豪金融政策発表後、豪ドルは「セル・ザ・ファクト」に
先週(11月1日~)は豪・英・米と金融政策の発表が続きましたね。
まずRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])ですが、YCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)を廃止。さらに2024年まで利上げしないとしていた予想を撤廃しました。
タカ派へ転換した会合だったと思いますが、豪ドルは売られています。
YCCの廃止は、RBAが先々週(10月25日~)に豪国債を買わなかったことで予想されていました。
それとともに利上げ前倒しの観測も高まり、プライス・イン(織り込み)されてしまったのでしょう。
そのため、実際に結果が発表されると「セル・ザ・ファクト」となったようです。
【参考記事】
●資源国通貨の豪ドルやカナダドル買いで。今週はオーストラリアの政策会合に注目、国債利回り暴騰で来年後半の利上げ予想も!(11月1日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
利上げと据え置きで見通しが割れていたBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])は、据え置きに。
ベイリーBOE総裁は「行動する必要がある」と利上げを強く示唆していたのですが……。
発言だけを聞けば100%利上げなのですが、据え置きでしたね。
前任のカーニー総裁は、発言がすぐに変わることから「Unreliable Boyfriend(信頼できないボーイフレンド)」と議会で評されましたが、ベイリーさんもか、という印象です。
8月20日からのトレンドは調整入りか
BOEは年内利上げの可能性は残されているのですが、英ポンドも売られています。
FOMCは予想どおりにテーパリングを決定し、米雇用統計も強い数字となったのですが、米長期金利(米10年債利回り)は低下しています。
世界的に金利が低下しており、インフレ懸念による金利上昇のトレンドが一服したのかなという印象もあります。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
今週(11月8日~)は調整かもしれませんね。
繰り返しになりますが、8月20日(金)をボトムにして原油やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が買われる動きが続いていました。
それを引っ張ってきたのが豪ドル。
しかし、11月2日(火)のRBAがタカ派だったにもかかわらず、セル・ザ・ファクトで反落したことにより、ひと相場が終わったのだと考えています。
【参考記事】
●豪ドル/円にやってきた「イージーマーケット」は米ドル/円にも到来! 5年間の停滞を抜け出し上昇フルスピード。年末120円に不思議なし!(10月18日、西原宏一&大橋ひろこ)
●豪ドルには、年に1度の「イージーマーケット」のチャンスがまだある! 天然ガスで格差が鮮明な豪ドルは、対ユーロで買い方向!(10月4日、西原宏一&大橋ひろこ)
●豪ドル/円は、8月20日がターニングポイント! 「脱炭素」を追い風に、底堅くなる豪ドル/円を押し目買い!(9月27日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
そのわりに強いのが株式市場。
NYダウは金曜日(11月5日)も史上最高値を更新しました。
(出所:TradingView)
あくまでもリスクアセット通貨の調整、ということですね。
豪ドルとともに上昇してきた原油価格は、チャート的に反落を示しています。
(出所:TradingView)
原油市場ではOPECプラス(※)が米国などの増産要請に応じず、追加増産を見送りました。
米国はSPR(戦略石油備蓄)を放出するのではとも言われていますが、米エネルギー省長官によると、この水準ではまだ放出する気はないようです。
厳冬となればエネルギー価格は高止まりするでしょうが、一方で増産を計画するシェールオイル業者もあるようですから、しばらくは「高値波乱」といった展開でしょうか。
(※編集部注:「OPECプラス」とは、OPEC(石油輸出国機構)にOPEC非加盟の主要産油国を加えた枠組みのこと)
世界的にインフレへと向かっているのでしょうが、目先はこのあたりで上昇一服なのかもしれませんね。
テスラ株2兆円の売却をツイッター民へアンケート
株式市場で話題となったのがテスラCEOのイーロン・マスク。
保有するテスラ株の10%(2.2兆円相当)を売却するかどうか、ツイッターでアンケートした結果、57.9%が売却に賛成となりました。
含み益が租税回避の手段となっているとの批判があり、反発しての行動とされていますね。
株式市場全体への直接的なインパクトはそこまで大きくないでしょうが、センチメントに影響を与える可能性はあります。
バイデン政権になってから左派の力が強まっています。
富裕層への課税強化も検討されていますし、イーロン・マスクもこれを懸念しての売却なのかもしれません。
左派的な政策への反発は有権者全体に強まっているのか、先週のバージニア州知事選では民主党が敗れました。
豪ドル高トレンドは調整入り。慎重に
米議会はインフラ投資法案を11月6日(土)に可決しましたが、当初の3.5兆ドル規模が1兆ドル規模へと金額はだいぶ小さくなりました。
この影響はどうでしょうか。
失点続きのバイデン米大統領はインフラ投資法案で支持率を浮揚させたいのでしょうが、今日(11月8日)のアジア時間を見る限り、市場は「だから?」という感じ。
今夜のNY市場での反応を見たいですね。
今週の戦略はどう考えますか?
調整入りしつつあり難しいのですが、中期的に豪ドル/円や米ドル/円が上がっていく予想は変えていません。
今週のどこかでいい押し目があれば買っていきたいですね。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は登録後10日間無料解約可能なので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)