2023年大統領選挙の野党有力候補イマモール氏に禁錮刑と政治活動禁止の判決
12月14日(水)にトルコ最大都市イスタンブールの市長を務めるイマモール氏に公務員を侮辱した罪で禁錮刑と政治活動禁止の判決が言い渡されました。
イマモール市長は2019年に行われた市長選で与党AKP(公正発展党)を破り当選した人物です。この市長選挙はイマモール氏の当選が決まったら不正が行われたとして一度中止され、やり直し選挙が行われ、イマモール氏は票を伸ばしてもう一度当選したという波乱な展開でした。
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⇒注目は、やり直しのイスタンブール市長選!トルコリラが固定相場制に戻る可能性って?(2019年6月19日、エミン・ユルマズ)
エルドアンは野党の混乱をプロパガンダに使い、トルコ国民に訴える作戦か
イスタンブールはエルドアンの地元で、AKPがイスタンブールで負けたのは25年ぶりでした。選挙後にイマモール市長の人気がさらに高まり、来年(2023年)行われる大統領選挙で野党陣営のもっとも有力な候補者になりました。
エルドアンもイスタンブール市長を経て首相になり、その後大統領に上り詰めた人です。イマモール氏はエルドアンを破る可能性がもっとも高い人物とされていただけに、侮辱罪で選挙に出馬できなくなるのは野党にとってかなりの痛手になります。
トルコでは来年(2023年)の選挙に向けて最大野党のCHP(共和人民党)を筆頭に野党6党が同盟を組んでいます。「6人のテーブル」とも言われるこの同盟は同一候補で選挙に挑む予定ですが、イマモール氏が選挙に出られないとなると候補者選びはかなり混乱しそうです。
エルドアンは野党の混乱をプロパガンダに使い、トルコ国民にカオス(混沌)より安定を選ぶべきだと訴える作戦に出るでしょう。
トルコでは来年(2023年)に大統領選挙が行われる。エルドアンは野党の混乱をプロパガンダに使い、トルコ国民に混沌より安定を選ぶべきだと訴える作戦にでるだろう (C)Anadolu Agency/Getty Images
2023年のトルコリラ/円は、最悪の場合5円を割る可能性もあるか
今週(12月19日~)のトルコリラは対米ドルでほとんど変わらず、米ドル/トルコリラは18.60リラ前後で推移していますが、日銀の政策変更を受け円高が進行したことでトルコリラ/円は7.10円を割り込みました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
今年(2022年)のコラムはこちらで最後になりますので、来年(2023年)のトルコリラの動きについてもコメントしたいと思います。来年(2023年)のトルコリラの展望は大統領選挙の行方に大きく左右されるのは間違いないです。
政権交代が起きればトルコリラにとって最強のプラス材料となるでしょうが、政権交代は簡単に起こらないと覚悟した方がいいでしょう。残念ながら、現在のトルコはもはや民主国家ではなく、民主国家の形をしているだけです。
裁判からメディアまですべてエルドアンの支配下にあり、イマモール市長に言い渡された判決も茶番であることは誰でもわかっています。ここまでの権力を手にしたエルドアンは選挙で負けたとしても簡単に政権交代に応じるかどうかわかりません。
来年(2023年)はトルコリラのボラティリティが高まり、最悪の場合、トルコリラ/円が5円を割る可能性が高いと考えています。
(出所:TradingView)
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
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