■ドル資金の供給拡大がなくても、米ドル安になっていた!
前回のコラムで、ユーロ安は一直線ではなく、段階を踏んで進行するとの見方を示した。そして、円を除くその他の主要通貨についても、基本的にはユーロの動きに追随するとの見通しを解説させていただいた(「ユーロ/ドルはまだ高い! なぜユーロ安はEU危機の深刻さに比例しないのか?」を参照)。
結果的に筆者の見方どおりになったが、11月30日(水)に日米欧の5中銀が協調してドル資金の供給を拡大すると発表したことで、ここまでの米ドル高の調整といった様相が、より鮮明になっている。
ただ、このドル資金の供給拡大という材料がなかったとしても、ユーロなどが対米ドルで反発したであろうということを強調しておきたい。
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日米欧中銀の協調行動が発表される前の段階においても、ユーロは1.3442ドル、英ポンドは1.5656ドル、豪ドルにいたっては1.0086ドルまで、対米ドルで買われていた。
このことに着目すれば、筆者の「特定の方向にポジションが片寄りすぎると、悪材料にしろ、好材料にしろ、ポジション整理のきっかけとなる場合が多い」という見方が正しいことをおわかりいただけるだろう。
■日米欧中銀の行動は、欧州を助ける以外の意味合いも
ところで、前回のコラムで「『大物』のスタンス変更もシグナルの1つ」と申し上げたが、決してプロの見方をバカにするものではない。むしろ、まったく反対の意味合いである(「ユーロ/ドルはまだ高い! なぜユーロ安はEU危機の深刻さに比例しないのか?」を参照)。
金融機関であれ、専門家と称される人々であれ、プロフェッショナルであるほど市場動向に敏感であるため、先走りになりがちなのである。
したがって、彼らから「一歩遅れ」の距離感を持って市況を丹念にフォローして行けば、「正解」となることが多い。今回もしかりである。
さて、これからどうなるのだろうか? 結論から申し上げると、ドル資金の流動性拡大は間違いなくリスクオフムードを和らげているが、根本的な解決策とならず、欧州のソブリン危機は簡単には収束しないだろう。
現在の欧州は、財政問題や世界的な景気の動脈硬化によって心筋梗塞を引き起こす恐れがあると診断された「病人」のようである。
ドル資金の供給拡大はコレステロール値を下げる薬を投入したようなもので、一時しのぎに過ぎない。
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