(「吉田恒さんに聞く(1) ~アメリカ大統領選挙の年は相場が動かない~」からつづく)
「そもそも僕に言わせると、今は円高第1幕の中休みにすぎません。まさに”夏休み”ですよ。このあと、円高第2幕以降が来ると思っていますから、そうなると、小動きではなく、円高方向へ大きく動くと思っています」
ここで話は大統領選挙からいったん離れ、ドル/円相場のサイクルの話に移る。
■円高局面の”期間”から考えて、ドル/円95円割れの可能性は高い
「下の表を見てください。過去20年間のドル/円相場を見てみると、円高、円安を繰り返し、そのうち、円高基調は計3回ありました。その期間は、最短で1年3ヵ月、最長で5年。平均3年1ヵ月です」
これをチャートで見てみると、次のようになる。
「つまり、円高は一度始まったら、普通は3年程度続くものなんです。最短で1年3ヵ月というのもありますが、まあ、これを1年半と考えれば、今回の円高は昨年6月から始まりましたから、少なくとも今年の年末までは円高が続くと考えられます。
さらに過去の傾向から考えれば、円高が来年、再来年と続いていく方がむしろ普通という話になります。
そして、それだけ円高期間が続くのならば、今年の3月につけた95円で円高が終わったわけではない、95円を割れていく可能性が高いという話になります」
これは円高局面の”期間”という観点から、95円割れがあるだろうという話である。
ちなみに、円高局面、ドル高局面の”期間”については、以前、当コーナーで松田哲さんに話を聞いた時も、似たような指摘があった(「ドルはどこまで下がるのか? (4)」参照)。
■ドルの”下落率”から考えて、ドル/円95円割れの可能性は高い
今度は円高局面の”期間”ではなく、”下落率”について吉田さんは解説してくれた。先ほどの表を以下に再掲する。
■ドルの”下落率”から考えて、ドル/円95円割れの可能性は高い
今度は円高局面の”期間”ではなく、”下落率”について吉田さんは解説してくれた。先ほどの表を以下に再掲する。
「平均3年間の円高局面が続く中で、ドルの下落率は最低でも25%、平均35%となっています。今回の円高局面は124円から始まっていますから、そこから25%下がったら92円ぐらい、30%下がったら88円ぐらいになります。
ですから、最低でも90円前後までいかなければ、円高局面は終わらないと考えられます」
つまり、円高局面でのドルの”下落率”という観点からも、95円は割れるという話になるということだ。
では、それはいつ始まるのだろうか?
下のグラフには2本のラインが描かれている。1本は過去3回の円高局面を平均化したチャート、もう1本、途中で止まっている方は今回の円高局面のチャートだ。
「このチャートを見ると、円高局面の中でも、円高に突き進む場面がある一方で(円高第1幕)、ドルがいったん反発して戻す場面があり(中休み)、さらにまた円高に突き進む場面がある(円高第2幕)ことがわかるでしょう?
また、今回の円高局面は、今までの平均的なパターンと比べると、円高第1幕の終了が遅かったこともチャートからわかります。いずれにせよ、3月に95円をつけて、円高第1幕は終了したと考えられます。その後は『中休み』に入って、従来のパターンどおりにドルが反発してきたということです」
■3月以降のドルの上昇は円高局面の中休みにすぎない
3月にみるみるドルが下がっていき、95円台に到達した時、このままドンドコ、ドンドコ、どこまでドルは下がるのだろう? と記者は思ったものだった。
ところが、そこからドルは反発し、あれよ、あれよと108円台まで上がっていった。正直、記者はちょっと狐につままれたような気持ちでいたのである。
しかし、吉田さんによれば、その反発局面(=中休み)も含めて、過去の円高パターンの想定内ということなのだ。そして、このドル上昇は中休みにすぎないわけだから、いずれまたドルは下がるという話になる。円高第2幕の到来だ。
(「吉田恒さんに聞く(3) ~円高第2幕は大統領選挙前後に起こる~」へつづく)
(ザイFX!編集部・井口稔)
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