安倍政権誕生から、黒田日銀総裁の「異次元の金融緩和」政策で一気に進んだ円安も5月末でその流れはいったん途切れた。今後、円安の大きな波は、また来るのか?
金融マンたちの投票で決まる大手経済新聞のアナリストランキング1位の常連、テクニカル分析のプロである大和証券・木野内栄治さんを直撃した!
■今年8月まで新たな金融政策は出てこない?
5月末発売の『ザイFX! THE MOOK』に登場し、為替相場が一気に円安に進んでいた5月初旬時点で、「7月の参院選へ向けて円高の流れに」と予想していた木野内さん。
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【参考記事】
●アベノミクスで儲かっている人は77%!米ドル/円は年内110円の予想が多数派
木野内さんの予想どおり、その後、円安への流れがいったん途切れ、円高方向に。では、今後の動きはどう見ている?
「円安の行方ですが、足もとは微妙ですね。少なくとも8月まで、日本サイドからの円安材料は出てこなさそうです。6月中旬に注目された日本銀行の金融政策決定会合ですが、黒田総裁は、新たな金融政策の導入を見送りました。
次の日銀会合は、7月10日(水)、11日(木)ですが、参議院選挙はおそらく7月21日(日)です(※)。官僚出身の黒田日銀総裁ですから、『選挙10日前に新たな金融政策を発表するのは、あまりに政治的すぎる』と遠慮するでしょう。少なくとも8月まで新たな政策の導入はなさそうです」
アベノミクス期待で始まり、黒田バズーカで吹き上げた円安だが、第三の矢として期待された成長戦略は的外れ。黒田バズーカも市場に消化され、もう一段の円安材料が欲しいところだが、当面は期待薄なようだ。
(※編集部注:6月28日(金)の閣議にて参議院選挙は、7月21日(日)に決定した)
■円高のメドは52週線! 9月までに1ドル=90円タッチか
FX取引にテクニカル分析は必須。具体的にテクニカルで見てみると、どこがメドになってくるのか? 木野内さんは52週移動平均線を見ながら分析する。
「日本サイドから見ると円安になりにくく、一度、52週移動平均線あたりまでの調整があるでしょう」
52週とは、ちょうど約1年。「52」は一目均衡表でも使われる数字であり、注目度は高い。
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
「為替市場は、おおむね52週線からプラス・マイナス15%の範囲で収まります。5月にはプラス15%を抜けるところまで円安が進みましたが、今は米ドルの調整段階にあるとしたら、52週線付近が目安。
現在、52週線は87円台にありますが、だんだんと上がってきていますから、7月~9月にかけて90円付近までがメドとなるのではないでしょうか」
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
■注目はソフトバンク? 小天井→調整→円安再開の流れか
また、木野内さんは次のようなポイントも挙げてくれた。
「イベントとして注目されるのが、ソフトバンクのスプリント・ネクステル買収。2000年に、NTTドコモがAT&Tワイヤレスへ1.1兆円を出資したことがありました。そのときは出資金の払込みが終わった1月中旬に、米ドル/円が小天井をつけたんです。
今回も同じように、払込みが終わる7月中旬までに、小天井をつけやすいと考えています」
NTTドコモの件はちょっと古い話に思えるが、「巨額買収の発表→三角保ち合いを上抜け→円安トレンド開始」の流れは今回とまったく同じ。
2000年のときには、出資金の払込完了で小天井をつけ、円安トレンドが一服。2カ月弱の調整期間を挟んでから、円安トレンドが再開した。
今回もソフトバンクの米ドル買い、払込みが終わる7月中旬に小天井をつけ、1~2カ月の調整を挟んでからの円安再開となるのか?
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
■2013年の年末~来年以降の見通しは?
では、2013年末~来年以降といった長期的な見通しはどうか?
木野内さんは先日発売されたFX初心者向けのムック『ザイFX! THE MOOK』で披露してくれた主要通貨の中長期見通しも、ズバズバ的中。さすがの実力を見せつけてくれている。
結論だけを言えば、今後も円安継続なのだが、詳細は『ザイFX! THE MOOK』をご覧いただきたい。
さて、その『ザイFX! THE MOOK 』では、木野内さんの為替予測とともに、今後の注目経済指標やイベントをロンドン在住の元為替ディーラー・松崎美子さんが解説してくれている。
【参考記事】
●「FX友の会 in 東京2013」潜入レポ(4)調整は深いが一時的。株高・円安は続く!
●「ミセス・ワタナベ」のルーツを探れ(2)なぜ佐藤、鈴木ではなくワタナベなのか?
●ロンドン在住トレーダー・松崎美子さん(1)元ディーラーの意外すぎる情報源とは!?
今回の木野内さんの取材には、ロンドンから帰国中の松崎さんも同行。ロンドン在住の視点から、木野内さんに気になるポイントをぶつけた。
そして、「円安材料はなくても、米ドル高材料はある!」と木野内さんが教えてくれたのだが…その詳細は、次回の更新で!
(取材・文/ミドルマン・高城泰)
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