昨日は各国のPMIが出る日であって、それが概ね予想を上回るものが多かった。つまり世界的に景況感はかなり回復しているのである。中でもサービス部門の景況感の高まりは、今後に来るインフレの前兆を思わせた。それが欧州や米国の金利上昇に弾みをかけて、それが株価の頭を抑えることとなった。エヌビディア好決算でのAI期待で盛り上がった分の株価も、吐き出しただけではおさまらず、かなりの下げを演じることとなった。
ドル金利の上昇にともなって、ドル相場も上昇。ユーロドルは緩やかに市価ドル高が進まなかったが、着実なドル高となった。ドル円は157円台まで上がって来たが、まだ達成感は出ていない。159円台くらいまでならばありうるだろうし、市場もさして驚かないだろう。
年内の利下げがあるのか、ないのか。昨日の1回だけの景況感の変化だけでは決定しきれない。パウエル議長の言うとおり、もっとデータがそろわないといけない。しかし現状では利下げをするためのデータ探しをしているようにも見える。再利上げはスコープに入っていないかのようだ。そこで注目しておくべき経済データの種類を確認しておく。それは経済活動、物価、雇用である。
経済活動はGDPで見ればよいだろう。これが2回連続でマイナスと出ればリセッションと言うことで景気後退を意味する。こうなればソフトランディングを目指すとして堂々と利下げをできるのだが、現状では四半期ごとのGDPがマイナス転する様子もない。少なくとも年内までにリセッションになるという傾向も見られない。
次に物価だが、これはCPIやPPIで測ることになる。これら物価指数はたいへん粘着性が強いものであり、これこそ1回の指標が好転したからといって額面通りには素直に受け取れないものだ。少なくともインフレターゲットである2.0%を一度もした回っていない昨今では、まずは1回でもした回ってからだとするのが正しいアプローチだろう。
今のところは利下げをしてインフレ再加速にでもなったら手がつけられなくなるリスクのほうが大きい。インフレに対して予防的な利上げはありうるが、予防的な利下げはありえないのである。
そして雇用についてだが、移民の増加の影響もあって、就業者数はなかなか減らない。一時期ほど求人数は減ってきたとはいうものの、サービス部門に限って言えば需要はなお旺盛で、平均時給も高いままだ。これでは賃金インフレがおさまる気配はなく、それが企業物価をさらに押し上げる要因にもなっている。
ようするに利下げに向かうにはかなりの高いハードルがあるわけで、これを年内に達成できる見通しは簡単には立たないというのが、実際のところではないだろうか。
日本時間 14時30分
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