米ドル/円は早晩2015年高値を更新し、新たな円安時代へ突入か
第1四半期が終わったばかりだが、米ドル/円はすでに125円の大台をトライした。このままでは、早晩2015年高値を更新し、新たな円安時代への突入を告げるかと思われる。
(出所:TradingView)
何しろ、2011年の記録的円高から始まった円安のトレンドは、いったん2015年の125.86円をもって底打ちを果たしていたから、同レートのブレイクがあれば、円が一段と売られやすいというのは、自然な成り行きかと思われる。
先週(3月25日)、本コラムが指摘したように、年間平均変動幅で考えると、130円や132円といった上値ターゲットの提示自体、戯言ではなく、理論上の可能性がある。
125.86円を超える円安の進行があれば、円安ターゲットの修正も当然の成り行きなので、トレンド・フォローの視点からでいえば、むしろ必要不可欠なロジックであろう。
これからも大した調整なしで130円の節目をトライするかどうかは判断しにくい
半面、そのようなロジックが仮に有効であるとしても、唯一欠点がある。それはほかならぬ、一本調子の円安トレンドを想定しているところだ。
言ってみれば、2022年年初来安値113.47円から、大した調整なしで125円の節目のトライを果たしたが、これからも大した調整なしで130円の節目をトライするかどうかは判断しにくい。
(出所:TradingView)
まだ第1四半期が終わったばかりなので、仮に一本調子に円安が進む場合、夏場までに、もう130円か132円台のターゲットを達成できるから、円の独歩安自体は問題がないとしても、一直線の円安には、現在周知されているファンダメンタルズ以外の、何らかの新しい材料が必要かもしれない。
円安を加速させた材料として、日米金利差の拡大といった根本的な要素から、ミセス・ワタナベさんの逆張りが「踏み上げられた」といった観測まで、現時点のレートに基本的に織り込まれていると思う。円安のさらなる加速は、何らかの新しい材料がないと、想定されるほど容易ではないかもしれない。
なにしろ、目先、予測が円安一辺倒になっていることや、提示される円安ターゲットが競って大きな数字の方向へ移っていることは、円がすでに大幅に売られた後に流行ったもので、市場センチメントの偏りとも解釈される。
円安の急進は、円買い筋の損切りが続出したことも一因と思われる
ところで、日本の個人投資家(ミセス・ワタナベさん)の動向からでも、3月における大幅円安の背景を説明できる。
店頭FXの統計(FX会社が公表したデータからの推測)では、個人投資家が大きな円買い越しの状況だったことがわかるものもあり、ブルームバーグが3月28日(月)の記事で報道したように、東京金融取引所のFXデータを分析した結果、個人投資家の14通貨ペアに対する円の買い越し額が、3月第3週までで2580億円にも上ったことが判明している。これは2006年以降、最大とされる。
となると、3月28日(月)までの大きな円安トレンドの進行、また同日における急速かつ大幅な円売りは、日銀の連続指値オペ(円安容認と解釈される)が起因であったかもしれないが、市場構造上の視点では、円買いポジションの踏み上げ、すなわち円買い筋の損切りが続出したことが容易に推測されるし、その可能性は高いだろう。逆張りを好むミセス・ワタナベさん、今回は上手くいかなかったようだ。
(出所:TradingView)
ちなみに、これ以前の大型保ちあいの局面においては、ミセス・ワタナベさんの逆張りが成功していたようで、それが今回の慢心というか、値ごろ感による判断や行動を招いたようだ。
円買い筋の大規模な踏み上げがすでに確認され、また円安観測が一辺倒になっている目下、構造上、逆張りの円買いポジションは、大きく構築されにくいかと思う。
となると、仮に円安トレンド自体は変わらなくても、円売りのスピードが3月後半のように加速するとは限らないだろう。
言ってみれば、急速なトレンドの進行は、往々にして逆張り筋の大きな敗北と比例していた。よって、逆張り筋による値ごろ感の間違いが証明された以上、逆張りを正当化できる何らかの材料なしでは逆張り筋の再起につながりにくい。
逆張り筋の存在なしでは、トレンドが維持されても大きなモメンタムを維持できるとは限らない。
ユーロ/円さえ高値更新する状況で、円売り構造は安易に修正できない
とはいえ、円安トレンド自体は維持され、また安易な修正はなかろう。今晩(4月1日)の米雇用統計を含め、これからいろんな材料が出て変動幅を拡大できるとしても、円売りの方向を否定できないはずだ。
円の独歩安が、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)をもって証左された以上、モメンタムの低下があっても方向性は維持され、諸外貨のうち一番弱い存在という位置付けはしばらく変わりようがないとみる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
その証拠として、何よりユーロ/円の大幅切り返しと高値更新が挙げられ、また一番有力であろう。
利上げ展望が、主要外貨のうち一番弱かったユーロでさえ、対円の大幅高が実現できたから、円売りの構造は安易に修正できない。
逆張りではなく、あくまで順張りのスタンスで臨まないと、また火傷する恐れが大きいから、モメンタムはともかく、基本的にしばらく円売りしか仕掛けられないのも明らかだ。
この意味では、米ドル/円を含め、主要クロス円は揃ってもう一回、高値更新を図ることが想定されやすく、また規定路線と認識しても大した間違いではなかろう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
いつ達成されるか、また高値更新後の上昇余地がどれくらいあるかは、目先、不明瞭であっても、順張りの押し目買いが実行しやすく、また報われるだろう。安易な逆張りは、なお禁物であることを、再度強調しておきたい。
さらに、主要クロス円の中で、本来、ユーロ/円は比較的、弱い存在であるはずだが、目先までの市況から考えて、これからユーロ/円のリードもあり得る。
なにしろ、前述のように、ユーロは主要外貨のうち、利上げ展望が一番弱かった分、最近浮上したECB(欧州中央銀行)の利上げが話題になりやすく、取引の材料としても新鮮味があって、仕掛けられやすいのではないかと思う。
ユーロ/円のみではなく、その他の主要ユーロクロスの動向にも要注意だ。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 日足)
このあたりの説明はまた次回、市況はいかに。
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