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太田忠
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YEN蔵さんに聞く為替ディーラーの世界(1)
白熱の毎日! 1日50回は「机に蹴り」!?

2009年08月26日(水)00:21公開 (2009年08月26日(水)00:21更新)
ザイFX!編集部

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 タレントさんでもない限り、ブログの作者がその素顔をネット上にさらすことは少ない。オフ会などに出席して、実際にその作者に会ってみると、思ったとおりの人だったり、はたまた意外な感じがしたり…といった発見があるものだ。

■人気FXブログの作者・YEN蔵さんの素顔は…?

 元為替ディーラーで、人気FXブログ「YEN蔵のFX投資術」の作者・YEN蔵さんはどんな人だろうか?

 冷静に相場を観察するそのブログの内容は穏やかな紳士を想像させるもの。しかし、その一方、記者は何となく忍者のようなイメージも持っていたのである。

 なんで、忍者かって?

 それはYEN蔵という名前が服部半蔵のようだし(ちと、古いが…)、なんと言っても、YEN蔵さんの流している為替情報は「YEN蔵の地獄耳」(※)というのである。「地獄耳」とは何だか忍者っぽいではないか!?

 さてさて、そんなYEN蔵さんの素顔は……


 ご覧のとおり、「穏やかな紳士」で正解でした!

ハンドルネームYEN蔵さんの本名は田代岳さん。1989年からシティバンク、2003年からはスタンダード・チャータード銀行で為替ディーラーとして活躍してきた。

 最近独立したばかりで、これからは本名も顔も出して活動していくとのことだが、現時点では、まだ、YEN蔵さんの素顔を見たFXファンは少ないはず。今回はザイFX!が撮ったその貴重な写真入り(?)で、YEN蔵さんに為替ディーラーの世界や今後の為替相場の見通しについて聞いていく。


「YEN蔵の地獄耳」は、マット今井(今井雅人)さんが会長を務めるグローバルインフォが配信する金融情報サービス・グローバルインフォ24(GI24)の中で、1日数本流されているもの。GI24を提供しているFX会社に口座を開けば、見ることができる。GI24を提供しているFX会社はザイFX!の次のコーナーでご確認を。
「FX会社徹底比較!:為替ニュースで比べる」


■ひと口に為替ディーラーといっても役割はいろいろ

 約20年に渡ってYEN蔵さんが携わってきた為替ディーラーの世界とはどんなところだったのだろうか?

 「銀行の為替の部署は大きくセールスとトレーディングサイドに分けられます。さらにトレーディングサイドを分けると、いわゆるインターバンクディーラープロップディーラーになります。私はセールスはやっておらず、インターバンクディーラー、プロップディーラーをやっていました」

 今、FXの世界では元為替ディーラーという人がよく活躍している。たとえば、ザイFX!の連載陣でも、マット今井(今井雅人)さん、松田哲さん、陳満咲杜さんは元為替ディーラーだ。

 ただ、ひと口に為替ディーラーといっても、いろいろな種類があるということ。

 まず、セールスとは輸出入企業や保険会社といった企業などとやりとりして、為替の注文を受ける人。カスタマーディーラーとも呼ばれる。

 インターバンクディーラーはセールスの取ってきた注文をインターバンク市場と呼ばれる為替の市場でさばくのが仕事。ボードディーラーなどと呼ばれることもある。

 そして、プロップディーラーとは自分の裁量でポジションをとって利益を上げようとする人たちだ。プロプライアトリーディーラーとも呼ばれる。

 このうち、YEN蔵さんはインターバンクディーラーをやったり、プロップディーラーをやったり、またはその両者を兼任していたりしていたとのことだ。

■インターバンク市場の最低単位「1本」は100万通貨単位

インターバンク市場とは日本語に訳せば銀行間取引市場。銀行と銀行が為替の取引をする市場である。市場といっても、物理的な場所があるわけではない。

 株には東京証券取引所のように顧客の注文を1箇所に集中させて取引する「取引所」があるが、為替にはそのようなものはなく、1対1で銀行と銀行が相対取引しているものの集合体をインターバンク市場と呼んでいる。

 「まず、インターバンク市場の取引単位について説明しましょう。インターバンク市場では100万通貨単位を1本といい、これが取引の最低単位となっています。ただ、その昔は1本では少なくすぎて市場にさばけず、実際には最低5本単位ぐらいでしたけどね」

 ドル/円で100万通貨単位というと、仮に1ドル=100円とすれば、1億円に相当する。それでも少なすぎたというのだから、さすがに銀行間の取引は個人のFX取引とはスケールが違う。

■東京市場には一部リーグと二部リーグがあった!?

