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■大荒れの展開となった先週の米ドル/円
米ドル/円は先週、76.25円という歴史的な円高水準まで急落した後、日本、米国、ECB(欧州中央銀行)、カナダによる協調介入が入り、82.00円目前まで急騰するという大荒れの展開となりました。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
3月17日(木)早朝、G7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)の臨時電話会合が開催され、同日の日本時間9時に野田財務相が協調介入合意を表明しました。
これと同時に日本の財務省・日銀による為替介入が開始され、米ドル/円は79円台から、一気に81円台半ばまで急騰したのです。
その後、欧米市場でも予告されたとおりに欧米各国中銀による介入が行われ、米ドル/円は81円台後半まで上昇しました。
■3月17日の急落相場が「陰の極」だったのでは?
しかし、米ドル/円は82.00円、ユーロ/円は115円台半ばを抜け切れず、短期筋のドルロング(米ドルの買い持ち)の投げとともに、米ドル/円はしだいに軟化しています。
結局、米ドル/円は80.60円まで押し戻されて、10年ぶりのG7による協調介入は終了しています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 4時間足)
今後の米ドル/円ですが、前回のコラムのとおり、実際にG7の協調介入が入ったため、長期にわたる円高相場が、3月17日(木)の「パニック相場」で終了した可能性が高まったと考えています(「米ドル/円が76.25円まで暴落!パニック相場の終息は当局の対応しだいか」を参照)。
2000年9月にG7による「ユーロ買い」の協調介入が行われた際も、翌10月に0.8225ドルというユーロ/米ドルの歴史的安値をつけた後、反騰しています。
これを参考に考えれば、長期間続いた円高相場は、3月17日(木)の急落相場が「陰の極」となり、終了した可能性が濃厚ではないでしょうか?
■2000年の協調介入後、ユーロ/米ドルは反騰を開始した
ただ、わずか1日の協調介入で、長期にわたる「米ドル安・円高」トレンドを反転させるのは至難の業でしょう。
協調介入が相場の流れを変えるきっかけになることは確かに多いのですが、短期で見ると、依然として円高リスクが残ると考えています。
ここで、2000年9月に行われたG7による「ユーロ買い」の協調介入を振り返ってみましょう。

ユーロ/米ドルは、協調介入が入った後、0.8576ドルから0.8992ドルまで急騰しました。
協調介入が入ったことで、多くの参加者が「ユーロ/米ドルはボトムアウトした」と考え、市場はしだいにユーロロング(ユーロの買い持ち)へと傾きます。
しかし、マーケットが期待した協調介入は行われず、ユーロ/米ドルはしだいに反発が弱くなり、協調介入が入った翌月の10月には、ユーロの史上最安値である0.8228ドルまで下落しています。
その後、ユーロ/米ドルは金利の追い風もあり、反発を開始。そして、長期にわたる「ユーロ高」の相場が始まるという流れになりました。
■中期的には、しだいに円安の流れになるのでは?
今回の米ドル/円についても、米ドルと円の金利差拡大というファクターがない環境下、わずか1日の協調介入だけで、マーケット参加者のセンチメントを変えられるとは思えず、時間がかかりそうです。
加えて、今回行われた協調介入自体、急激な「円高、株安」という「パニック相場」を沈静化させることが目的で、その「パニック相場」は収まっており、今後の「押し上げ介入」は期待できないと考えています。
まず、当面の米ドル/円の安値のメドは、マーケット参加者が日銀の防衛ラインと考えている80.00円。
上値は、本邦輸出企業の米ドル売り注文が集中している82円のレンジで推移する可能性が濃厚です。
しかし、この防衛ラインを意識するのは危険かもしれません。
2010年9月の「仙谷防衛ライン=82円(※)」を例に出すまでもなく、マーケットが防衛ラインと読んだラインはことごとく突破されることが多いので、要注意です。
(※編集部注:2010年9月15日に日本の当局による円売り介入が行われた際、当時の仙谷官房長官は会見で、82.00円が防衛ラインになったと発言している)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
短期的には、市場は米ドル/円の底値を模索しつつ、80~82円を中心としたレンジで当面は推移すると考えられます。
ただ、中期で見れば、しだいに円安の流れに変わっていくのではないでしょうか?
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