(「『FX友の会 in 東京2013』潜入レポ(3) 「元ディーラーはつぶやく。悔しがるな!」からつづく)
■米発QE3縮小とJGBマーケットの動向を注視せよ
「FX友の会 2013 in 東京」もいよいよ終盤。ラストは、ザイFX!の人気コラム「ヘッジファンドの思惑」でもおなじみの西原宏一さん、グローバルインフォの荻野金男さん、ロンドンFXこと松崎美子さんによるディスカッションが行われました。
ズバリ、テーマは、これからのマーケット展望。司会進行は、フリーアナウンサーの大橋ひろこさんです。
「FX友の会 in 東京 2012」では、荻野さんと西原さんがオプションの話をし、大橋さんが通訳? として参戦。とても中身の濃い講演となりました。そのときの様子は、以下の記事でご覧いただけます。
【参考記事】
●「FX友の会 in 東京 2012」レポート(2) オプション取引の情報がFXに活かせる?
今回は純粋に、これからのマーケット展望に関する話です。ここでしか聞けない注目の展望をいくつかピックアップしてご紹介しましょう。
大橋:アベノミクスで上げ相場が継続していましたが、5月23日(木)に日経平均が暴落し、現在マーケットは迷っているように見えます。この暴落をどう見ていますか?
今回のテーマは、ズバリ、これからのマーケット展望! 左からグローバルインフォの荻野さん、司会進行の大橋さん、ザイFX!コラムでもおなじみの西原さん
荻野:4月末の時点でFRB(米連邦準備制度理事会)関係者からは、QE3早期縮小に関する話が出てきていました。日経平均暴落の背景には、こうした米国の動向も挙げられるでしょう。
西原:JGB(10年物日本長期国債)に注目してもらいたい。0.3%まで下がっていた金利が急騰しています。
(出所:CQG)
西原:景気が良くなって金利が上がるのは良いですが、今は先に金利だけが上がっている状況…。にも関わらず、日銀はJGB市場に資金供給しませんでした。その結果、日経平均が崩れたワケです。一部では、日銀のオペレーションミスでは? なんて声も…。
5月23日の日経平均暴落の要因となったJGB(10年物日本長期国債)の動きを解説する西原さん
なるほど、5月23日(木)の日経平均暴落には、米国のQE3縮小や長期国債の金利上昇という背景があったんですね。西原さんいわく、「一般的に見られてないけれど、JGBのチャートは見ておいたほう良い」とのこと。
あわせて、国債の買い入れ時期などもチェックしておく必要があるようです。あまりなじみのない材料ですが、ここは要チェック!
■アベノミクス相場はまだ続く? 調整は深いが一時的
大橋:これでアベノミクス相場は終わり? それとも、継続だけど深い調整を覚悟すべきでしょうか? 意外と米ドル/円の下げ幅は小さいけれど…
荻野:米ドル/円については、100円は堅いけれど、そこを切るとさらに深い調整になる可能性はあります。
西原:日経平均は、まだ下げると思います。それとともに、米ドル/円も下げるでしょう。100円のラインも割ってしまう可能性が高い。アベノミクスの成長戦略次第ですが、失望を呼べば日経平均は下がる。
FX友の会が行われたのは、6月1日(土)でしたが、その後、5日(水)に発表された安倍政権の成長戦略は、期待ハズレな結果に…。実際、西原さんの言葉どおり、日経平均は下落しました。
(出所:株マップ.com)
西原さんいわく「5月に日経平均は上がり過ぎた。ちょっとしたミニバブルだった」とも。ただ、荻野さんも西原さんも、今回の調整はあくまで一時的なもの、として見ているようです。
■ズコーーーンと急落した豪ドル! なぜこんなに下落した?
大橋:豪ドルの急落ぶりもスゴイですが…どうしてこんなに下落したのでしょうか!?
西原:RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])は、過去18カ月の豪ドル/米ドルの水準は高すぎると指摘しています。この高すぎる水準というのが0.95ドルのラインでしたので、そこまで下がるだろうと考えました。
その後、ヘッジファンドからさまざまなコメントも出てきたことで、今回の急落につながったのです。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)
【参考記事】
●豪ドルは1000pips下落してもまだ高い!対ドルで0.9ドル、対円で90円まで下落か(6月6日、西原宏一)
●豪ドル暴落! 豪ドル/ドルがパリティ割れ。為替専門のヘッジファンドもショート狙い!(5月16日、西原宏一)
●日経平均大暴落! 豪ドルに悪材料続出!急落中の豪ドル/円、下値メドは95円か(5月23日、西原宏一)
●豪州利下げで金利は史上最低の2.75%に。ジョージ・ソロスが豪ドル売りという報道も(5月9日、西原宏一)
西原:0.95ドルを達成したのでひとまず落ち着きましたが、中国の景気が悪いということもあって、コモディティ価格が下落しています。内需を拡大したいオーストラリアは、引き続き、豪ドル安にしたいはず…。
豪ドル急落の背景について語る、西原さん。まだまだ下落余地あり? 荻野さんの「国策に逆らうな」という言葉は覚えておきたいひと言
荻野:そう! 国策に逆らうな。
なるほど、「国策には逆らうな」は覚えておきたい言葉ですね。さらに、荻野さん、西原さんは、豪ドルが一段と下落する可能性にも言及。豪ドル/円についても西原さんは、「90円くらいまで下落してもおかしくない」と指摘していました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)
実際に6月13日(木)、豪ドル/円は90円を割り込むところまで下落…。話を聞いたときは、まさか90円くらいまで下がるなんて… と思っていましたが…本当に下がりましたね。
ここ最近、最弱通貨に位置付けられている豪ドル、今後の動向に注目ですよ!