 「銀行と銀行が完全に直接取引するものはダイレクトディーリング(DD)と呼ばれています。これ以外に銀行と銀行の間を仲介するブローカーが入って取引を行うものもあります」

 ブローカーを介した取引はあとで触れる理由によって、今はグンと減少しており、現在、東京市場で残っているブローカーはトウキョウフォレックス上田ハーローという会社だけとなっている。為替レートを伝えるニュースなどでよく出てくる「トウフォレ上田」という会社である。ちなみにその系列のFX会社が個人トレーダーにもおなじみの上田ハーローFXだ。

 YEN蔵さんによると、1990年代前半まではダイレクトディーリングが主流であり、そこには一部リーグ、二部リーグみたいなものがあったそうだ(もちろん、これは正式な名称ではない)。
 「50本のドル/円を取引する銀行は一部リーグ。私のいたシティバンクはそこに入っていました。

 当時の東京市場では他に第一勧銀、東京銀行、三菱銀行、住友銀行、三井銀行、三和銀行、富士銀行、日本興業銀行、三菱信託銀行、三井信託銀行、モルガン銀行、バンカース・トラスト、ケミカル銀行といったところが一部リーグでしたね。

 一方、銀行の規模が小さく、体力がないので、10本とか20本までしかやりません、という銀行は二部リーグになるのです」

 ここで今一度、「50本」の日本円での金額を確認しておくと、1ドル=100円として、50億円ということになる。改めてすごい金額だと感じる。

■瞬時の判断で売りか買いか読むのが大変!!

 「東京市場のダイレクトディーリングはおもに電話でやっていました。電話でどこかの銀行を呼び出したり、呼び出されたりするのです。

 たとえば、電話で呼び出されると、『ドル/円50本ください』とまず本数だけが提示されます。この時点では売ってくるか、買ってくるかわからないんですね。

 当時は5銭刻みですから、95円の20銭~25銭レベルだったら、『ニーマル、ニーゴーです』と売値と買値の2つのレートを提示します。そうすると、それを聞いた相手の銀行が売りか買いかを言ってくるわけですね。

 この時、向こうが売ってきそうだなと判断したら、少しレートを低くして、『イチゴー、ニーマルです』と95円15銭~20銭を提示したりすることもあります。瞬時の判断で、売りか買いかを読み、レートを提示するわけですが、これが大変なんですよ。

 また、東京市場が終わったあとのロンドン市場など、海外の銀行と取引する場合は電話ではなく、ロイター端末で呼び出して取引していました。

 東京の銀行同士でも、ドル/円以外のドル/マルクやマルク/円などはロイター端末で取引していましたね」

 2ウェイプライスといって、今のFXの取引では投資家に対して、売値と買値が両方提示されているが、それをダイレクトディーリングではおもに電話で声に出してやっていたわけだ。

■1日50回は「机に蹴り」!? 白熱するディーラーの世界

 「ブローカーを使って取引する時はボイス・ボックスという機器を使って取引していました。

 当時の東京市場にはブローカーが3~4社あって、各ブローカーごとのスピーカーがディーラーの前に並んでいるんです。そこからブローカーの声が聞こえてきます。一方、こちらからブローカーへはマイクで指示を出していました。

 いずれにしても、1990年代前半ぐらいまでのインターバンク市場では『声を出して取引する』のが主流だったんですね。

声を出すとね、エキサイトしてくるんです。特にマーケットが大きく動くとね。声に出すことが人間心理を煽るところがあるんじゃないでしょうか。

 私も電話を投げつけたり、机に蹴りを入れるなんてことは1日に50回ぐらいはやってましたね」

 先にYEN蔵さんの印象を「穏やかな紳士」と書いてしまったが、それは訂正しなくてはいけないのか!? 「電話投げ」と「机に蹴り」が1日50回とはすさまじい!

 もっとも50億円とか100億円、あるいはそれ以上の金額をバンバン取引する為替のディーリングルームは、どんなに穏やかな人でも、冷静ではいられなくなる場所なのかもしれない。

「YEN蔵さんに聞く為替ディーラーの世界(2) 凄まじき仲値の攻防。米屋が出てるぞ~!?」へつづく)

(取材・文/ザイFX!編集部・井口稔  撮影/和田佳久)
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※取引量が1~1000通貨までのスプレッド。2022年7月1日(金)6時00分~2022年7月30日(土)5時30分までの配信実績
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