■IMFの声明をきっかけに、米ドルが反転した!
為替マーケットは、転換期に差し掛かっているようだ。
前回のコラムで米ドル安終えんの可能性を指摘したが、ドルインデックスの値動きを考えると、その可能性が現実化しつつあるように思える(「米ドル全面安相場は幸福とともに消える!?90円割れ回避の米ドル/円は底打ちか?」参照)。
(出所:米国FXCM)
ドルインデックスは、9月22日に75.91の安値をつけた後、徐々に値を上げて、足元では、3月高値から引かれたレジスタンスラインの上抜けをトライしようとしている。
それは皮肉にも、IMF(国際通貨基金)が米ドルの基軸通貨としての地位に対する懸念を表明した後に進行しているのだ。
■英ポンド/米ドル、為替市場全体のパラメーター
このように、米ドルは持ち直してきたのだが、その最も象徴的な通貨ペアは英ポンド/米ドル以外にあるまい。
これまでも指摘してきたように、2009年になって、英ポンド/米ドルは為替市場の動向を測るパラメーターとなっており、それは今回もしかりである(「口々に円高予想が語られているが、今円を買うのは悪い円買いになる可能性」参照)。
英ポンド/米ドルは、9月28日に1.5768ドルまで下値を切り下げ、2008年6月以来の安値を記録した。
それにより、下に示した日足チャートを見てわかるように、8月5日につけた高値1.7042ドルをトップとする「ヘッド&ショルダー(※)」のフォーメーションが鮮明となった。つまり、英ポンドのベア(弱気)志向を示唆しているのだ。
(※編集部注:「ヘッド&ショルダー」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼び、仏像が3体並んでいるように見えるため「三尊」と呼ぶこともある)
ドルインデックスは、9月22日に75.91の安値をつけた後、徐々に値を上げて、足元では、3月高値から引かれたレジスタンスラインの上抜けをトライしようとしている。
それは皮肉にも、IMF(国際通貨基金)が米ドルの基軸通貨としての地位に対する懸念を表明した後に進行しているのだ。
■英ポンド/米ドル、為替市場全体のパラメーター
このように、米ドルは持ち直してきたのだが、その最も象徴的な通貨ペアは英ポンド/米ドル以外にあるまい。
これまでも指摘してきたように、2009年になって、英ポンド/米ドルは為替市場の動向を測るパラメーターとなっており、それは今回もしかりである(「口々に円高予想が語られているが、今円を買うのは悪い円買いになる可能性」参照)。
英ポンド/米ドルは、9月28日に1.5768ドルまで下値を切り下げ、2008年6月以来の安値を記録した。
それにより、下に示した日足チャートを見てわかるように、8月5日につけた高値1.7042ドルをトップとする「ヘッド&ショルダー(※)」のフォーメーションが鮮明となった。つまり、英ポンドのベア(弱気)志向を示唆しているのだ。
(※編集部注:「ヘッド&ショルダー」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼び、仏像が3体並んでいるように見えるため「三尊」と呼ぶこともある)
(出所:米国FXCM)
英ポンド/米ドルは、2009年に入って年初から年央まで、量的緩和に伴う英ポンド安懸念をあざ笑うかのように、一貫して上昇してきた。
しかし、足元では、英ポンドは米ドルに対して弱含んでおり、その方向転換を米ドル全面高の可能性を示唆するサインとして、そのまま受け止めるべきであろう。
■英ポンドが示す方向性は、これからも信頼できるか?
ところで、米ドルの下落が一服したとはいえ、主要通貨ぺアの中で、英ポンドの弱気波動だけが際立っている。その他の通貨はさほど下落しておらず、円と豪ドルに至っては、再び高値を更新している。
これまで相場をリードしてきた英ポンド/米ドルだが、その指し示している方向は、引き続き信用できるものなのだろうか?
それを断定的に判断することは、誰にもできない。しかし、個人的には、英ポンド/米ドルの指し示す方向性は、基本的には、依然として有効だと思う。
歴史的に、英ポンドは、ユーロや豪ドルといった他のメジャー通貨よりも先に下落に転じる傾向が強い。だから、他の通貨がその後、英ポンドに追随して、対米ドルで反落してくるのではないかと見ているのだ。
英ポンド/米ドルは、2009年に入って年初から年央まで、量的緩和に伴う英ポンド安懸念をあざ笑うかのように、一貫して上昇してきた。
しかし、足元では、英ポンドは米ドルに対して弱含んでおり、その方向転換を米ドル全面高の可能性を示唆するサインとして、そのまま受け止めるべきであろう。
■英ポンドが示す方向性は、これからも信頼できるか?
