(「ボリンジャーバンドはじめて物語(2) ~特撮カメラマンだったからこそできたテクニカル指標の開発~」からつづく)
——ボリンジャーさんが特撮カメラマンだったなんて、誰も知らないと思います。ザイFXのスクープかも!
そのあと専業トレーダーになったのですが、ひょんなことからFNN(ファイナンシャル・ニュース・ネットワーク)という、全米初となる経済専門の放送局で働くことになりました。都合6年間は働いたでしょうか。ちなみにFNNはその後、3大ネットワークのNBCに買収されました。
■ボリンジャーバンドはとっさに命名されたものだった
FNNでは裏方として働いていたのですが、ある日、正社員のストライキがあって、私が代役で出演しなきゃならなくなったんです。私は極度の“あがり症”だから勘弁してほしかったんですけど「どうしても今夜の放送に出てくれ」と頼み込まれてしまってね。その時に、自分がどういうトレードをしているかを、番組で披露したんです。
実は「ボリンジャーバンド」という名前も、その時についたものだったんです。それまでは、私と数人の仲間だけが使っていただけでしたから、特に名前なんて必要なかった。ところが司会者に「このバンドは何と呼んだらいいんだい?」と聞かれて、とっさに「じゃあ、ボリンジャーバンドで」って答えて決まりました。
■ボリンジャー氏が語った「強烈な陽転のサイン」とは?
——僕はボリンジャーバンドという名前を初めて聞いた時、「ロシアのサーカス団の音楽隊」みたいだと思いました(笑)。ところでボリンジャーさんは、日本に来られたのは初めてですか?
いいえ。2001年に、国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の会議が日本であって、その時に来たことがありますよ。
私はそこで「ボリンジャーバンドとローソク足の融合について」という講演をやらせてもらいました。内容は「株価がボリンジャーバンドから下離れしたところで「唐傘」(カラカサ)が出現すると、強烈な陽転のサインになる」という話。
日本のテクニカルチャートというのは、実に興味深い。欧米で使われているテクニカル分析は、表面上は色々違いはあってもルーツは同じです。
それに対して、日本とインドのテクニカル分析は、それぞれ独自に発祥しました。欧米のチャートは「黒か白か」にこだわるのに対して、日本のチャートは「継続性」を重視しています。欧米のテクニカル分析は、こうした日本の発想が持ち込まれることによって、飛躍的に発達しました。
たとえば「ローソク足」というのは、日本で生まれました。始値、終値、高値、安値、その日に上昇したのか、下落したのかの関係性が一目瞭然です。欧米には「バーチャート」がありますが、数本のバーがどういう順序や形で現れたかによって相場を判断する「足型」の発想はありません。
——ZAiの人が「今後の相場の見通しを聞いてくれ」って言ってるんですけど…。
相場が低迷しているから、みなさん、反転の機会を待っているんですね。米国株に関しては、今日の時点(11月1日・土曜日)で言えば、上昇しようとする兆しは見えています。金曜日は日本が大幅下落したのに、米国株は上昇しましたから。
■相場のことは相場に聞け!
ただ「トレンドが変わろうとしている」のであって、「変わった」わけではありません。この状況では買いの準備に入るだけで、実際に買いでエントリーするのはまだ先です。
「ダウはいくらぐらいまで戻すか」というような話を聞きたいのかもしれませんが、価格の目標を設定するのはトレーダーにとっては悪いことです。
それよりも、今、現実の相場で何が起こっているのかを見て、それに則した行動を取るようにしましょう。「相場のことは相場に聞け」というじゃありませんか。
■ボリンジャーさんへの取材を終えて byワタナベくん
最後のは愚問でしたかw この時、ボリンジャーさんは「目標価格(早晩ダウは1万ドルまで戻すだろう等)が耳に入ると、それが先入観となってトレードに微妙に影響してしまうかもしれないので、よくよく気をつけなければいけない」というようなことをおっしゃっていました。
ボリンジャーさんのような大家でさえ、注意しているということだと思います。感情を排除するというのが、テクニカルトレードの永遠のテーマなんですね。
写真の感じからもわかると思いますが、ボリンジャーさんはとても気さくでいい方でした。また、実際にご自分でもトレードをやられているので、相場について語る時には熱いものを感じました。いただいた名刺は家宝にしようと思います。どうもありがとうございました。
(謎のトレーダー・ワタナベくん)
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