第3四半期GDPは前期比で9四半期ぶりの縮小。ユーロ圏の景気減速が悪影響を与え始めた
TUIK(トルコ統計局)は7-9月期のGDP統計を発表しました。第3四半期のGDPは前年同期比で3.9%成長となりましたが、前期比では0.1%低下しました。実に9四半期ぶりのGDPの縮小です。
(出所:TUIK)
GDPが縮小に転じたのは外需の減少が主因ですが、特にトルコと経済関係が強いユーロ圏の景気減速がトルコに悪影響を与え始めました。景気が減速に転じたもうひとつの理由は建設セクターの不調です。建設セクターは前年同期比で14.1%の縮小を示しています。
やはり、第2四半期が堅調すぎたのはインフレ懸念による消費の先食いの影響があったと考えています。
CPIは月次ベースで47カ月連続上昇もPPIは大きく低下。PPI低下は今後、CPIが下がることを意味している
TUIKが発表したもうひとつ重要な経済指標はCPI(消費者物価指数)です。11月のCPIの上昇率は前年同月比で84.39%となりました。前月比では2.88%の上昇です。
(出所:TUIK)
(出所:TUIK)
月次ベースでインフレ率は47カ月連続の上昇ですが、PPI(生産者物価指数)の上昇率は0.74%となり、10月の7.83%から大きく下がっています。
(出所:TUIK)
PPIが低下に転じたことは今後CPIも下がることを意味しています。いずれにせよベース効果でインフレの数字が下がってきますが、トルコの景気減速もインフレ減速をもたらすでしょう。
エルドアン大統領は、仲の悪かったサウジアラビアやUAEとの外交関係回復に必死。これは選挙まで経済危機回避を狙ったものか
今週(12月5日~)のトルコリラは、対米ドルで先週(11月28日~)と変わらず、米ドル/トルコリラは18.60リラ前後で推移していますが、対円では7.20円まで下がってから再び7.35円程度まで戻っています。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
インフレの勢いが止まりそうなのはトルコリラにとって朗報ですが、10月にトルコの貿易収支が大幅に悪化しました。10月の貿易赤字は前年同月比で421.7%増加し、15.1億ドルから78.8億ドルに大幅に拡大しましたが、これはGDPの統計と同様にユーロ圏の不調による輸出の伸びの鈍化が原因です。
今年(2022年)は年初来で合計910億ドルの貿易赤字ですが、記録的な水準です。貿易赤字の拡大は本来、トルコリラの売り圧力を増加させ、対米ドル・対円でトルコリラの下落をもたらすものですが、エルドアン政権はなんとしても選挙まで為替の水準を維持したいとの考えです。
直近まで仲が悪かったサウジアラビアに加え、UAE(アラブ首長国連邦)とも外交関係を回復しようとしているのもそのためで、オイルマネーをトルコに集めようとしています。
先週(12月5日~)から、ソイル内務大臣を含むトルコの閣僚がUAEを訪問して、経済協力を要請しています。エルドアン大統領は経済危機を選挙まで回避しようと必死です。
サウジアラビアに加え、UAE(アラブ首長国連邦)とも外交関係を回復させようとしているエルドアン大統領。オイルマネーを呼び込み、選挙まで経済危機回避を狙ったものか (C)Anadolu Agency/Getty Images
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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