ところで、米ドルの下落が一服したとはいえ、主要通貨ぺアの中で、英ポンドの弱気波動だけが際立っている。その他の通貨はさほど下落しておらず、円と豪ドルに至っては、再び高値を更新している。
これまで相場をリードしてきた英ポンド/米ドルだが、その指し示している方向は、引き続き信用できるものなのだろうか?
それを断定的に判断することは、誰にもできない。しかし、個人的には、英ポンド/米ドルの指し示す方向性は、基本的には、依然として有効だと思う。
歴史的に、英ポンドは、ユーロや豪ドルといった他のメジャー通貨よりも先に下落に転じる傾向が強い。だから、他の通貨がその後、英ポンドに追随して、対米ドルで反落してくるのではないかと見ているのだ。
■やはり、米ドル高への方向転換を警戒すべきか?
下に示した(1)のチャートは、ユーロ/米ドルの週足と英ポンド/米ドルの週足を比較したものだ。
基本的に、両者は同じような値動きとなってはいるが、英ポンドは2007年10月にトップアウトしたのに対し、ユーロはそれから1年後の2008年7月になって、ようやくトップアウトしているのだ。
下に示した(1)のチャートは、ユーロ/米ドルの週足と英ポンド/米ドルの週足を比較したものだ。
基本的に、両者は同じような値動きとなってはいるが、英ポンドは2007年10月にトップアウトしたのに対し、ユーロはそれから1年後の2008年7月になって、ようやくトップアウトしているのだ。
(出所:米国FXCM)
同様に、(2)のチャートで、豪ドル/米ドルの週足と英ポンド/米ドルの週足を比べると、英ポンドが豪ドルよりも先に反落していることがわかる。つまり、英ポンドの反落に、豪ドルが追随していることが読み取れる。
従って、足元のマーケットは、米ドル安から米ドル高への方向転換を警戒しなければならない時期に差し掛かっていると言える。
もちろん、このような予測をするには、かなり「理不尽」だと思われる節が存在していることも、筆者は十分に承知している。
■米ドル高に反転する理由を今から探す必要はない!
その理由は2つある。
まず、よく言われていることだが、米ドル高となる「理由」が見つからないこと。次に、豪ドルのような利上げ観測がくすぶる通貨が、対米ドルで反落するとは、想定しがたいことだ。
1つ目の疑問については、筆者も正直、その「理由」を詳しくわからないままだ。
だが、往々にして、相場が大きく動いてから初めて、その「理由」と「根拠」が詳しくかつ理路整然に語られるものであって、その過程においてはわからない場合が多い。
よって、米ドル高に転換してから、多くのエコノミストが詳しく「理由」を分析してくれるので、あせることはない。もっとも、金融マーケットでは為替相場のみならず、事前に説明できる値動きほど本物ではないという事例が、枚挙にいとまがないほどだ。
また、2つ目については、豪ドルなどの通貨の利上げ観測を否定するものではない。しかし、金融マーケットに「噂で買い、事実で売る」という格言があるように、豪ドルの利上げがあれば、それがむしろ、豪ドル売りの引き金となるケースも想定しておくべきであろう。
■藤井財務相の饒舌が、円高の主因ではない!
最後に、一番ややこしい米ドル/円の値動きに焦点を当てよう。
筆者の予測とは異なって、米ドル/円は90円割れを回避できなかった。足元では1月安値に接近しており、当然ながら、87円台をつける可能性を念頭に置かなければならないと思っているが、それでも筆者は、安値追いには賛成できずにいる。
米ドル/円の90円割れが、藤井財務相の饒舌がもたらした「人災」と見る向きは多くあるが、基本的には、その影響があったとしても、主導的な要素ではないと思う。
むしろ、英ポンド/円をはじめとして、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場における円高圧力が、そのまま米ドル/円に波及したことが、重要な背景であると考える。
■米ドルの全面リバウンドがあったとしたなら?
