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田向宏行
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エミン・ユルマズの「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」

【トルコリラ見通し】選挙までは大きく動かないが、
原油下落による経常収支の改善が下支えに。小売売上
高が物語るトルコのインフレは、公式発表の2倍に相当!?

2023年01月18日(水)09:34公開 (2023年01月18日(水)09:34更新)
エミン・ユルマズ

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トルコ失業率は10.2%。サービス業が堅調だが製造業の雇用が今後の懸念点に

 TUIK(トルコ統計局)は11月の雇用統計を発表しました。季節調整済みの失業率は10.2%になり、失業者は前月比で2万3000人増加しました。広義の失業率(仕事探しを諦めた労働者数などを含めた失業率)は20.8%になりました。

トルコ失業率
トルコ失業率

(出所:TUIK

 15歳~24歳までの若年層における失業率は前月比で2.6%減少し、17.8%に下がりました。サービス業における雇用が堅調である一方で、前回のコラムで書いたように鉱工業生産指数はパンデミック以降に初めて縮小したことを受け、今後、製造業における雇用が懸念点です。
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小売売上高は名目で125.4%増。これはトルコのインフレ率の真実を物語る

 また、TUIKは1月12日(木)に11月の小売売上高を発表しました。11月の小売売上高は前年同月比で12.1%増、前月比では1.5%増になりました。これらは定額で計算されインフレを取り除いた結果です。

トルコ小売売上高 前年同月比
トルコ小売売上高 前年同月比

(出所:TUIK

トルコ小売売上高 前月比
トルコ小売売上高 前月比

(出所:TUIK

インフレの影響を含む総売上高(名目)は前年同月比で125.4%増でした。名目で125%を超える小売売上高はトルコのインフレ率についての真実を物語っています。やはり2022年のCPI(消費者物価指数)上昇率はTUIKが発表しているように64.27%ではなく、その倍に相当するでしょう。

 実際に独立調査機関であるインフレ調査グループ(Enflasyon Arastirma Grubu, ENAG)は12月のトルコCPIは137.55%上昇と発表しています。

トルコリラ/円は米ドル/円に連動。米ドル/トルコリラは選挙までは大きく動かない可能性高い

 今週(1月16日~)のトルコリラは対米ドルでほとんど変わらず、米ドル/トルコリラは18.80リラ前後で推移していますが、対円で7.00円を割ってから6.80円前後に落ち着きました。

 依然としてトルコリラの対円での動きは米ドル/円の動きによって決まっています。米ドル/トルコリラはほとんど動いておらず、選挙まで大きく動かない可能性が高いと考えます。

米ドル/トルコリラ 日足
米ドル/トルコリラ 日足

(出所:TradingView

トルコリラ/円 日足
トルコリラ/円 日足

(出所:TradingView

トルコ財政収支、2022年全体で1694億ドルの赤字。経常収支は13カ月連続赤字に

 トルコの財政収支は12月に1083億リラの赤字でした。これを受け、2022年全体で1694億ドルの赤字になりました。

 TCMB(トルコ中央銀行)の発表によると11月の経常収支も36.7億ドルの赤字になりました。経常収支は13カ月連続で赤字となり、直近12カ月合計でトルコの経常赤字は450億ドルに達しました。

 2018年8月以来の赤字水準です。一方で観光シーズンの終了で11月の経常赤字が40億ドルになるとの事前予想が多かったので単月では予想より良い結果です。トルコの経常赤字の中身はエネルギーコストであり、エネルギーを取り除いた経常収支は11月に53億ドルの黒字になりました。

 昨年(2022年)秋以降に原油価格が下がってきていることがトルコの経常収支の改善につながる可能性があります。経常収支の改善はトルコリラの下支えになります。

トルコリラ/円 日足
トルコリラ/円 日足

(出所:TradingView

エブリシング・バブルの崩壊(エミン・ユルマズ著)
エブリシング・バブルの崩壊
エミン・ユルマズ

<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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