■依然として米ドル全面安だが、対円では…?
米ドルは引き続き、円を除く主要通貨に対して、全面安の状況となっている。
当然のように、ファンダメンタルズやそれに関する解釈は米ドル安とリンクしているため、名の知れた金融機関は連日のように、米ドル・ストレート通貨ペアの目標値の修正を行っている。すなわち、米ドル安方向への修正だ。
今週(10月19日~)に入っても、目標値の修正が発表されている。
いくつかの大手金融機関は、ユーロ/米ドルの今後3~6カ月のターゲットを1.6ドルに引き上げた。1.6ドルと言えば、2008年7月以来の高い水準で、米ドル安に対する深刻な懸念はもちろん、テクニカル面も考慮されているようだ。
その他では、豪ドル/米ドルのパリティ(1対1)予測も盛んに聞こえてくる。一時、パリティ割れが予測された英ポンド/米ドルでさえ、1.8ドルのターゲットが提示されているほどだ。
しかし、円に関しては、最近はあまりターゲットが明示されていない模様だ。民主党政権が誕生した際に蔓延していた円高論調は、少し弱まってきている。むしろ、UBS銀行のように、円高傾向に疑問を投げかけるレポートも目立ち始めた。
■「君子豹変」できた者が勝者になれる!
ここで注目したいのは、ユーロ/米ドルが1.5ドル台に乗せた後になって、ユーロ/米ドルのターゲットが修正されていること、ならびに、豪ドルのパリティについての論調が、豪ドル/米ドルが0.9300ドル台に乗せてから聞こえ始めたことだ。
逆に、円の強気論調の減少は、他ならぬ、足元の円が強い変動を見せていないからだ。
ユーロ/米ドル 週足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ vs 米ドル 週足)
ユーロ/米ドルの1.6ドルをターゲットとして提示している金融機関の中には、年初に1.2ドル割れを強く主張したところも含まれている。
また、英ポンド/米ドルの1.8ドルをターゲットに提示したアナリストの中には、つい3週間前に、1.5ドル割れを予想した者もいた。
筆者は、為替マーケットに長年携わって、有力金融機関のレポートをかなり読んできたが、このような「君子豹変」をたくさん経験してきた。
つまるところ、「トレンドフォロー」が取引手法の王道であるように、相場予測も「トレンド・フォロー」になりがちなのは、確率を上げるためには、これしかないからだ。これは、ファンダメンタルズ派、テクニカル派を問わない(「同じチャートも人により違って見える。円安トレンド終了と考えるのは早計だ!」参照)。
逆に言えば、豹変できない者は君子になれず、敗者となる確率が高いということだ。トレーダーのみならず、アナリストも、この真実をしっかり心得ているだろう。
ここでも、給料や社会的地位の高い者のほうが柔軟性を持つという社会学的統計結果に納得せざるを得ない。
■当面のマーケットを左右する重要な要素は?
米ドル安がそろそろ終えんに向かうと主張してきた筆者だが、やはり、君子でいたい(「浮上した2つの『異変』は何を示唆する?米ドル安トレンドの終えんは、やはり近い!」参照)。
君子であるなら、このあたりで、そろそろ豹変してもよい時期に差し掛かっているはずだが、果たしてそうだろうか?
この答えを探すため、ファンダメンタルズとテクニカルの両面から、もう1度分析を試みるとしよう。まずは、ファンダメンタルズを分析してみる。
ユーロ/米ドルの1.6ドルをターゲットとして提示している金融機関の中には、年初に1.2ドル割れを強く主張したところも含まれている。
また、英ポンド/米ドルの1.8ドルをターゲットに提示したアナリストの中には、つい3週間前に、1.5ドル割れを予想した者もいた。
筆者は、為替マーケットに長年携わって、有力金融機関のレポートをかなり読んできたが、このような「君子豹変」をたくさん経験してきた。
つまるところ、「トレンドフォロー」が取引手法の王道であるように、相場予測も「トレンド・フォロー」になりがちなのは、確率を上げるためには、これしかないからだ。これは、ファンダメンタルズ派、テクニカル派を問わない(「同じチャートも人により違って見える。円安トレンド終了と考えるのは早計だ!」参照)。
逆に言えば、豹変できない者は君子になれず、敗者となる確率が高いということだ。トレーダーのみならず、アナリストも、この真実をしっかり心得ているだろう。
ここでも、給料や社会的地位の高い者のほうが柔軟性を持つという社会学的統計結果に納得せざるを得ない。
■当面のマーケットを左右する重要な要素は?
