■米国債がAAAからAA+に格下げ
米国債がついにAAA(トリプルA)の格付けを失った。
米国時間の8月5日夜(日本時間の8月6日午前)、米国の格付け会社、S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)は米国債の格付けを最上級のAAA(トリプルA)から1段階下のAA+(ダブルAプラス)へ引き下げたと発表した。
また、中期的な格付け見通しは「ネガティブ(弱含み)」に据え置いた。つまり、今後さらに格下げされる可能性が高いとS&Pは発表している。
主要な格付け会社が米国債を最上位の格付けから格下げするのは史上初めての事態。
今回の格下げ前に米国財務省がS&Pのレポートに対して「2兆ドルもの計算間違いがある」と指摘するようなゴタゴタもあったようだが、それでも格下げは実行された。
■週明けの為替相場は波乱の展開か
8月2日、米国の債務上限引き上げ問題は期限ギリギリの土壇場で合意に達し、米国債のデフォルトは回避された。
しかし、S&Pは米国がAAAの格付けを維持するためには、「4兆ドルを目標とした長期的な財政赤字削減策が必要」と主張していたのに対し、合意に達した内容は「総額2兆4000億ドルの財政赤字削減」であり、S&Pの主張とは隔たりのある状態だった。
このような経緯があるため、米国債格下げの可能性はある程度は予想されていたことではある。ただ、為替市場をはじめとした金融市場がこれまでにどの程度それを織り込んでいたのかはわからない。
このところ波乱の相場展開が続いているが、少なくとも8月8日(月)の為替相場は荒れることを覚悟しておいた方がいいのではないだろうか。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
■米国債が格下げされると為替や株はどう動く?
なお、ザイFX!では陳満咲杜さんが米国債の格下げに関して、7月29日に以下の記事を公開している。
●陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」
→「米国債が『AAA』を失う未曾有の事態が起こっても米ドルが暴落しないとみる理由」
ここで陳さんは「米国が最高格付けを失ったことは先例がないだけに、これが起こると混乱を避けられないと思う」としている。
ただ、その一方、「『米国のソブリン格下げ=米ドル資産の暴落』といった発想は短絡過ぎ」とも指摘している。
そして、「米サイドにおける最悪の事態が出現したとしても、米国債にしても、米ドルにしても、言われるほどの暴落を演じない公算が高いとみる。そればかりか、逆に買われるのではと思われる節さえある」と述べている。
また、ザイ・オンラインでは広瀬隆雄さんが8月1日に以下の記事を公開している。
●広瀬隆雄の「世界投資へのパスポート」
→「大詰めの債務上限引き上げ問題。米国がAAAを失うと相場はどう動く?」
この記事では「米国債が『トリプルA』を失うことが資本市場に与える影響については、多くの市場関係者が『よく分からない』と困惑しています」と記されている。
また、豪州と日本がAAAを失った際の株価チャートが掲載されており、それほど相場が荒れていないことが示されているが、これだけをもって「『トリプルAのはく奪は問題ない』と断言することはできない」と広瀬さんは書いている。
(ザイFX!編集部・井口稔)
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