■「波乱」どころか、「万丈」となった2010年の為替相場
今年も残りわずかとなっている。慣例として、来年の相場見通しを大筋で述べたいと思うが、その前に、まずは昨年末時点におけるこのコラムでの見通しを振り返ってみたい。
2009年12月24日のコラムにおいて、まず「2010年の為替相場はかなりの波乱がありそう」ということを強調し、「2009年と同じく、市場のコンセンサスが裏切られやすい」ことも指摘した(「2010年最大のイベントは米国の利上げ!米ドル/円の上値は重く、かなりの波乱も!!」を参照)。
結果としては、この2点はともに言い当てたが、ユーロ/米ドルをはじめ、値幅に関する予測は甘かった。「波乱」は予測しつつも、「万丈」とまでは言い切れなかったのだった。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
ただ、言い訳できるところも少しはあると思っている。
ユーロ/米ドルに関しては、昨年末時点で、ギリシャ危機が本格的な問題とはなっていなかったため、市場コンセンサス(主に、機関投資家の予測に基づく)は総じてユーロの緩やかな調整しか想定していなかった。
筆者は1.3200ドルまでの下落はあるだろうと予測していたが、当時、このようなターゲットはかなり過激なものに見えただろう。
日本では、確か、都銀の某アナリストを除いて、機関投資家のレポートを読む限り、誰もユーロの急落を予測していなかった。ちなみに、その某アナリストは1.3000ドルといったターゲットも提示していた。
その後の相場展開はみなさんもご存知のとおりで、ユーロ/米ドルは6月に1.1876ドルまで暴落した。しかし、市場コンセンサスがユーロのパリティ(1ユーロ=1ドル)割れもあるといった予測に傾くと、リバウンドに転じて、11月には1.4282ドルまで反発した。
今さらではあるが、「2010年は波乱の相場」という予測の恐ろしさを筆者自身もよくわかっていなかった。この点は反省している。
また、昨年末時点で書いた見通しで、重要なイベントとして「米国の利上げ」を取り上げた。
だが、フタを開けてみると、利上げどころか、米国は「QE2(追加の量的緩和)」を実施し、インフレではなく、デフレ退治に全力を挙げている。
ただ、この件に関しても言い訳をさせていただくと、当時は「米利上げあり」といった予測が圧倒的で、ロイターが今年2月に行った調査でも、利上げ予測が大半を占めていた。
■2011年の相場にも言える3つの特長とは?
以上、長々と昨年末時点での予測を振り返ってきたが、もちろん、言い訳をするために行ったのではない。来年の見通しを展開する前に、昨年の教訓を活かしたいためだ。
前例を踏まえ、2011年の相場について、少なくとも次の3つの特長が挙げられると思っている。
(1)2007~2008年の危機以降、マーケットのコンセンサスは常に裏切られてきたので、2011年もそうなる可能性が高い
(2)為替市場ではボラティリティー(変動幅)の拡大が続いており、2011年も「恐ろしいほど」の波乱に備えるべきだ
(3)ファンダメンタルズ面でのサプライズが出やすく、主要国の政策にかなり差異が出てくると読むべきだ
以上の点を踏まえ、来年の相場を予測していきたい。
■先入観を捨てない限り、来年の相場にはついていけない
まず、市場コンセンサスが気になるところだ。
今のところ、多くの金融機関が2011年の米ドル相場に明るい展望を描いているようだ。米国の景気回復が進み、米ドル高をもたらすというのが、その根拠の大半である。
だが、筆者の経験則から、オモテの理由はともかくとして、単に足元で米ドルが堅調に推移し、株高が進んでいるために米ドル高や株高といった予測が多いというのが本当のところではないだろうか?
誤解を恐れず申し上げると、基本的に、アナリストの職業病は「風見鶏」であることだ。マーケットのコンセンサスを、そのまま鵜呑みにしてはならない。
次に、欧州のソブリンリスク(国家に対する信用リスク)にしても、米国の量的緩和にしても、あらゆるファンダメンタルズの材料を過信してはならない。
「欧州のソブリンリスクが必ず拡大し、ユーロの崩壊は避けられない」とか、あるいは「米国の量的緩和が必ず継続されていく」といった先入観を捨てない限り、来年の相場にはついていけないだろう。
また、マクロの視点では、欧米株の上昇とは裏腹に、2007~2008年の危機を発生させた金融機関の問題が何も解決されていない以上、「偽りの復活」に終わる公算が大きい。
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