーロ/米ドルは一時、1.1697ドル付近まで上昇した)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
FRBの利上げが打ち止めになると、米ドルを買う材料が減ります。一方で、ECB(欧州中央銀行)では、来年(2019年)から利上げの可能性も出てくるため、相対的に米ドルは弱くなりがちです。
IMM(国際通貨先物市場)のポジション動向で、投機筋の米ドル買いが多くなってきていたこともあり、そのポジションの手仕舞いも出やすくなるため、米ドルは弱くなるのではないかと考えています。
■ユーロ/米ドルは1.15ドルの上抜けでベアトラップに
以前の当コラムで、ユーロ/米ドルが1.15ドルを下抜けたときのターゲットを、1.13ドルと指摘しました。
【参考記事】
●下抜けるか、抜けないか。ユーロ/米ドルは強いサポート水準の1.15ドルの攻防を注視(6月19日、バカラ村)
そして、8月14日(火)のコラムでは、ユーロ/米ドルが1.15ドルを下抜けたので、エリオット波動論から1.1350ドルをターゲットとし、下げに勢いがあったため、2017年1月安値を起点とした上昇幅の62%戻しまで下落する可能性があると紹介しました。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルが約1年ぶりに1.15ドルを下抜け! テクニカルが示唆する下値メドは?(8月14日、バカラ村)
結局、エリオット波動の5波目のターゲットを少し下抜けた、1.1301ドルで下げ止まりました。
(出所:Bloomberg)
ユーロ/米ドルは反発したとしても、1.15ドルがレジスタンスになる水準でした。しかし、市場参加者が売りに偏っていたタイミングで、トランプ大統領がFRBの利上げとユーロ安に不満を述べたこともあり、1.15ドルのレジスタンスを越え、ショートカバーが進んだことで、テクニカル的にはベアトラップとなりました。
【参考記事】
●投機筋の売り越しが過去最大になった米国債が示唆する米ドル/円の先行きは?(8月21日、バカラ村)
■ユーロ/米ドルは1.15ドル前半があれば買いで
エリオット波動では、現在は修正A波動となっており、今後、C波動までの上昇もあるため、ユーロ/米ドルはまだ、上昇する可能性があります。
(出所:Bloomberg)
以前、1.15~1.18ドルの水準でもみ合って推移していたこともあり、再度、このもみ合い水準で推移する可能性もありますが、下がったところは買いで良いのではないかと考えています。
1.13ドルが底となりましたが、1.15ドル前半まで下がれば、以前のレンジ下限でもあるため、買いやすい水準ではないかと考えています。
■英ポンドも上目線。悪材料は織り込み済みか
英国に関しては、ラーブ英EU(欧州連合)離脱担当相が「合意なしでの離脱の可能性がある」と発言したことで、ハードブレグジットの懸念が出ています。
EUと合意なしで離脱することに備えるための準備書面も公表されてきており、これは英ポンドにとっては、上値の重い材料となります。
しかし、すでに悪材料もかなり織り込まれていると思われ、英ポンドも反発しやすい状況ではないかと考えています。
そのため、ユーロ/米ドルと同様に、英ポンド/米ドルも、上昇するのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
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