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西原宏一_メルマガ取材記事
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ドル・円・ユーロの明日はどっちだ!?

ソシエテ ジェネラル島本幸治さんに聞く(2)
ユーロ圏全体の財政は実はあまり悪くない

2012年06月08日(金)12:21公開 (2012年06月08日(金)12:21更新)
ザイFX!編集部

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「ソシエテ ジェネラル島本幸治さんに聞く(1) ギリシャがユーロを離脱する確率は何%?」からつづく)

■急進左派連合の過激発言は額面どおりには受け取れない

 島本さんは、急進左派連合・ツィプラス党首の過激発言を「額面どおりに受け取ってはいけない」とも話す。

 「ツィプラス党首が過激な発言をするのは人気取りのためというところがあり、また、ドイツなどから好条件を引き出すための駆け引きという側面もあると思います。

政治家が選挙前と選挙後でコロッと態度を変えるのはよくあること。選挙前は言った者勝ちで、選挙後は責任が出てきますからね。

 だから、ギリシャの再選挙でどの党が勝っても同じことでしょう。日本だって、自民党から民主党に政権交代したからといって、そんなに大きく変わりましたか?

 結局、ギリシャは選挙結果がどうなろうと、ユーロ離脱という非現実的な選択肢をとることはなく、6月末のギリシャ国債償還直前には、現実的な妥協点を見いだそうとする動きになってくると思いますよ」

■急進左派連合・ツィプラス党首の考えは意外と常識的

 では、その現実的な妥協点とはどのようなことか?

 「ツィプラス党首はノーネクタイの若造で、そんな彼がテレビに映って過激なことを言っているので、『ああ、ギリシャってわがままだな、成熟してないな』などと思われがちです」

  「けれど、よく聞いてみると、彼は『速すぎる財政赤字削減はやめよう。そして、ユーロに残ることは大前提』という言い方を本当はしているんです。

 過激な発言は本心ではなく、先ほど言ったとおり、好条件を引き出すための一種のブラフと言っていいでしょう。

 要は財政赤字削減が急激すぎるので、現実的なテンポにしたいという話なんです。ギリシャ問題が起こってから、財政赤字削減が金科玉条のようになり、その度合いが激しすぎた面があったと私は思います。

 経済学って何が正しいか、わからないですから。日本でも財政赤字削減を重視しすぎると景気がすぐ悪化するようなことがあり、ある程度財政出動しながら、景気を立て直してきたという流れがありました。

 だから、『財政赤字削減のテンポを現実的なものにしたい』というツィプラス党首の考えは意外と常識的だと思うんですよ。

 そして、これはフランスのオランド新大統領も同様な主張をしています。さらに同じような議論がギリシャ、フランスだけでなく、欧州全体に広まりつつあるのです」

■なぜ、スペインは「かわいそう」なのか?

 さて、最近はギリシャだけでなく、マーケットの関心はスペインにも向かっている。大手銀行・バンキアの問題などがあり、スペイン国債の価格が下落(利回りは上昇)し、“スペイン危機”が叫ばれているのだ。

 そんなスペインを「かわいそう」と島本さんは表現する。

 「まず、ECB(欧州中央銀行)はLTRO(3年物資金供給オペ)などで十分流動性を供給しているので、欧州の銀行の資金調達は安定していますし、マーケットのボラティリティ(変動性)も安定しています。

 ただ、マーケットは常に新しいテーマを追い求めており、スペインがその新たなテーマになってしまったんですね。そしてそれは、スペイン当局が『まじめだったから』と言えます。

スペイン当局は昔から厳格で、財政赤字削減もきっちりやる、金融機関の監督もきっちりやるんです。その結果、金融機関の資本が足りないんだったら、公的資金を注入しますよ、となっているわけです。

 全体的にのんびりとした大陸欧州の中にあって、スペインはややアングロサクソン的なところがあります。

 競争政策をとった結果、不動産バブルが発生し、その反動で今度は急進的な財政緊縮をやったら、それが裏目に出たりといった感じで、『かわいそう』なところがあると思うんです。

 また、スペインは失業率がすごく高いと言われていますが、それは構造改革を行って、労働市場で規制緩和を進めたからなんです。失業率が高い反面、企業が強くなっている面もあるんですよ」

  「バンキアへの公的資金注入のスキームもよく考えられたものになっていて、『このスキームはいいから、もっと資金を入れよう』ということになったのに、急に注入する金額が増えたことに対して、マーケットは疑心暗鬼になっているんですね。

 でも、スペインは処理を早く進めているので、おそらく今後はそれほど問題にはならないと私はみています。そして、処理が急進的な分、スペインは欧州全体の先行指標となってくるのではないでしょうか」

 スペインがそれほど心配ないとすれば、他の国はどうなのか?

