米ドル/円は114円台半ばのレジスタンスゾーン抜け失敗で下落、市場は引き締め予想を過剰に織り込んでいる?
為替市場では、米ドル/円が114円台半ばあたりのレジスタンスゾーンを試しましたが、結局失敗しました。抜けそうに見えたのですが、さすがに2017~2018年に何度も頭を打ったレベルは重かったと言えます。
(出所:TradingView)
先週(11月1日~)は、さまざまなことがありました。
FOMC(米連邦公開市場委員会)では、テーパリングの開始が予想どおり決まりましたが、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])理事会と、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])の金融政策委員会では、市場予想に反して、緩和的な政策が継続しました。これには驚かされました。
特にBOEに関しては、ベイリー総裁自身が「物価に対するリスクを目にすれば、政策対応しなければならない」と繰り返し発言していたので、市場は利上げを織り込みにいきました。
しかし、理事会ではベイリー総裁自身、政策へ反対票を投じていませんでした。マーケットは完全にハシゴを外され、英金利は急激に低下し、世界中の金利がそれにつれて低下しました。
(出所:TradingView)
ただ、ベイリー総裁の擁護をするならば、市場はこのところ中央銀行の引き締めを過剰に織り込みすぎていたとは言えます。
米金融市場も来年(2022年)6月の利上げを織り込み始めていますが、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は何度も、テーパリングと利上げはまったく別のことと言っています。
どうなるかわかりませんが、さすがに2022年6月利上げは、やりすぎ感があります。
マーケットが現在織り込んでいる、過剰とも言える引き締め予想は、修正を余儀なくされるでしょう。金利は少し落ち着くはずです。
強い米雇用統計を受けても、米10年債利回りは1.5%を割り込み、1.42%前後まで急低下しました。
(出所:TradingView)
この急激な金利低下を見ては、米ドル/円も下落せざるを得ないというところでしょうか。
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米国と英国で20年債利回りと30年債利回りが逆転、30年債利回りがこれだけ動くのはよほどのこと
これまで「日本以外の国は金融引き締めに動くが、日本は引き締め競争に取り残される」というロジックで、円売りが進んでいました。それが過剰に織り込みすぎとなれば、円売りも少し修正されることになります。
しかし、今回の長期金利の低下には違和感があります。10年債利回りも低いのですが、各国の30年債利回りが急低下しています。米国は20年債利回りより、30年債利回りの方が低い、逆イールド状態になっていますが、これは景気後退のシグナルとも言われています。
(出所:TradingView)
英国も20年債利回りと30年債利回りが逆転しています。と言いますか、今回の30年債金利低下は英国がスタートだったと言えます。
10月27日(水)、スナク財務大臣が予算を発表しましたが、その際、英債務管理庁は2526億ポンドの国債を発行する予定が、1948億ポンドに抑えられたと発表しました。578億ポンド(約8.8兆円)もの減額です。
(出所:TradingView)
この発表を受け、英30年債利回りは1.3%台前半から1.1%前後へと急低下、現在(11月10日)は0.93%と1%を割り込んでいます。30年という長い金利で、これほど動くのはすごい。血みどろになったトレーダーもいるでしょう。
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長期金利の大幅な低下は中国の景気後退を織り込んでいる!? 今後何年間も中国の経済成長は大きく鈍化?
米30年債利回りは現在1.82%。今年(2021年)の3月に2.5%を超えたことを考えると、ものすごく低い。ここまで低いとかなり違和感があります。この低い長期金利は何を織り込んでいるのでしょうか。
市場があまり織り込んでいない大きなリスクがあるとすれば、それは中国の景気後退だと思います。中国恒大集団がリーマン・ショック級の危機を引き起こすのではないかとは、よく言われます。しかし、一気に破綻ということはないでしょう。
おそらく日本同様、長い時間をかけて不良債権等を処理していくことになるのでは…と思います。つまり今後、何年も中国の経済成長は大きく鈍化することになります。
かつては二桁の成長率でしたが、最近では6~7%ぐらいの成長率に落ちていました。これが、5%割れ、つまり4%台の成長率になるのではないかと思っています。かなり低いです。
中国は世界経済の成長エンジンでした。これがおとなしくなるなら、影響は甚大です。
中国の建設ラッシュが沈静化するならば、オーストラリアからの鉄鉱石の輸入は減少するでしょう。オーストラリアは多くの一次産品を輸出しているように見えますが、金額ベースでは、鉄鉱石の貿易が32%を占める、実は鉄鉱石の一本足打法です。
現在(11月10日)、IMM通貨先物市場には、大きな豪ドルショートポジションがあります。これが買い戻しを迫られれば、豪ドルも結構上昇しそうですが、この豪ドルショートはチャイナ・ヘッジです。買い戻さない可能性が高いと思います。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
米ドル/円は一服ですが、昨年(2020年)高値112.22円を付けてから上昇してきた相場です。112.22円は割り込まないで、再上昇するのではないかと思っています。
(出所:TradingView)
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