■キプロスショックが沈静化した2つの理由
みなさん、こんにちは。
週明け3月18日(月)のマーケットを震撼させたキプロスショックですが、事態はいったん、収束しました。
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
欧州株やユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)の下落を鎮静化させたきっかけは、以下の2点です。
(1)ECB(欧州中央銀行)がキプロスに流動性を供給する方針を表明したこと
(2)ロシアが支援する可能性も出てきたこと
以上のことから、キプロスは救済をめぐる交渉の時間を確保しました。
キプロスは、ロシアからのマネーが多く、仮にキプロスの金融システムが倒れても、他の欧州周辺国への影響が少なく、ユーロシステムへの影響は限定的。
今回の件は、ドイツが税金を使ってまで、ロシアの預金を救済するということが問題になったのでしょう。
ただ、こうしたユーロ圏の混乱を見て、ユーロへの投資を控える動きも出るでしょうから、中期でのユーロ安・米ドル高の流れは継続すると見ています。
多くの投資家は、キプロス関連の悪材料にも関わらず、米国株と日経平均が依然として底堅く推移しているほうに注目しています。
■円安相場に備えてオプションを再構築
キプロスショックで週明け3月18日(月)の米ドル/円は、一時93.45円まで急落しました。
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
前コラムで取り上げたとおり、3月に入り、ヘッジファンドの一部が円プット(※)の利益確定売りを持ち込み、オプション相場では調整が始まっていたのですが、キプロスショックで一気にスポット(※)での調整も進んだ展開となりました。
(※編集部注:「円プット」は円を売る権利のこと。「スポット」とは「直物」とも呼ばれるもの。「スポット・レート」はFXのレートとだいたい同じ)
【参考記事】
●ドル/円の100円到達は時間がかかりそう。その背景にあるヘッジファンドの行動とは?(2013年3月14日、西原宏一)
米ドル/円は、高値の96.71円から93.45円まで下落しました。

(リアルタイムチャートはこちら →FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
高値から3.26円急落したことで、米ドル/円は時間よりも値幅で調整が一気に進行したわけです。
一気に円高が進んだため、ヘッジファンドは事前に仕込んでいたドルプット・円コール(※)を利益確定し、今度は再度、円安方向へのポジションを構築中。
キプロスショックにより、調整を終了した米ドル/円は上昇を再開しました。
3月20日(水)には、一時96円台を回復しています。
(※編集部注:「ドルプット」は米ドルを売る権利、「円コール」は円を買う権利のこと)

(リアルタイムチャートはこちら →FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
さすがに96円台は上げ渋り、本稿執筆時点では95円台後半で推移していますが、今回のキプロスショックでも底堅さを見せた米ドル/円は、93~94円台が極めて底堅くなったと言えるでしょう。
■日銀総裁、副総裁の就任会見後は事実売り?
今週(3月18日~)の注目は、本日、午後6時に予定されている、黒田東彦日銀総裁と岩田規久男、中曽宏両副総裁の就任会見です。
海外勢を中心に、日銀新体制への期待がかなり高まっており、彼らのサプライズを誘うカードは少なくなっているため、会見後、短期筋がsell the fact(事実売り)で利益確定の米ドル売りを持ち込む可能性もあります。
ただ、前述のようにキプロスショックが期せずして米ドル/円の下値を確認した展開となっており、米ドル/円の下落幅は限定的でしょう。
オプション市場では、ヘッジファンドが再び円プットのオプションを物色し始めており、米ドル/円は、3ケタに向け上値を切り上げていく可能性が濃厚。
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
レジスタンスである97円の壁を超えるのはちょっと時間がかかるのでしょうが、調整を終え、上昇余地が再び拡大した米ドル/円に注目です。
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