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■震災前のレベルをほぼ回復した米ドル/円
3月18日(金)に実施されたG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)による協調介入をきっかけに、円安がジワジワと進行しています。
3月29日(火)には、協調介入が行われた当日に突破できなかった82.00円を、あっさりとブレイクしました。
期末に向けての本邦勢による円売り需要も加わり、3月30日(水)に83円台を回復しており、このコラムを執筆している3月31日(木)11時時点では、一時83.22円まで上昇する場面も見られました。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
東北関東大震災発生時に到達した高値が83.30円ですので、米ドル/円は、震災前のレベルをほぼ回復したことになります。
もし、このレベルを上抜ければ、2011年に入って一度もブレイクできなかった84.00円を突破して、85.00円へとさらに上昇する可能性が高まります。
協調介入自体は3月18日(金)の1日のみですので、その後の上昇は、米ドルが自立反発してきたことになります。
■マーケット参加者の円に対する考え方はどう変化したか?
それでは、どのような要因で、マーケット参加者の円に対する考え方が変化してきたのかを探ってみましょう。
まず、震災時に円高要因として挙げられた「リパトリ(repatriation=資金の自国内への還流)」ですが、震災による保険金支払いのための円買いというフローが出るのは、少なくとも数カ月後です。このことが、マーケットに広く認識され始めました。
次に、被災地の復興の速さが海外メディアでも驚きの声とともに紹介され、日本の復活を海外勢も確信しているところなのですが、現在は、多くの工場が一時停止している状態です。よって、日本の輸出企業の「米ドル売り・円買い」需要は、当面減少すると予測されています。
さらに、欧米諸国がインフレを懸念して、出口戦略に向かっている中、「震災+福島原発問題」で利上げの予定がまったくない円は、売り圧力がかかりやすくなっています。
以上のことから、欧米の市場参加者が「リスクオフ・トレードとしてエントリーした米ドル/円のショート(売り持ち)」を買い戻しており、その動きが活発化して、83円台まで米ドルが上昇したという流れになったようです。
加えて、海外勢は東京の電力不足で経済が停滞することを懸念しています。
これらのことを受けて、徐々に円安が定着するという見方が増えているようです。
しかし、上記の材料だけでは、米ドル高が進んでも85~86円までの予想にとどまります。ヘッジファンドの友人も「2monthで85~86円のオプション」を物色しているといった状況。
現在の米ドル高の動きがメイントレンドとなるためには、もう1つ、ファンダメンタルズの変化が必要なようです。
■米ドル高の流れとアメリカの出口戦略
さて、前回のコラムでご紹介させていただいたように、2000年の「ユーロ買い」の協調介入時は、最終的にユーロ金利の変化という追い風がユーロ/米ドルの流れを一転させています(「米ドル/円は中期的に円安の流れへ。76.25円への急落が『陰の極』だった可能性」を参照)。
今回も、アメリカの出口戦略が明確になれば、米ドル/円の上昇に弾みがつくことになります。
この点においては、先週から、何人かのFRB(米連邦準備制度理事会)当局者が、国債買い入れプログラムについてコメントしています。
たとえば、セントルイス連銀のブラード総裁が3月29日(火)に、「景気改善の兆候によって、金融当局が国債購入の規模を縮小させる可能性がある」との認識を示しています。
同総裁は3月26日(土)にも、「当局は国債購入プログラムの早期終了を検討すべきだ」とコメントしています。
また、フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁も、「政策当局は近い将来、出口政策が必要になる」と発言しています。
ただ、もともとタカ派の人がタカ派のコメントをするのは当然であり、それに対してマーケットが反応するのは、納得できないものがあります。
ところが、アトランタ連銀のロックハート総裁、シカゴ連銀のエヴァンス総裁も意見を述べており、FRB当局者による量的緩和政策に関しての発言が多くなっているのは確かです。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
現在、マーケット参加者の多くが、米ドル/円に注目しています。
協調介入をきっかけとして「米ドル高・円安」の流れになっていますが、これがトレンドになるかどうか、アメリカの出口戦略の行方に注目です。
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