■米雇用統計は良好なのに市場の反応はなぜ冷静?
3月はレンジ相場になると繰り返しお話ししてきましたが、ここまでは予想どおりの展開となっています。
【参考記事】
●「米国経済は堅調に推移」がコンセンサス。けれど、ドル高にならない真の理由とは?(3月6日、今井雅人)
先週、3月7日(金)に発表された米雇用統計は、2月の非農業部門就業者数が前月比17.5万人の増加と、市場予想の14.9万人よりもかなり良好。また、1月、12月分も上方修正されるなど、普通であれば大きく反応するような結果であったにもかかわらず、市場は非常に冷静です。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)
米国の現在の状況は既定路線で、市場のサプライズになっていないということかもしれません。
■当面、日銀のさらなる金融緩和は実施されない
日本の状況も同様です。
3月11日(火)、日銀の金融政策決定会合が行われましたが、従来の「量的・質的緩和」を続けるということが決定され、目立った変化はありませんでした。
会合後の定例記者会見で黒田総裁は、「現在の日本経済はさまざまな角度から順調に景気回復してきていることが表れている」と日本経済に強気の見方を示しました。
これで当面、日銀のさらなる金融緩和が実施される見込みはなくなりました。
あとは、4月以降の消費税引き上げの影響を見ながら、経済見通しに変化が生じたときに初めて、さらなる金融緩和を検討するということになるので、当面、相場の材料とはなってきません。
■アベノミクスで日本経済は好調に見えるが…
ただ、日本経済に対してもそんなに楽観的な見方はできません。
2013年10-12月期のGDP2次速報値は、前期比で0.2%と1次速報値の0.3%から下方修正されました。年率にすると1.0%から0.7%への下方修正ということになります。
アベノミクスで日本経済は好調に見えますが、GDPの推移で見るとそうでもありません。2013年の1-3月期は前期比で1.1%の増加、4-6月期は1.0%の増加、7-9月期は0.2%の増加、10-12月期は0.2%の増加と、景気の拡大は明らかに減速しています。
政府は2013年度のGDP実質成長率を2.6%と予想していますが、ここまでの3四半期の実績から、これを実現することは事実上不可能となっています。
■政府はなぜGDPの実質成長率を下方修正しないのか
このことは政府もわかっているはずですが、いまだに見通しを下方修正しようとしません。理由は簡単で、認めたくないからです。
これを認めてしまうと自らアベノミクスがうまくいっていないことを認めてしまうことになりかねないと警戒しているのでしょう。しかし、数字は嘘をつきません。事実は事実です。
この状態では、投資家も、これ以上の日本株の購入を躊躇するでしょう。法人税の大幅な引下げなどの抜本的な改革を打ち出さない限り、株式市場が強気に戻るのは難しいのではないでしょうか。
(出所:株マップ.com)
■ウクライナや中国など海外の材料にも注意
海外も少し懸念材料が増えてきています。
ウクライナの問題は、ロシア軍が、いったん軍をクリミア半島から撤退したことで小康状態に入りましたが、クリミア自治共和国の住民投票をめぐって緊張は続いています。予断を許さない状況です。
さらに、問題は中国です。
今週(3月10日~)、銅が国際市場で急落しました。背景には「中国リスク」が存在しています。
(出所:CQG)
中国の景気が低迷していることで、資源の需要が落ち込むという懸念が広がっていることが原因と言われています。また、米国の量的緩和縮小の影響も出ているのかもしれません。
先週末の3月7日(金)、中国で初となる社債のデフォルトが発生しました。これまで、こうした危機が何度もありましたが、これまでは政府が最終的には何らかの救済をしてきました。
しかし、今回政府は、はしごを外しました。中国に何かが起きているのかもしれません。こうした不安リスクを抱えていることも相場を難しくしている原因だと前回のコラムでもお話ししましたが、その傾向はますます強くなってきています。
【参考記事】
●「米国経済は堅調に推移」がコンセンサス。けれど、ドル高にならない真の理由とは?(3月6日、今井雅人)
こういうときは、相場は方向感が出にくいです。
そんななか、今はっきりしているのは…
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