実際の値動きを見てみる。
英ポンド/円は、9月11日につけた高値の152.76円から、9月28日につけた安値の140.30円まで、約1250pipsの下落となっている。これに対して、同時期の英ポンド/米ドルは約970pipsの下げ幅にとどまっているのだ。
ちなみに、同時期の米ドル/円は約300pipsの下落幅となっていて、これらを考慮すると、上記の考え方を理解していただけるだろう。
もっとも、米ドル/円は他のメジャー通貨に比べて、ドルインデックスとかい離する傾向が強い。これは今までに何度も指摘したとおりであるが、それでも、いずれドルインデックスの値動きに回帰してくる傾向にある。
同様に、(2)のチャートで、豪ドル/米ドルの週足と英ポンド/米ドルの週足を比べると、英ポンドが豪ドルよりも先に反落していることがわかる。つまり、英ポンドの反落に、豪ドルが追随していることが読み取れる。
従って、足元のマーケットは、米ドル安から米ドル高への方向転換を警戒しなければならない時期に差し掛かっていると言える。
もちろん、このような予測をするには、かなり「理不尽」だと思われる節が存在していることも、筆者は十分に承知している。
■米ドル高に反転する理由を今から探す必要はない!
その理由は2つある。
まず、よく言われていることだが、米ドル高となる「理由」が見つからないこと。次に、豪ドルのような利上げ観測がくすぶる通貨が、対米ドルで反落するとは、想定しがたいことだ。
1つ目の疑問については、筆者も正直、その「理由」を詳しくわからないままだ。
だが、往々にして、相場が大きく動いてから初めて、その「理由」と「根拠」が詳しくかつ理路整然に語られるものであって、その過程においてはわからない場合が多い。
よって、米ドル高に転換してから、多くのエコノミストが詳しく「理由」を分析してくれるので、あせることはない。もっとも、金融マーケットでは為替相場のみならず、事前に説明できる値動きほど本物ではないという事例が、枚挙にいとまがないほどだ。
また、2つ目については、豪ドルなどの通貨の利上げ観測を否定するものではない。しかし、金融マーケットに「噂で買い、事実で売る」という格言があるように、豪ドルの利上げがあれば、それがむしろ、豪ドル売りの引き金となるケースも想定しておくべきであろう。
■藤井財務相の饒舌が、円高の主因ではない!
最後に、一番ややこしい米ドル/円の値動きに焦点を当てよう。
筆者の予測とは異なって、米ドル/円は90円割れを回避できなかった。足元では1月安値に接近しており、当然ながら、87円台をつける可能性を念頭に置かなければならないと思っているが、それでも筆者は、安値追いには賛成できずにいる。
米ドル/円の90円割れが、藤井財務相の饒舌がもたらした「人災」と見る向きは多くあるが、基本的には、その影響があったとしても、主導的な要素ではないと思う。
むしろ、英ポンド/円をはじめとして、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場における円高圧力が、そのまま米ドル/円に波及したことが、重要な背景であると考える。
■米ドルの全面リバウンドがあったとしたなら?
実際の値動きを見てみる。
英ポンド/円は、9月11日につけた高値の152.76円から、9月28日につけた安値の140.30円まで、約1250pipsの下落となっている。これに対して、同時期の英ポンド/米ドルは約970pipsの下げ幅にとどまっているのだ。
ちなみに、同時期の米ドル/円は約300pipsの下落幅となっていて、これらを考慮すると、上記の考え方を理解していただけるだろう。
もっとも、米ドル/円は他のメジャー通貨に比べて、ドルインデックスとかい離する傾向が強い。これは今までに何度も指摘したとおりであるが、それでも、いずれドルインデックスの値動きに回帰してくる傾向にある。
(出所:米国FXCM)
米ドル/円の週足とドルインデックスの週足を比べると、ドルインデックスと大きく相違した時期(赤線で囲まれた部分)があることがわかる。
その背景と原因は、前回のコラムではっきりと指摘した(「米ドル全面安相場は幸福とともに消える!?90円割れ回避の米ドル/円は底打ちか?」参照)。
ご参考までに、仮に米ドルの全面リバウンドがあるとするなら、今回は、米ドル/円がドルインデックスと大きくかい離したり、相違したりはせず、ドルインデックスの値動きに追随してくる蓋然性が高いことを、ここで指摘しておきたい。
詳しい説明は、また次回に。
米ドル/円の週足とドルインデックスの週足を比べると、ドルインデックスと大きく相違した時期(赤線で囲まれた部分)があることがわかる。
その背景と原因は、前回のコラムではっきりと指摘した(「米ドル全面安相場は幸福とともに消える!?90円割れ回避の米ドル/円は底打ちか?」参照)。
ご参考までに、仮に米ドルの全面リバウンドがあるとするなら、今回は、米ドル/円がドルインデックスと大きくかい離したり、相違したりはせず、ドルインデックスの値動きに追随してくる蓋然性が高いことを、ここで指摘しておきたい。
詳しい説明は、また次回に。
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