相場の真実は「為替は結局、米ドル次第」!
外貨のファンダメンタルズは、あくまで米ドルの二の次
前回コラムの最後で、「利下げ確実とされるユーロは、対米ドルではむしろ切り返しを果たしているように見える」と指摘していたが、市況はそのとおりの展開となった。
ユーロ/米ドルは、いったん1.09ドルの節目直前まで迫り、4月高値を突破した。
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⇒なぜ、当局は米ドル/円の160円乗せまで介入を実施しなかったのか? 円安のピークは過ぎた! 米ドル/円の高値再更新は難しく、日米の金利差次第では大反転も!(2024年5月10日、陳満咲杜)
ユーロの切り返しは米ドル一強の終焉を示唆するサインであったが、利下げ確実でも切り返しを果たすこと自体が、為替相場の真実を映し出している。
その真実こそ為替相場の本質を表すから、理解できない者はいずれ相場から退場させられる運命にある。
今朝(2024年5月17日)のXでの投稿がその真実であり、これからも為替市場の要となるはずだ。これを理解できれば、ユーロの切り返しを予想できたはずだ。
為替って結局ドル次第なので、諸外貨は総じて翻弄される宿命におる。 #fx
— 陳まさと@プライスアクション (@chinmasato) May 17, 2024
要するに、ユーロの利下げ云々がユーロ安に作用するには、あくまで米ドルが強い時期でなければならない。
米ドルが強い時期というのは、往々にして米金利上昇の時期である。米金利反落の時期となると、相場の関心はもっぱら米金利動向に集中するため、ユーロなど外貨の利下げが無視されがちだ。
換言すれば、外貨のファンダメンタルズは米ドルのファンメンタルズに比べ、あくまで二の次。だから、米金利動向が重要視される節目において、外貨の事情は往々して無視され、またトレードの材料として使えない場合が多い。
利下げ確実とされるユーロの切り返しについて、
テクニカルの視点でもしっかりした戻りが確認できる
最近の米金利の反落傾向は、鮮明だ。米10年物国債利回りが4月25日(木)の4.739%から、昨日(5月16日)はいったん4.311%まで急落した。米利下げ観測の浮上を反映した値動きだ。
(出所:TradingView)
ゆえに、利下げ確実とされるユーロでも対米ドルでの切り返しが鮮明となり、プライスアクション上のサインもユーロの戻りを示唆するものが多かった。
ユーロ/米ドルは4月9日(火)にて頭打ち(「スパイクハイ」のサインだった)となり、翌日(4月10日)の大陰線(長大線)もって下放れが決定し、4月16日(火)の1.06ドルの節目打診につながった。
(出所:TradingView)
同安値からの切り返しは、5月3日(金)にいったん上放れした(同日のローソク足自体が「スパイクハイ」のサインだった)が、戻りの基調を確認するには、なお不十分だった。
決定打となったのが5月9日(木)の陽線が示した「強気リバーサル」のサインだ。その後の上昇で、5月3日(金)~5月8日(木)で形成した「インサイド」の上放れを果たし、昨日(5月16日)の1.09の節目直前の打診、また4月9日(火)高値のいったん更新につながったわけだ。
そうなると、すぐに継続して上値トライになるとは限らないが、少なくともユーロ安の一服が確認され、裏返せば、米ドル高の終焉が示唆されたと理解すべきであろう。
換言すれば、利下げ確実とされるユーロの切り返しについて、テクニカルの視点でもしっかりした戻りが確認できた以上、足元では米ドル高の終焉を認識しなければならい時期である。
円が最弱であることに変わりはないが、円安のピークは過ぎた!
米ドル自体が強くなければ、最弱の円でも売られなくなる
円は最弱の外貨、という位置づけ自体は目先なお維持されていると思うが、円安のピークが過ぎた、という認識を念頭に入れるべきであろう。
何しろ、米ドル全体の頭打ち、また反落の基調が確認できれば、いくら最弱でも、円が米ドル全体の弱さと関係なく売られていくことはない。
円安自体、あくまで強い米ドルの反映や結果なので、日本の国力云々は大袈裟であり、歪んだ見方だ。
円安は日米金利差を背景とした円売り投機の結果であり、大前提として、やはり強い米ドルがあったからこそ成り立ったわけで、米ドル自体が強くなければ、最弱の円でも売られなくなるのは自明の理である。
改めて米ドル/円の日足を検証すると、昨日(5月16日)安値から大きく切り返してきたものの、まだ一昨日(5月15日)の大陰線を上回っていない。
(出所:TradingView)
同日(5月15日)の大陰線は、直前の日足に比べて変動幅が拡大していたから、「長大線」に該当し、性質上5月1日(水)の大陰線と同じだと理解している。
為替介入なしに米ドル/円が再度152円の節目を割り込んだ場合、2028年まで緩やかな円高局面が続くだろう
ちなみに、5月14日(火)にいったん156.76円まで切り返していたものの、4月29日(月)高値を起点とした全下落幅に対して、戻り自体が61.8%(フィボナッチ)以上には至らなかった。
ゆえに、円安の粘着性とか、円安が構造的だとか、いろんな見方があるが、5月15日(水)の大陰線を否定できない限り、米ドル/円は基本的にすでに頭打ちを果し、またこれから、じわじわ反落の余地を拡大していくだろう。
理想的な形は、日本当局の介入なしで再度152円の節目割れがみられる局面だ。この場合、米ドル/円の天井をほぼ確認でき、2011年安値を起点とした長期上昇波動の終焉を告げる市況となろう。そうなった場合は、2028年まで緩やかな円高局面が続くとみる。
(出所:TradingView)
厳密に言えば、円高ではなく、売られすぎた円安の修正となるが、一般の市場参加者の想定よりスケールが大きいはずだ。「円高の夜明け」となるのか。市況はいかに。
15:00執筆
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