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今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

米雇用統計良好でも市場が冷静な理由?
はっきりしているのはユーロ/ドルの上昇か

2014年03月13日(木)19:02公開 (2014年03月13日(木)19:02更新)
今井雅人

FXトレーダー・羊飼いに聞く、初心者におすすめのFX口座の選び方とは?

■米雇用統計は良好なのに市場の反応はなぜ冷静?

3月はレンジ相場になると繰り返しお話ししてきましたが、ここまでは予想どおりの展開となっています。

【参考記事】
「米国経済は堅調に推移」がコンセンサス。けれど、ドル高にならない真の理由とは?(3月6日、今井雅人)

 先週、3月7日(金)に発表された米雇用統計は、2月の非農業部門就業者数が前月比17.5万人の増加と、市場予想の14.9万人よりもかなり良好。また、1月、12月分も上方修正されるなど、普通であれば大きく反応するような結果であったにもかかわらず、市場は非常に冷静です。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移

 米国の現在の状況は既定路線で、市場のサプライズになっていないということかもしれません。

■当面、日銀のさらなる金融緩和は実施されない

 日本の状況も同様です。

 3月11日(火)、日銀の金融政策決定会合が行われましたが、従来の「量的・質的緩和」を続けるということが決定され、目立った変化はありませんでした。

 会合後の定例記者会見で黒田総裁は、「現在の日本経済はさまざまな角度から順調に景気回復してきていることが表れている」と日本経済に強気の見方を示しました。

 これで当面、日銀のさらなる金融緩和が実施される見込みはなくなりました。

 あとは、4月以降の消費税引き上げの影響を見ながら、経済見通しに変化が生じたときに初めて、さらなる金融緩和を検討するということになるので、当面、相場の材料とはなってきません。

■アベノミクスで日本経済は好調に見えるが…

 ただ、日本経済に対してもそんなに楽観的な見方はできません。

 2013年10-12月期のGDP2次速報値は、前期比で0.2%と1次速報値の0.3%から下方修正されました。年率にすると1.0%から0.7%への下方修正ということになります。

 アベノミクスで日本経済は好調に見えますが、GDPの推移で見るとそうでもありません。2013年の1-3月期は前期比で1.1%の増加、4-6月期は1.0%の増加、7-9月期は0.2%の増加、10-12月期は0.2%の増加と、景気の拡大は明らかに減速しています。

 政府は2013年度のGDP実質成長率を2.6%と予想していますが、ここまでの3四半期の実績から、これを実現することは事実上不可能となっています。

■政府はなぜGDPの実質成長率を下方修正しないのか

 このことは政府もわかっているはずですが、いまだに見通しを下方修正しようとしません。理由は簡単で、認めたくないからです。

 これを認めてしまうと自らアベノミクスがうまくいっていないことを認めてしまうことになりかねないと警戒しているのでしょう。しかし、数字は嘘をつきません。事実は事実です。

 この状態では、投資家も、これ以上の日本株の購入を躊躇するでしょう。法人税の大幅な引下げなどの抜本的な改革を打ち出さない限り、株式市場が強気に戻るのは難しいのではないでしょうか。

日経平均株価 日足

(出所:株マップ.com

■ウクライナや中国など海外の材料にも注意

 海外も少し懸念材料が増えてきています。

 ウクライナの問題は、ロシア軍が、いったん軍をクリミア半島から撤退したことで小康状態に入りましたが、クリミア自治共和国の住民投票をめぐって緊張は続いています。予断を許さない状況です。

 さらに、問題は中国です。

 今週(3月10日~)、銅が国際市場で急落しました。背景には「中国リスク」が存在しています。

銅先物(COMEX) 日足

(出所:CQG)

中国の景気が低迷していることで、資源の需要が落ち込むという懸念が広がっていることが原因と言われています。また、米国の量的緩和縮小の影響も出ているのかもしれません。

 先週末の3月7日(金)、中国で初となる社債のデフォルトが発生しました。これまで、こうした危機が何度もありましたが、これまでは政府が最終的には何らかの救済をしてきました。

 しかし、今回政府は、はしごを外しました。中国に何かが起きているのかもしれません。こうした不安リスクを抱えていることも相場を難しくしている原因だと前回のコラムでもお話ししましたが、その傾向はますます強くなってきています。

【参考記事】
「米国経済は堅調に推移」がコンセンサス。けれど、ドル高にならない真の理由とは?(3月6日、今井雅人)

 こういうときは、相場は方向感が出にくいです。

■ユーロ/米ドルは上昇トレンドを継続しそう

 そんななか、今はっきりしているのは、ユーロ/米ドルが上昇傾向にあるということです。

ユーロ/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足

 これに関しては、やや意外感があったものの、ユーロ圏の景気状況が思ったより良好であることが一番の要因であると考えておきたいところです。だからこそ、米国がやや金融引き締めモードに入っていても、ユーロが強くなっているのでしょう。

 ユーロ/米ドルは、チャートを上に抜けたようにも見えるため、今後も上昇トレンドが続きそうです。

■利上げしたNZドルと利上げ期待高まる豪ドル

 また、豪ドルの動きにも今後注目したいと思っています。

 RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])が3月13日(木)朝方、政策決定会合を開催して、政策金利を0.25%引き上げました。

NZドル/円 1時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:NZドル/円 1時間足

 市場のほぼすべての参加者が利上げを予想していましたが、声明文では「今後2年間で約2%の金利引き上げの可能性がある」との見解を示したほか、「2014年のインフレ率予想を1.5%から1.9%に引き上げる」ことを表明しました。

 さらに、ウィーラーRBNZ総裁が、「政策金利は今年最大で1.25%引き上げられる見通し」であることにも触れています。2014年、残されたRBNZの会合は6回ですから、0.25%ずつ引き上げることを考慮すれば、そのうち5回は引き上げの可能性が高いということになりました。

■NZドルが利上げサイクル開始ということは…

 豪ドルも2013年末までは、「利下げ予想」が多くを占めていましたが、3月13日(木)、公表された2月豪雇用統計の新規雇用者数が市場予想を大幅に上回る強い数字となったことからも明らかなように、経済回復が力強くなってきました。

 同じオセアニア通貨であるNZドルにおいて、今回利上げサイクルが始まったということは、豪ドルに対しても同様の期待が高まるのは、言うまでもありません。

 2013年末まで大きく下落していた豪ドル/米ドルは、1月24日(金)に0.8660ドルの安値をつけてからは回復基調にありますが、今後は大きく値を戻す可能性が高まったと言えるでしょう。

豪ドル/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足


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