米ドル安がそろそろ終えんに向かうと主張してきた筆者だが、やはり、君子でいたい(「浮上した2つの『異変』は何を示唆する?米ドル安トレンドの終えんは、やはり近い!」参照)。
君子であるなら、このあたりで、そろそろ豹変してもよい時期に差し掛かっているはずだが、果たしてそうだろうか?
この答えを探すため、ファンダメンタルズとテクニカルの両面から、もう1度分析を試みるとしよう。まずは、ファンダメンタルズを分析してみる。
ご存知のように、米ドル安を加速させたのは、10月6日(火)の豪州の利上げだった。
つまり、各国の金融政策の見通しが、当面のマーケットを左右する要素としては重要だろう。実際、豪州が来月にも再び利上げし、ニュージーランドが追随するといった観測が根強く、足元の豪ドル高とNZドル高を支えている。
つまり、各国の金融政策の見通しが、当面のマーケットを左右する要素としては重要だろう。実際、豪州が来月にも再び利上げし、ニュージーランドが追随するといった観測が根強く、足元の豪ドル高とNZドル高を支えている。
豪ドル/米ドル 週足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル vs 米ドル 週足)
対照的に、米国の利上げは当面先だという観測が広がっており、これが現在の米ドル安の最大の要因となっている。
だが、やや我田引水ではあるが、円の軟調も同じところに起因していると思う。なぜなら、日本の利上げを予測する声が皆無であり、米国の利上げよりも遅れるといった見方さえ多くあるためだ。
■ユーロとポンドは、利上げ再開が過剰に織り込まれた!?
しかし、ユーロ圏と英国の話になると、ややこしくなる。
ユーロ圏の利上げに確信を持てるだけの材料がなく、展望もない。英国に関しては、利上げどころか、量的緩和の再拡大さえあり得る。
それにもかかわらず、ユーロだけでなく、英ポンドさえも、対米ドルで大幅に切り返している。
対照的に、米国の利上げは当面先だという観測が広がっており、これが現在の米ドル安の最大の要因となっている。
だが、やや我田引水ではあるが、円の軟調も同じところに起因していると思う。なぜなら、日本の利上げを予測する声が皆無であり、米国の利上げよりも遅れるといった見方さえ多くあるためだ。
■ユーロとポンドは、利上げ再開が過剰に織り込まれた!?
しかし、ユーロ圏と英国の話になると、ややこしくなる。
ユーロ圏の利上げに確信を持てるだけの材料がなく、展望もない。英国に関しては、利上げどころか、量的緩和の再拡大さえあり得る。
それにもかかわらず、ユーロだけでなく、英ポンドさえも、対米ドルで大幅に切り返している。
つまり、金融政策についての見通しと解釈が、足元の相場にかなり織り込まれていて、むしろ、行き過ぎているほどにも思える。英ポンドは、特にそうだ。
これまでも指摘してきたように、英ポンドは、米ドル全体のパフォーマンスを測るもっともよいパラメーターだ。最近の英ポンドの大幅な切り返しは、明らかにマーケットの過剰反応のように見える(「円高=藤井財務相による「人災」説に疑問。米ドル/円の安値追いには賛成できない!」参照)。
■英ポンドの上昇は、米ドル安に対する恐怖の裏返し?
英国の中央銀行であるイングランド銀行のキング総裁は、金融政策の正常化に言及した。これを受け、足元の英ポンドは上昇を加速させているが、同時に、タッカー副総裁が量的緩和策拡大の可能性を示唆していることを考慮すると、英中銀の政策はかなり不確実に思える。
ところが、米ドル安のコンセンサスが強い最近のマーケットでは、米ドル安の材料にしか反応しない。米ドル高につながるような、つまり、英ポンドのマイナス材料は無視されている。
もっとも、最近の英ポンドの上昇は、ショートカバーに起因するテクニカル的な要素が強い(「浮上した2つの『異変』は何を示唆する?米ドル安トレンドの終えんは、やはり近い!」参照)。
だが、それでも行き過ぎの感は否めない。少なくとも、想定されているような時期に、英国が利上げする可能性はかなり低く、過度に先取りしようとするマーケットの反応は、米ドル安に対する恐怖の裏返しであろう。
従って、筆者は、行き過ぎた米ドル安は修正されるとの見方を変えない。
だが、自分自身の論調も「諸刃の剣」であるように、利上げの可能性がかなり不確実な英ポンドが上昇し続ければ、米ドル安トレンドが終えんするどころか、加速していく絶好の材料にもなり得る。
筆者は、このような論調を年初から一貫して指摘してきたことは、もちろん承知している。結論から言えば、筆者の「君子豹変」も近くあり得るかもしれないが、現時点では、これまでの見方を堅持したい。
君子になっていなければ、次回は、テクニカル面から分析してみたい。
(2009年10月23日 東京時間13:00記述)
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