当事者ではなければ、わからない点も多いが、しかし、正常なロジックにより、少なくとも以下の2点を考えられるだろう。
(1)ユーロ存続の最大受益者はドイツ
(2)EU首脳が今回も無為無策のままでは、為政者として問題
ゆえに、前述の見方を容易にとることができ、昨日(6月28日)まで市場センチメントが行き過ぎていたことを悟れたのだ。
一般論として、マスコミを含め、「庶民」たちは政治家の言動に翻弄されがちだ。昨日(6月28日)までの市場センチメント悪化は、やはり、メルケル独首相の話に煽られた側面が大きいと思う。
■EU共同債が発行されてもメルケルは生きているだろう
しかし、日本の例から見ても、為政者の話がどれだけ信用できるかわからないことは一目瞭然だ。
近年珍しい長期政権を樹立したあの小泉内閣でさえ、年金改革にあたって「100年安心」の案を作ったと言ったばかりではないか。
これからドイツがEU共同債発行に同意するかどうかはわからないが、1つ断定できるのは、仮にEU共同債が発行されたとしても、メルケル独首相(そのとき、首相ではない可能性もあるが)はちゃんと生きているに違いない!ということだ。
要するに、市場センチメントが過度の悲観論に傾いていたから、今はその反動が出ている。猫も杓子もがメルケル独首相の言葉を脳裏に焼きつけ、EUサミットを馬鹿にしているから、その反動も大きいわけだ。
より重要なのは、そもそもリスクオフの動きがこれからも続くには限界があるということだ。
確かに今回のEUサミットは重要だ。しかし、先のギリシャ再選挙に比べ、どちらかがより緊迫していて、よりリスクが高いかは言うまでもなかろう。
しかし、ユーロ/米ドルの値動きを見ると、市場の反応は違っていることがわかる。
■リスクオン/オフによって相場は決定されている
ユーロ/米ドルは6月1日(金)に安値をつけてから実は反転していた。あんなにユーロ破壊だ、ギリシャ離脱だと騒がれる中、ユーロが下落ではなく、上昇してきたことは、まさにリスクオフの限界を示していたというほかあるまい。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
対照的に、今のスペイン銀行危機にしても、EUサミットにしても、仮にうまくいかなかったとして、リスクオフの動きがギリシャ再選挙時よりも広がっていくにはやはり不自然で、おのずと限界があるだろう。
この意味では、6月18日(月)高値からの下落はテクニカルの視点ではスピード調整に過ぎないところだ。市場関係者の多くは問題を過大に解釈したわけで、その修正はいずれ起こるものである。
詰まるところ、一見して材料によってマーケットは激しく上下しているように見えるが、本質的にはやはり、リスクオン/オフによって相場が決定されていると思う。
この意味では米国債利回り、ドイツ国債利回りを含め、リスクオン/オフを測るツールとして、為替市場以外の指標を見なければならない。また、前回示したVIX指数も重要だ。このあたりの話はまた次回、詳説したいと思う。
最後に、米ドル/円に関しては、本日(6月29日)午前中にツイッターに書き込んだつぶやきをもって説明したいと思う。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
このつぶやきはEUサミットの材料が出る前の時点であることにご注意。
半年後、我々はEUの混乱に感謝するだろう。なぜなら、EU首脳優柔不断なしでは、今のように80円以下においてのんびりドルを買える環境はないかもしれない。
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