「もう一度、米ドル/円の月足を見てみますが、米ドル/円には約8~9年で高値をつけるサイクルがあるんです。
ここから考えると、次は2015~2016年に高値をつけそうだと言えます」
「また、エリオット波動のV波まで終わってトレンドが反転したとき、最低目標になると言われている水準があります。これはIV波の終わったところです。
米ドル/円でいうと、2007年6月の高値124円台ですね。ここが2015~2016年につける高値の目標となるでしょう」
■長期円安局面がやってきて、1ドル=360円を超えていく!?
40年にも渡る米ドル/円の長期円高局面がもう終わり、今度は長期円安局面がやってくるとみている宮田さん。それだけの長期間、円高だったのだから、円安局面もかなり長くなるとの見通しだ。
先ほど出てきた2015~2016年というのはあくまでその第一目標ということになる。
そして、宮田さんは戦前からの米ドル/円相場をすべてつなげた超長期チャートを示し、さらに壮大な話をしてくれた。
ちなみに戦前からの米ドル/円相場については、以前当コーナーでも取り上げたことがある。以下の記事もご参考に。
●「76.25円=ドル円の史上最安値はウソ!?(1) 1ドル=1円の日本はどんな時代?」
●「76.25円=ドル円の史上最安値はウソ!?(2) 日本でハイパーインフレが起きた理由」
「米ドル/円相場は1871年に1ドル=1円で始まりました。今年はそこから140周年となります。
ここにあえてエリオット波動を当てはめて考えてみました」
「1871年の1ドル=1円からはじまって、1897年に金本位制が開始されるまでがI波になります。そこから1931年に金輸出が再禁止されるまでがII波ですね。
そして、III波というのはもっとも長く力強くなるわけですが、戦後すぐの大幅な円安を経て、1ドル=360円の固定相場制となり、さらに1971年のニクソン・ショックで固定相場制が崩れるまでがIII波に当たります。
その後、1971年からは長期円高が続いたわけですが、これがIV波です。
1931年から1971年までが40年間の円安だったとすると、いわゆる『対等数値』と言いますが、1971年から2011年までがそれと同じ期間、40年間の円高ということになります。
そして、今後はV波に入るということになると、これから40年間の円安が続き、最後は1ドル=360円を超えていくという話になりますね。これじゃあ、海外旅行にも行けないぞということです」
この内容、さすがに最後のほうは、宮田さんも少し笑いながら話してくれて、ものすごく真剣に今後1ドル=360円を超えていくと考えているふうでもなかったが、今という時期はこれだけ壮大な転換点に当たる可能性あり、ということは改めてわかったのだった。
■「悪い円安」ではなく、デフレ脱却を期待
さて、最後に記者は1つ気になることがあった。
これから長期的な円安が現実になるシナリオといえば、それは日本政府の財政破綻がついにやってくることを意味しないか? ということである。
この点について、宮田さんはこんなふうに話していた。
「私はテクニカル・アナリストでそういった点については専門外ですが、国の借金が膨らめば不安にはなります。10年、20年のスパンで考えると、正直そんなこともあるかもわかりません。
ただ、少なくとも2015~2016年までの円安は『悪い円安』ではないと思います。それより期待したいのはデフレ脱却ですね。
先ほど申し上げたように、2015~2016年までに124円までの円安を私は想定しています。今から5割以上の円安です。
そうなるのなら、そのときは企業収益も上がっているでしょう。名目賃金が上がり、名目GDPも上がっているのではないでしょうか。
ここから5割以上の円安ということなら、どこかでデフレ脱却が起こってくるのだと思います。
また、対円以外ではすでに米ドル高が少し進んでいますが、今はこれがリスク回避の動きによる『悪い米ドル高』と言われていますね。
私は先に述べたように、ドルインデックスで示される米ドル全体についても、ここからは長期的な米ドル高への転換を想定しています。
けれど、『悪い米ドル高』だけでは、長期的に米ドル高になっていくには無理があるでしょう。だから、今の『悪い米ドル高』はどこかの地点で『良い米ドル高』に変化していくのだろうと考えています」

エリオット波動理論とサイクル論に基づいた宮田さんの見通しは、今は為替相場の歴史的な転換点に当たっており、米ドルは長期米ドル安基調から長期米ドル高基調へ転換、円は長期円高基調から長期円安基調へ転換するだろうというものだった。
そして、それはどうも世界経済が明るい方向へ進んでいくことを示唆しているようである。
相場格言に「夜明け前が一番暗い」というのがあるが、もしかしたら、今のマーケットはまさにそういう状態にあるのかもしれない。
(取材・文/ザイFX!編集部・井口稔 撮影/和田佳久)
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