話はやや脱線したが、要するに、これからは基本的に「悪い米ドル高」が続き、「良くなるだろう」といった幻想をあまりもたないほうがよいということだ。
もちろん、だからと言って、短期スパンでは「リスクオン」の動きがすぐに消滅するとは想定していない。
12月2日(金)の米国雇用統計、12月9日(木)のEU(欧州連合)首脳会議の結果・動向しだいでは、サプライズ的な材料が出てもおかしくはない。ユーロなどが、さらに買われる可能性もあるだろう。
しかし、そのようなことがあったとしても「回光返照」(※)に過ぎず、来年に向け、さらなる波乱万丈な展開に直面すると筆者は想定している。
ちなみに、来週のEU首脳会議に対する市場のセンチメントはかなり悲観的で、EU解体の可能性を指摘する声も多く聞かれる。
しかし、欧州のソブリン危機が広く知れ渡った以上、ユーロの崩壊があるとしても、年内といった見方は時期尚早であろう。前述のような「プロフェッショナルの先走り」がまたあっても、おかしくない。
(※編集部注:「回光返照」とは、日没前に夕日の照り返しで一時的に空が明るくなること。そこから転じて、亡びる前に一時的に勢いを取り戻すことをいう)
■円高はこれからピークへと向かう可能性が高い
さて、日本の場合は、せっかく11月に月間ベースで過去最大級の9兆916億円もの為替介入を行ったものの、日銀がドル資金供給オペに参加したことで、それがパーになってしまいそうだ。
日銀が日本政府から大きな圧力を受けていることは容易に想定されるが、白川総裁が繰り返し欧州のソブリン危機のリスクを強調している以上、欧米に協力せざるを得ない。これでは、過去最大級とされる為替介入でさえムダになってしまう。
本来ならば、欧州支援の条件として、対ユーロでの円売り介入を容認してもらうのがもっとも効果的であるが、米国が難色を示しているため、日本政府独自での欧州に対する資金援助ができずにいる。
「円高阻止」と言って単独介入を繰り返したものの、効果が鮮明でない上に、ドル資金供給という米ドル安の効果をもたらすような、まったく反対の行動を行っていては、円高阻止の行動は中途半端に終わってしまう。
日銀の苦悩は続くだろう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
ドル資金の供給拡大でリスクオンになるものの、ドル資金供給自体は米ドル安をもたらす効果がある。そして今後、リスクオフに戻れば円は再び買われる。
どちらに転んでも円高傾向は不変であり、ユーロ/円をはじめ、円高はこれからピークへと向かう可能性が高いと思う。
ただし、前述したユーロ/米ドルと同様に、短期スパンにおいてはユーロ安にすぐに復帰するとは限らないので、この点は留意しておきたい。
相場の神様は意地悪だ。たとえ読みが正しかったとしても、そう簡単に儲けさせてくれないし、まして、これからはいっそう先が読めなくなる公算が高い。
リスクコントロールをしっかりと行いたい!
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