 ユーロ圏で財政懸念があるとされる国々はPIIGSなどと呼ばれてきた。ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字をとった造語だ。

 では、島本さんからみた、PIIGSで危ない国とは?

■スペインとイタリアを比べたら、イタリアの方が危ない

 「圧倒的に危ないのはギリシャ。これはもう別格です。

2番手はその時々のテーマによって変わってくるんですね。今はスペインが騒がれていますが、過去にはアイルランドもイタリアもポルトガルも騒がれた時期がありました。

 私はスペインとイタリアを比べたら、イタリアの方が危ないと思います。シンプルな切り口になりますが、結局大事なのはまじめかどうかということ。別の言い方をすれば、生産性が高いかどうか、さらに別の言い方をすれば、しっかりとした輸出産業があるかどうかです。

 経済には自律調整のメカニズムがあります。『景気が悪化して通貨が下落すれば、今度は輸出競争力が高まって景気が良くなる』というようにです。

 「でも、しっかりした輸出産業のない国は通貨安のメリットをあまり享受できません。その点、ドイツはもちろん、スペインもしっかりした輸出産業があるので、ユーロが安くなれば、輸出産業が儲かって、プラスの面が出てきます。

 でも、イタリアはそうではないんです。イタリアはGDP比での政府債務残高も大きいですしね」

■ユーロ圏全体の財政状態は実はあまり悪くない

 島本さんはユーロ圏の財政状態は全体として見れば、実はあまり悪くないと話す。ユーロ危機を考える上で、これも大きなポイントだ。

「政府債務残高のGDP比ですが、日本は200%を超えています。けれど、ユーロ圏全体で見ると、これは100%も超えていません」

(出所:OECD、2011年12月)

 また、財政赤字のGDP比は米国や日本は10%弱ですが、ユーロ圏全体は4%程度といったところです」

(出所:OECD、2012年3月)

 つまり、GDP比で見たとき、借金の全体(政府債務残高)を見ても、毎年の借金(財政収支)を見ても、ユーロ圏は日本や米国より、はるかに健全ということなのだ。

 なのになぜ、ユーロ圏に対する危機が叫ばれ、これほどまでに揺れているのか?

 「それは全体としては悪くないけれど、デコボコがあるからです。ユーロ圏には、ものすごくいいドイツもあれば、ものすごく悪いギリシャもある」

(出所:OECD、2011年12月)

(出所:OECD、2012年3月)

 「だから、ユーロ圏全体で財政同盟を作り、さらには一歩進んで財政統合を行えば問題はありません。財政同盟というのはお互いの国が財政を助け合いましょうという状態、財政統合は財政を一本化してしまいましょうという状態です。

 現在はまだ、そこへ至る前々々段階ぐらい。そして、財政同盟→財政統合へ至る大きな一里塚となるのがユーロ圏全体を1つの国とみなしてユーロ共同債を発行することです。

 これが実現できるかどうかが今後の大きなカギになるでしょう」

■ユーロ共同債実現に向けて、ドイツ総選挙に注目

 今はギリシャ、さらにはスペイン、イタリアなどの国債が売られる一方、財政が健全なドイツの国債は非常に買われている。そして、もしも、ユーロ共同債が出れば、ドイツ国債ほどではないが、日本国債や米国債よりも健全なソブリン債(※)が出現することになる。

 「今でも、ユーロ圏は全体として見れば、財政状態は悪くないわけですから、ユーロ共同債を出してしまえば、大方の問題は解決するはずなんです。

 ただ、これを実行するのは政治的には非常に難しい

(※編集部注:「ソブリン債」とは、各国の政府や政府機関が発行する債券のこと)

  「『どうせ働かないギリシャ人と財政統合する方向へ持っていくことはできない』というのがドイツのメルケル首相の立場。

 そして、政治家というのはいったんそのように言ったら、なかなか立場を変えられないものです。立場を変えると、今まで支持してくれた国民から支持を得られなくなってしまいますからね。

 でも、ドイツでも野党のSPD(ドイツ社会民主党)などは、『ユーロ共同債を出すべきだ、財政統合すべきだ』という主張をしていて、それなりに支持を集めているんですよ。

 来年、2013年1月にはドイツで総選挙があります。そうすると今年、2012年のフランスと合わせ、ユーロ圏中核国の新しい政治体制ができあがります。ユーロ共同債実現へ向けて、これが今後の大きな注目点になるでしょう」

「ソシエテ ジェネラル島本幸治さんに聞く(3) ユーロはジリ安が続くが、暴落はない」へつづく)

(取材・文/ザイFX!編集部・井口稔 撮影/和田佳久)

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