■現状は先走っているが、米ドル高トレンドへの移行は不変
ただし、執筆中の現時点では、米債務上限引き上げに関する最終合意には至っておらず、共和党による期間限定の債務上限の引き上げ案提出といった妥協が見られるだけだ。それゆえ、マーケットの先走りといった側面も垣間見える。
こういった先走り自体、政局の進行次第でまた修正される可能性もあるが、米ドル安は限定的で、今回の騒動でいったん底打ちのチャンスを得られ、ここから米ドル高トレンドへ移行するといった基本的な見方は不変であろう。
こういった視点をもって市況を再度検証すれば、状況の打開がまだはっきりしていなかった一昨日(10月9日)でも米ドル全体が買われたことを理解できる。
昨日(10月10日)夜に伝えられた共和党の提案は、すでに始まった米ドルの反騰トレンドにさらに勢いをつけていたが、反騰のきっかけではなかった。
(出所:米国FXCM)
■米デフォルトがあれば、米国以上に打撃を受ける国は多い
もっとも、仮に米国がデフォルトすれば、米ドルが売られ、一時の下値打診も必至と思われるが、文字どおりの未曾有な危機に晒されると、その後、リスク回避先としての米ドルの役割が見直され、一転して買われる可能性もある。
一説では、米国がデフォルトすれば、それが米国債暴落を引き起こし、それによる米金利の急騰につられた米ドル高もあり得る。
経験したことのない事態だから何とも言えないが、唯一言えるのは、米デフォルトは世界的規模の混乱をもたらし、結局、米国より深刻な損失や打撃を受ける国や地域が多いはずということだ。
日中のような、米国債を大量に抱え込む国は直接的な損失を被るし、EU(欧州連合)のようなソブリン危機から再起したばかりのところは、再び深刻なリセッションに陥るだろう。
ゆえに、米国の政局混乱のさなか、ユーロや英ポンドが買われるのではなく、逆に売られていたのも、こういった相場心理やロジックに対する潜在的な反応ではないかとみる。
■米ドル/円は200日線にサポートされた意味合いが大きい
よって、前回のコラムにおける米ドル/円とクロス円の上昇加速という予想も、前述のロジックに基づき自然に導かれる。
【参考記事】
●米政府閉鎖でも米ドル安が限定的な理由とは? 一転、米ドル買い殺到の可能性も(2013年10月4日、陳満咲杜)
というのは、円とスイスフランといった伝統的なリスク回避先通貨は、真の危機でないとずっと買われ続けることはないし、円に関しては、米国以上の緩和を実施している現状では、さらに買われる余地が限定的であり、少し状況の好転があれば、再び円売りムードに転換しやすいとみられるからだ。
そして、米ドルの底打ちがあれば、ユーロ、英ポンドなど主要通貨も反落してくるが、トレンドに対する修正の最初の段階では、往々にしてスピード調整に留まる公算が大きいから、反騰した場合、米ドル/円の反騰と相俟って、ユーロ/円などクロス円の反騰スピードも速いわけだ。
米ドル/円に関しては、この間の反落が200日線に支えられたことは、テクニカルと相場心理の両方において意味合いが大きい。
(出所:米国FXCM)
5月高値から構築された大型トライアングルの継続で、下値リスクの後退を確認、上放れのチャンスをうかがう段階に入ってこよう。
ユーロ/円と英ポンド/円に関しては、それぞれ50日線のサポ―トを確認した形でブル(上昇)トレンドに復帰、これから再度、高値更新をチャレンジする公算が高い。
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
ただし、米政局の混迷は長期化の様子もあり、また一波乱もあり得るので、一直線にいかないことも覚悟したい。市況はいかに。
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