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西原宏一_メルマガ取材記事
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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

リスクオフの円高は続かず、売られすぎたユーロ/円の
切り返しが期待できそう。クレディ・スイスやシリコン
バレー銀行に、金融危機を引き起こすほどの力はない!

2023年03月17日(金)15:25公開 (2023年03月17日(金)15:25更新)
陳満咲杜

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SVBショックにクレディ・スイスショックで市場に激震!
金融危機に発展する可能性は?

SVB(米シリコンバレー銀行)ショックやらクレディ・スイスショックやら、先週金曜(3月10日)以降、市場に激震が走った

 株式市場は大きく調整し、為替市場においては円が買われ、ひと昔のようなリスクオフ相場の再来と「錯覚」するほど、市場センチメントが急速に悪化した。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(​出所:TradingView

NYダウ 日足
NYダウ 日足チャート

(​出所:TradingView

 もっとも、昨晩(3月16日)の米株市場の切り返しで、いくぶん緩和されているが、なお油断できない情勢だ。

 シリコンバレー銀行に関しては、規模はそれなりに大きかったが、ベンチャー企業ご用達の銀行であっただけに、一般人にはその名を知られていない。その上、同行の破綻は、確かに米金利急上昇を背景とした出来事であったが、報道された事実を見る限り、かなり特殊なケースだと思われる。

 言ってみれば、同行の経営陣が無能であった上に、かなり幼稚(増資の際、某大手投資銀行に利用されたというウワサ)だったので、本来は破綻自体を避けられたはずだった。

 そして、クレディ・スイス銀行に至っては、ドイツの某大手銀行と並んで、昔から欧州銀行業界の「劣等生」として知られてきた。不祥事を連発する上に、経営混乱や構造改革失敗の反面教師みたいな存在なので、騒ぎの対象になること自体はサプライズではなかった

 半面、「優等生」でなかっただけに、ずっと疑われてきた分、実は「隠蔽」もあまりできなかったと思う。言ってみれば、クレディ・スイス銀行は経営下手かもしれないが、2008年のリーマンブラザーズのように、複雑なデリバディブを大量に抱き込んでいるわけではなく、金融システム不安を連鎖させる存在ではない

 もっとも大きなポイントは、両行とも銀行で、投資銀行ではなかった点だ。やや過激な言い方をすれば、投資銀行でない限り、金融危機を引き起こすほどの「力」を持ち合わせていないとも言える。

 クレディ・スイス銀行は投資銀行の側面もあったが、基本は銀行である。銀行の基本は決済業務であるため、スイス当局は結局、同行に流動性を提供しており、想定されるほど同行は脆弱ではなく、破綻はないと思う。

 米国サイドでは、当局は迅速に預金保護措置を打ち出し、FRB(米連邦準備制度理事会)も金融機関が資金繰りに行き詰まることを危惧したことから、十分な資金流動性を提供している。日経新聞による報道では、米民間銀行のFRBからの借り入れが、3月15日(水)時点で1528憶ドル(≒20兆円)と急増し、リーマン危機を抜いて過去最高を記録した。

 そして、FRBは昨年(2022年)4月からQT(量的引き締め)を続けてきたが、今週(3月13日~)以降、急速に緩めだし、1年かけて減少したバランスシートの約半分を急回復させた模様だ。これは何よりも心強いことなので、昨晩(3月16日)の米株の切り返しも当然の成り行きだとみる。

 いろいろ言ってきたが、要するに、今回は巷が騒ぐほど、金融危機に発展してく可能性はないということだ。

 そもそも危機などは猫も杓子も予測できる性質のものではないから、巷で騒がれるほど、そう思う。

 さらに、冒頭で言ったように、まだ本格的な危機が始まっていないので、SNSにおいてSVBショックやらクレディ・スイスショックやらの「戒名」が氾濫している。常識から見ても、今回はやはり「騒ぎ」程度に留まり、本格的な危機には発展しないだろう。

「リスクオフの円買い」は続かず、米ドル/円は132円より上に
定着できるだろう

 となると、為替市場も「正常」な状況へ戻り、「リスクオフの円買い」は続かないだろう。米長期金利の変動とリンクした値動きなら、米ドル/円はしばらく132円の節目より上に定着できるとみる。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(​出所:TradingView

 米長期金利(米10年国債利回り)は、市場参加者の思惑で激しく動いてきた。今月(3月)初頭、4.09%を付けたばかりだったが、米早期利下げ観測の急浮上で、昨晩(3月16日)一時3.37%まで急落した。

米長期金利 日足
米長期金利 日足チャート

(​出所:TradingView

 米ドル/円がそれとリンクしたように、いったん131円台後半まで下落したのも自然ななりゆきと思われるかもしれないが、詳細を見ると、より複雑な事情があったと思う。

 なにしろ、一昨日(3月15日)は米長期金利も急落していた。しかし、同日にてドルインデックスは大きく切り返してきた。

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足チャート

(​出所:TradingView

 反対に、ユーロ/米ドルは大きく売られ、昨晩(3月16日)50bpsの利上げがあっても、目先まで切り返しは限定的であった。ゆえに、ユーロ/円は急落し、昨日(3月16日)切り返してきたものの、安値圏での推移に留まっている。

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足チャート

(​出所:TradingView

ユーロ/円 日足
ユーロ/円 日足チャート

(​出所:TradingView

 要するに、一見して米ドル全体が米金利と連動して動いていたが、実は米金利の急落につれ、リスクオフの動きがメインとなり、米ドル選好となった。一方、米ドル全体が買われたなか、対円のみ弱気変動となり、円が再び「リスクオフ通貨」になったようだ。

ユーロ/円は下がりすぎ。早晩持ち直してくるだろう

 こういった「ダブルパンチ」を受け、ユーロ/円は3月15日(水)、約145円の高値から139.43円まで急落、昨日(3月16日)さらに139.19円まで下落し、一時安値を更新していた。3月15日(水)の大陰線は、約5.5円の値幅を形成し、あの「黒田緩和修正ショック」、すなわち2022年12月20日(火)の大陰線以来の大きさとなった。

ユーロ/円 日足
ユーロ/円 日足チャート

(​出所:TradingView

 こうなると、円高の再来ではないかと思われても仕方がないが、結論から申し上げると、その可能性は低いと思う。言ってみれば、ユーロ/円は下がりすぎで、早晩持ち直してくると思う。

 肝心のところ、まず円は再度「リスクオフ通貨」になる可能性が低いから、1日2日の値動きをもって判断してはいけない。

 その上、ユーロと円の金利差から見ても、基本はユーロに有利なので、最近の金融不安がいったん収まりつつある以上、対円において売られすぎたユーロの切り返しを期待できるだろう。検証はまた次回、市況はいかに。

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