2011年4月高値の85.52円はもちろん、2010年5月高値の94.98円を起点とした全下落幅の61.8%戻しである87.57円も、射程に入るだろう。
当面は、メインストラテジーの押し目買いを継続していきたいと思っている。
そして、米ドル/円だけでなく、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)についても、強気見通しを堅持しておきたい。
実際のところ、前回のコラムで指摘したとおりに、クロス円は高値トライを続けていて、英ポンド/円は高値を更新している。
ただし、「スパン」としては、明らかに米ドル/円よりも短いとみている。米ドルの全面高で円以外の外貨が押し下げられているため、クロス円は、米ドル/円ほどブル基調にはならないだろう。
とはいえ、短期スパンに限って言えば、米ドル/円がぐんぐん上がっていくに連れて、クロス円も高値を更新し続けるであろう。それができないとなれば、外貨の暴落のほか考えられない。
■英ポンド/米ドルの底割れ回避と反発は予測できた
ところで、クロス円自体の相場の内部構造を分析しておくと、じつは、ドルストレートを把握できる部分は多い。
主要なクロス円のうち、いち早く高値を更新した英ポンド/円のチャートを見てみよう。
(出所:米国FXCM)
上のチャートは、筆者が3月7日(水)に作成したものである。
1月13日(金)安値を起点とした英ポンド/円の上昇変動は5波構造で、3月6日(火)安値はあくまで同序列の4波調整に過ぎず、これから5波上昇で高値更新していくといったシナリオが示されていた。
ここでは、アプローチ手法である「エリオット波動論」の説明は省かせていただくが、要するに、英ポンド/円の内部構造がなお高値更新の蓋然性を示している以上、英ポンド/米ドルの早期の底割れもないといった見通しを立てることができる。
(出所:米国FXCM)
実際のところ、そのとおりの展開となった。一見すると、英ポンド/米ドルは弱気パターンを重ねていて、上のチャートのように「ダブル三尊型」も暗示されていたが、節目の1.5600ドルを死守できたことが大きかった。現執筆時点でも、反発を見せている。
英ポンド/円の高値更新の前提条件として、米ドル/円の上昇以外に、英ポンド/米ドルの底割れの回避も必須であった。よって、性急な英ポンド/米ドルの売りは避けられたと言える。
■短期では、性急なユーロ売りや豪ドル売りは手控えるべき
中長期スパンにおける見通しとして、筆者は、米ドル高が続くというメインシナリオを想定している。したがって、ユーロなどの外貨は底割れし、安値更新していくだろう。
ただし、ユーロ/円、豪ドル/円の高値更新が実現されていないうちは、急落は避けられる公算が大きい。
一方、同じロジックを用いると、まだ高値を更新していないユーロ/円、豪ドル/円は、これから高値を更新する可能性が高い。目先で米ドル/円に調整の兆しが見られたことも相まって、短期スパンにおいては、ユーロ/米ドル、豪ドル/米ドルは切り返しをしやすいと思っている。
ゆえに、短期トレードにおいて、性急なユーロ売りや豪ドル売りは手控えるべきだと見ているのだ。
以上、クロス通貨ペアから相場の全体像を把握するという「奥の手」もあることを、お示しした。読者の皆さまも、利用されてみてはいかがだろうか。
なお、クロス通貨ペアの由来や基本構造がわからなければ、このようなロジックは理解しにくいだろう。その基礎知識については、筆者のブログなどを参考していただければと思う。
米ドル高の蓋然性について、米国の「QE3」実施の有無では、切り返しを語ることはできない。筆者は「QE3」はないとみているが、もし行われるとしても、そのインパクトはかなり限定されるだろう。米ドル高のトレンドが継続する可能性は高いとみている。
この意味では、むしろ「QE3」があれば、買い遅れたロング筋にとって絶好の押し目の好機となり得る。彼らから歓迎されるであろう。
このあたりの話は、また次回へ。
(2012年3月16日 13:15執筆)
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