■8月英インフレレポートをチェック! ほんとカーニー?
続いては、ロンドン在住のトレーダー、松崎美子さんが登壇されているということで、英国発の生情報をゲットすべく、英ポンドの動向に関するテーマで迫ります。
松崎さんは、ザイFX!にも何度か登場したことがある元インターバンクディーラー。ロンドン在住で、現在は個人トレーダーとして活動しながら、ブログやセミナーなど各種メディアでも活躍されています。
【参考記事】
●ロンドン在住トレーダー・松崎美子さん(1)元ディーラーの意外すぎる情報源とは!?
●「ミセス・ワタナベ」のルーツを探れ(2)なぜ佐藤、鈴木ではなくワタナベなのか?
大橋:では、松崎さん、英ポンドの動きはどうでしょうか?
松崎:カーニーさん次第。
荻野:ほんとカーニー?
一同:…(シーーーーーン&笑)。
…このやり取りの背景には、カナダと英国の中央銀行総裁をめぐる経緯があります。実は、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])総裁だったカーニーさんは、2013年7月からBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])総裁に横滑りで就任することが決まっているのです。
中央銀行総裁が国家をまたいで他国の中央銀行総裁に就任するなんて、異例の人事だそうですが…。
松崎:2008年リーマンショック後、世界中が金融不安に包まれるなか、銀行が次々と国営化されていきました。しかし、先進国の中で唯一自国の銀行がガタガタしなかったのはカナダだけ。そこで、英国はカーニーさんの銀行監督能力に目をつけ、口説きに口説いて、BOE総裁に就任することが決まったのです。
ロンドン在住の松崎さんは、英ポンドの見通しを解説。注目は8月のインフレレポート。 飲みに行かずに、チェックを!
いわば、カナダでの銀行監督の手腕が評価されたカーニーさんを英国がヘッドハンティングしたようなイメージでしょうか。
松崎:最近英国では、不動産価格が戻り始めています。カーニーさんが来るまでに、ある程度経済が上向きになっていれば、せっかく就任してもあまり仕事はないかも…。
■8月のインフレレポートは、必ずチェックして!
松崎さんいわく、「カーニーさんは、英国に金融緩和をしにくる」のだそうですが、もし就任までに英国の経済事情が改善していれば緩和の必要性もなくなってしまう、ということで…もしかすると、せっかく就任してもカーニーさんにあまり仕事はないのではないか? と指摘していました。
そして、今後の英ポンドの動向を見る上で外せないイベントはというと…?
松崎:8月15日(木)の英インフレレポートは、すごく大事。だから飲みに行かないで、内容を必ずチェックして!
はい! 飲みに行かないで、必ずチェックします。
松崎:英インフレレポートは、BOEが四半期ごとに発表する英国の景気や物価見通しを記したレポート。英国経済の先行きを見る上で、とても重要視される材料の1つです。
特に8月15日(木)の英インフレレポートは、カーニーさんの就任後初となる大仕事。319年の伝統を持つ英中銀が、初めて北米型の「フォワードガイダンス制」を導入することになっており、いつも以上に注目されているのです。
また、この発表と同時に、カーニーさんが初めて公の場で記者会見をします。みなさんも、どうかその日は、飲みに行かずに、インフレレポートをチェックすることをオススメします!
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
「今年、わたしは、ずーっと英ポンドを買っているの。売る気にならなくて…」と松崎さん。
ロンドン在住の松崎さんは不動産価格の上昇をはじめ、英国経済の回復を肌で感じている様子です。引き続き、注目したいですね。
さて、ざっくりではありますが、以上が「FX友の会 in 東京2013」のダイジェスト。
ちなみに、講演のあとは参加者、講師も入り乱れての懇親会が行われましたよ。毎回恒例となっている「カツアゲ企画」と称するプレゼント抽選会も健在! なかには、ドンペリなどの超超超超高級プレゼントも!
目の色を変えて抽選番号に耳をすませましたが、記者には何にも当たらず…。来年こそは! と個人的な決意も新たに、今回の潜入レポートを締めくくりたいと思います。
興味のある方は、ぜひ次の機会に「FX友の会」を覗いてみてはいかがでしょうか?
(取材・文/ザイFX!編集部・向井友代 撮影/門馬大輔)
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